寒さっていうのは
















君との距離が近づける
















口実にもなるんだよ








































































あったか特効薬
















































































あー寒い。ってか寒い。本当に寒い。いいなぁ、選手のみんなは動いてるから寒くないと思うけど、動かないマネージャーとしては、この季節本当に辛い。

休日練の日、ベンチから部員たちのことを見ている。それでなくても寒がりの私が、こんな寒い日に外にいるなんて、一昔前なら考えられないことだった。

だけど翼が転校してきて、サッカー部ができて、翼にむりやり(でも内心嬉しかったりして)マネージャーにさせられて、今に至る。

夏場はよかったんだけど、冬場はきつい。厚手のドカジャンを着てても私はぶるぶる震えていた。

なんでみんな、あんな薄着で平気なの?

私も動きたいなぁ。どうせならマネージャーじゃなくて、選手として誘って欲しかった。元からサッカーは得意だったし、それなりにできると思う。どっかの中学校では女子サッカー部もできたって噂。

私も立ち上げちゃおっかな。でもそしたら、マネージャーの仕事ができなくなる。=翼が怒る。

はい、決定。却下。触らぬ翼にたたりなし。私はすっごく厚着をして、この冬をしのぎながらマネをやり遂げることをここに宣言します。

、もう少しで休憩だからドリンクお願いしてもいいかしら」

「はい」

監督から言われて、そそくさと立ち上がる。あー動くたびに寒い。風が吹くと寒い。何してても寒い。その上、ドリンクを作るとなるともっと寒い。

やだなぁ。いや、別にいいんだけど、寒いから。ただそれだけ。選手達のことがめんどうとかじゃなくて、寒いの。本当にさむ(以下略)

部室に行って、ドリンクの粉を持ってきてさっさと作る。今日ははちみつでも入れてみよう。ちょっとはあったかくなるかも。あ、でも部員達は熱いのか。うーん、難しい。

「いいや、入れちゃえ」

スプーン一杯分ぐらいのはちみつを注いで、ドリンク完成。大きなトレーに入れて、グラウンドへ戻る途中、あまりの重さにバランスを崩しそうになった。

「うわっと・・・危ない」

「危なっかしいな、うちのマネージャーは」

「あ、キャプテン翼」

「・・・・その呼び方やめろって言ってるだろ」

「だってホントじゃん。キャプテン」

「・・・・・そんなに俺を怒らせたいの?

「アハハハ〜・・・ごめんなさい;」

よろしい、と翼はトレーを私から奪い取る。不意をつかれた私は、そのままトレーをあっけなく翼から奪われてしまった。

「いいよ。疲れてるでしょ。私が運ぶ」

に運ばせると何時間経ってもドリンクが来ないからね」

はいはい、どうせ私はトロイですよー。だって寒いんだもん。動きが鈍くなるのよ。

お言葉に甘えてトレーは翼に持ってもらった。だけど、私もマネージャーの意地として片方は持つことにした。なんか、悪い気がして。

「いいよ、これくらい。俺一人で持てる」

「やだ。マネの意地」

「どんな意地だよ」

あ、今ちょっと呆れたでしょ。ふん、別にいいもん。どうせ私は意地っ張りさ。

「あーあ、寒い。寒いよー。誰か地球から冬をなくして」

「そんなに寒い?ってかまだ11月だよ?今からそんなこと言っててどうすんの」

「それにしても、寒いもんは寒いんだから仕方ない」

「そんなに寒いならあっためてあげようか?」

「はい?何を言って・・・・」

トレーの落ちる音を聞きながら、私の視界は翼の胸の中に埋もれた。

抱きしめられてる?もしかして。恥ずかしい、けど誰もいないからよかったかも。

あー温い。すっごく温い。さすがさっきまで運動してただけのことはあるね。とってもあったかいよ、翼。このままずっと抱きしめていて・・・なんてちょっとぶりっこ?

「あったかいー」

「俺としては熱いんだけど」

「大丈夫さ。じき冷めるから」

「なんで」

「だってドリンク飲むでしょ?」

「そのくらいじゃ冷めないよ」

「そうなの?」

「そうなの」

翼は私を離して、くしゃっと頭を撫でる。ちょっとくすぐったかったけど、なんだかいい気持ちだった。愛されてるなぁ、なんて感じてみたり。

「まだ寒い?」

「翼が離れたから寒くなった」

「ふーん。じゃあ、こっち来て」

「へ?あ、ちょっと!」

翼に引っ張られてつれてこられたのはグラウンド。休憩中の部員たちは、ドリンクが来るのを待っていたらしく、ちょっとご立腹の様子。

ごめんね、みんな。今渡すから。もうちょい待ってて。

翼の所為で本来の目的を忘れてた。抱きしめられたときにトレーを落としたことは黙っていよう。

「なんや、ふたりでいちゃついとったんか」

直樹が冷やかすと、周りの部員もくすくすと笑い出す。

うるさいなぁ。って確かにその通りなんだけどね。

翼が私の手を離さないおかげで、部員達にドリンクが配れなかったから各自で持っていってもらった。はちみつ入りはだいぶ好評。ちょっと嬉しい。

「翼、ここにくればなんであったかくなるの?」

「今からあっためてやる」

「ま、まさか・・・・」

グラウンドの隅、みんながくつろいでいるど真ん中でのキス。

・・・・・・・・しかも長い!恥ずかしい!恥ずかしすぎて死ぬ!ダメ!もう寒くないから〜〜!

「プハァ!ちょ、なにすんの!」

「どう?あったまったでしょ?」

「こんなやり方聞いてないよー!!」

「言ってないからね。あっためてやったんだから感謝しなよ」

「〜〜〜〜〜////」

とうぜん私は耳まで真っ赤。いつの間にか寒さも忘れている。

だけど、それ以上に驚いているのは回りの部員たちだということに、私はそのとき気付いていなかった。



寒い冬の日のあったかい日常。



こんなことがあるのなら、寒さも悪くないかもね









リクエスト夢です。春奈さまに捧げます。駄文で申し訳ありません;;

花月