平日だろうが
特別な日には変わりない
これから先
ずっとずっと
私は貴方に
愛を捧げます
甘い一日
今日はバレンタインデー。
平日にも関わらず、彼、椎名翼はある人を待っていた。その人物とは・・・。
「翼!遅れてごめん!」
「はぁ・・・」
ぜぃぜぃと息を切らしながら翼に駆け寄ってきたのは同じ学校に通っている。翼の愛しい彼女である。
「学校抜け出すのに、こんな時間かかるわけ?」
「だって途中で先生に見つかりそうになっちゃったんだもん。ホント、ごめん」
「いいよ。が遅れるのはいつものことだしね」
「ちょっ、それどういう意味!?」
「そのまんまの意味。ほら、早く行くよ」
「あ!待ってよ翼!」
翼はの手を取り、足早に映画館へ入っていく。
二人の趣味は映画鑑賞。もちろんサッカーも好きだけど、映画館のはしごで意見が合致したのはが始めてだった。
おまけにはサッカー部のマネージャー。加えて東京選抜のマネージャーもやっている。
二人が付き合わないわけがなかった。
まずは一つ目の映画館。
「何見ようか、翼」
「そうだな・・・は何が見たい?」
「ん?これ」
「・・・・・・・・・・・」
が指差したのはコテコテのホラーアクションもの。普通の女の子なら泣いて逃げ出すであろう怖いものを平気で指名したのだ。
「あのなぁ。普通の女ってこういうの嫌がるもんじゃないの?」
「そうなの?」
「まぁいいや。これでいいんだね。じゃあチケット買ってくるから、はそこで待ってて」
「わかったぁ!」
フカフカの備え付けソファーにを座らせ、翼はチケットを買うためカウンターへ。
ソファーのフカフカ感に気を取られていると、不意に誰かが隣に座ってきた。
「お姉さん、今一人?」
「よかったら俺達と遊ばない?」
「え?」
いかにも、僕達悪いですという格好をした二人組みの男がを両脇から挟んだ。
俗に言うナンパである。
どうすればいいか戸惑っていると、一人の男が投げ飛ばされるのが見えた。
「うわっ!?」
「てめー!なにしやがんだ・・・・おぉ!?」
「俺の女に手ぇ出そうなんて永遠に早いんだよ、ゲスが。さっさと失せろ」
「ちくしょー・・・覚えてろよ!」
「お前らなんか覚えるか、バーカ」
そそくさと二人組みは去っていき、翼との間にはしばらくの沈黙が流れた。
「、怪我してないか?」
「してないけど・・・あれ、なに?」
「はぁ・・・;ナンパだよ、ナ・ン・パ。もちょっとは危機感もってもらわないと気が気じゃないよ」
「ごめん、翼・・」
「まぁ、そこがの可愛いところでもあるんだけど。ほら、チケット。早く入ろう」
「うん!」
映画も見終わり、出てきた二人は次の映画館へと移動した。
「今度は翼が見たいの決めてね」
「そうだな・・・じゃあこれ」
「アクションだね。うん、じゃあこれにしよう!ここの映画館は招待券があるからそのまま入れるよ」
「そっか、わかった。じゃあいこうか。」
中に入り、席に着くとさっそく映画が始まった。
「ねぇ、翼」
「なに?」
「帰り、送ってくれないかな」
「当たり前だろ。送っていくよ」
「ありがとう」
「おう」
2つ目の映画館を出ると、外はもうほんのり暗くなっていた。
途中の店でジェラートを買おうとしたら、翼が止めに入った。
「以外のチョコレートなんてもらいたくない」
「翼・・・」
「当たり前、だろ?」
「うん!大好きだよ、翼!」
帰り道。手渡されたチョコレート。翼は袋を開け、一口ほお張る。甘い味が口いっぱいに広がって思わず感嘆の声を漏らした。
「美味しいよ、」
「ありがとう、翼」
夕暮れに照らされた道の真ん中で二人はキスを交わした。
世にも稀なる甘い一日