一番大切なもの
それは形じゃ表せなくて
言葉じゃ伝えられないけど
一番近くにあるもの
バブリシャス
休日、今日も名門華武高校野球部では厳しい練習が行われていた。
そんな中、一人練習に参加していないものが一人。
「芭唐ー!ちゃんと練習してよー!」
「あ〜聞こえねぇ」
「いくら屑桐さんと監督がいないからって、サボってちゃダメだよ」
「鬼の居ぬ間にってな」
「2人がいてもサボってるくせに」
「それはいわないお約束だろ」
「芭唐は約束守んないじゃん!」
「まだこの前のデート遅れたこと怒ってんのか?」
「当たり前・・・ってそうじゃなくて!ちゃんと練習してってば!」
「後5分・・・いや10分したら始めっから」
「増えてる!?」
なにやら漫才のような会話だが、本人達はいたって真面目。周りもまたか、といった感じであまり興味を示していない。
野球の名門華武高校の4番、御柳芭唐。そしてその彼女でありマネージャーである。こんな会話も愛のうち。誰も突っ込みを入れるものなど、いなかった。
「だいたい、あん時はちゃんと遅れるってメール入れただろうが」
「少しって言ってたじゃない!20分が少しなわけ!?」
「俺の中では少しなんだよ。20分くらい待っても、人生大して変わんねぇだろうが」
「20分あったら何ができると思ってんのよ。カップラーメンがいくつできると思う!?」
「あ、俺数学苦手だから」
「私も苦手だけど、一生懸命計算したら・・。6個よ!?約6個も作れちゃうんだから」
「へぇすごいなー」
「ホントすごいよね、今の時代・・・ってまた違うから!練習しろっていう話よ!」
「じゃあ練習したらは何してくれんの?」
「私?」
「世の中ギブアンドテイクだから。イーブンでなきゃな」
「意味わかってるの?英語できないくせに」
「墨から教わった」
「芭唐が練習したら、今日の帰り一緒に帰ってあげる」
「毎日帰ってんじゃねぇか。カレーたくさん作って3日間をやり過ごそうとする主婦か、お前は」
「たとえがよくわかんないけど、うるさいな!じゃあ、何して欲しいの?」
「そうだな・・バブリシャス」
「わかった買ってあげる。ってそれだけでいいの?」
「あぁ」
「意外と簡単に動くよね、芭唐って」
「ほっとけ。俺にとってバブリシャスは命の次の次の次に大事なんだ」
「あんまり大事じゃないじゃん」
「さぁって、練習すっかな。バブリシャスのために」
「はぁ、やっと練習する気になってくれた・・・」
長い長い説得の末、ベンチから重い腰を上げた芭唐。は素振りをしている芭唐をしばらく見つめた後、自らもマネージャーの仕事に取り掛かった。
そして練習終了後。いつものように、と芭唐は一緒に暗い夜道を歩いていく。
普段ならそのまま真っ直ぐ帰るのだが、芭唐を練習に参加させるためにしてしまった「バブリシャスを買う」という約束を果たすため、二人は近くのコンビニに寄った。
「今日はどのバブリシャスにすっかなぁ」
「バブリシャスってこんなに種類あんだね・・」
「しょうがねぇ。グレープに落ち着くか」
「はいはい。で、いくら・・ってそんなに買うわけ!?」
芭唐は両手にバブリシャスを大量に抱えていた。しかもみんなブレープ味。
「買ってくれるって言っただろ?」
「いや、確かに言ったけどそんなに買うお金ないよ!」
「あれ〜?約束が違うんじゃない〜?」
「だってそんなに買うなんて言ってないじゃん!」
「ひとつしか買わないとも言ってねぇぜ」
してやったり、といった表情ではしぶしぶ財布を取り出す。昨日がお小遣い日だったので、足りないこともないが、それでもやっぱり痛手。
「・・・わかったわよ。これくだ・・」
「冗談に決まってんだろうが。ほら、いくぞ」
「え、だってまだ一個も買ってない」
「いらねぇよバブリシャスなんて。そのかわり、他のもんもらうからな」
「他のものってまさか・・・」
「鋭いじゃねぇか、にしては」
「すみません。バブリシャス1000個ください」
「ダーメ。早く行くぞ」
「行くってどこへ・・?」
「もち、俺ん家」
「たーすーけーてー!!」
必死に手足をばたつかせるを無理やり引きずって、芭唐は自らの家にを強制的に連れて行った。
翌日。が腰痛のため部活を欠席したのは、また別のお話。
短っ!!すみません、会話がほとんどで。ホントすいません;;
花月
