私なんか見てないと思ってたのに
私のことしっかり見ててくれた
あの人に私は
愛のシュートを
キャッチされてしまいました
愛のゴール
今日はバレンタインデー。別名告白の一日(私談)。
手作りチョコレートと愛の言葉で愛しいあの人とラブラブになりたい!と願う乙女たちの一日だ。
そんな乙女の中には当然私も入っているわけで。当然チョコレートも前日から作っていたわけで。
告白のワンシーンもばっちり練習済み。後は本番を待つのみである。
私のお相手は功刀一くん。クラス内はもちろん、他クラスや後輩からも人気の高い人気者。
そんな功刀くんに直接会える度胸なんてもの、私には備わってなかった。
だから恒例、靴箱にチョコを!作戦に移ったわけだけど・・・。
「うわっ・・・いっぱい入ってる・・・;」
案の定『功刀』と書かれた靴箱にはたくさんのチョコレート。ふと近くにあったゴミ箱を見ると功刀くん宛てと思われるチョコが山ほど。(フルバネタ)
捨てても尚、こんなに入っているとは・・・。さすが功刀くん。侮れない。いや、功刀くんが侮れないんじゃなくて、功刀くんファンが侮れない。
人が作ったチョコを捨てる度胸も持ち合わせていないから、このチョコをどうやって本人に渡すか。このままじゃせっかく作ったチョコが渡せない。
よし、こうなったらしょうがない。直接功刀くんに渡そう。女は度胸!あれ?違ったっけ?愛嬌?まぁどっちでもいいや。
そんなこんなで昼休み。クラスの違う私にとって、最大のチャンスはこの昼休みしかない。
後は放課後という最終手段もあるけど、たぶん放課後は部活があるから渡せない。
今、このときを逃して、いつ渡す?行け!!
チャイムと同時に駆け出し、一目散に功刀くんのクラスへ。
しかし。そこは既に戦場と化していた。
「功刀くん!あ、ちょっと!押さないでよ!」
「私のほうが先よ!功刀く〜んvv」
「きゃー!今こっち見てくれた!」
「止めなさいよ!功刀くんが困ってるでしょ!?あ、城光くんvvv」
こりゃダメだ・・・。功刀くんファンに加え、同じクラスで同じサッカー部の城光くんのファンも混じってる。
もうクラスの周りはハイエナと化した女子でごった反していた。
しょうがない。最終手段。放課後まで待つか。はぁ・・・。功刀くん。私とあなたの距離はこんなにも遠いのですね。私は挫折しそうです・・・。
そしてそして。部活動の時間。相変わらずサッカー部の塀にはたくさんの人だかりが出来ていた。
一つ下の高山くんがシュートを放つたび、歓声が沸き。
城光くんがシュートを放っても、歓声が沸き。
功刀くんがそれらのシュートを止めるたび、また大きな黄色い声が乱舞した。
「すごい歓声・・・」
気の弱い私は人ごみを押しのけることなんて出来るはずもなく。
ただ、後ろから功刀くんの声を聞くので精一杯だった。
「オラ!昭栄!ちゃんと足使わんね!足!」
「すんませんっす!カズ先輩!」
相変わらず功刀くん、厳しいなぁ。さすがは九州選抜に選ばれただけのことはあるよね。
そう。この実力も功刀くんの魅力の一つ。
顔に惚れる人がほとんどだけど、私が惚れたのはその実力と努力の結晶。誰よりも努力してるのを私は知ってる。
いつもいつも遅くまで残って練習してる。その努力に私は惚れた。
顔でも実力でもない。その努力に私の心は奪われたのですよ。はい。
「結局・・・渡せなかったなぁ」
夕暮れの帰り道。
結局渡せなかったチョコレートを手に私はトボトボと歩き出した。
あーもー!私のバカバカ!チョコレート渡すどころか、話せもしなかった!
終わったよ、私の恋・・・。
「おい」
一度でいいから見たかったなぁ・・・。
「おい!」
「はい!?」
大きな声を聞いて後ろを振り向くと、そこにいたのは私の愛しい――
「功刀くん!?」
「カズで良か。お前、やろ?E組の」
「なんで知って・・・」
「ずっと見てた」
「ずっ・・・とって・・・私を?」
功刀くん・・・いや、カズは私の前ですっと手を出した。
「え?」
「チョコ。持っとるんやろ?早よ渡せ」
「なんで?どうして私なんか」
「お前のこと好きや。お前のためにチョコは誰からももらっとらん」
私が・・・好き?!あのカズが!?
「私も好きです・・・//」
「ちゃんと受け取ったけんな、チョコも気持ちも」
こうして、最高の守護神にチョコという名のゴールをキャッチされた私は――
ずっとカズに護られていました。