公園の子どもを見るたびに
テレビで子どもの番組を見るたびに
優しく微笑む姿は
まさしく母のそれだった
Baby Panic -子ども騒動-
の様子が変だ。
いや、変といえば前から変だったんだけど、最近は特に変だ。
ため息ばっかりついてるし、よく吐くし、腹さすりながらまたため息つくし・・・。
最初は病気かとも思ったけど、どうやらそうじゃないらしい。
と同棲して早1年。そりゃもちろん・・・そういうことも・・・し、た・・・・//
でもまだ結婚してないわけだし、そこんとこはちゃんとしておこうと思ってアレだってつけてる。
だから妊娠したってことはないと思うんだけど、それでもの様子を見る限りその可能性が高い。
というわけで俺、真田一馬はいろいろ聞いてみようと試みた。
「で。なんでちゃんじゃなくて俺たちに聞くんだよ」
「いや、だってさ・・・」
「どうせちゃんに直接聞くのが怖いからまず俺たちに聞いてみようってことでしょ」
「・・・・・・・はい」
そりゃ俺だってに直接聞きたいとは思うぜ?だけどさ、心の準備ってもんがあるだろ。
だから最初は頼れる親友たちである英士と結人に聞いてみようと思ったわけだ。
俺より知識あると思うし、奥手の俺とは違って女性経験も豊富だから参考になると思う。
それぞれのクラブの練習あとで疲れてるところを無理やり引っ張ってきて、学生のときから通っている行き付けのマックに集合してもらった。
もちろん二人の目の前にあるポテトやハンバーガーの類は全て俺のおごり。まだ若い上にサッカー選手ともなれば、食べる量もハンパじゃない。
今月のおこづかいがもう残り少なくなる。財布が冬に逆戻りしてしまった。
千円札が3枚しか入っていない財布を見つめながら、俺は小さなため息をこぼした。
「それでさ、ちゃんは具体的にどんな症状なわけ?」
英士がポテトにナゲットのBBQソースをつけながら言った。お前なにそんなプロい食べ方してんだよ。ファンが見たら泣くぞ?
とまぁ、それは置いといて俺は最近のを思い返してみた。
「とにかくため息ばっかりついてて、なんかダルそうで・・・」
「元気がないってこと?」
「そうそう。俺としゃべっててもどこか上の空だし」
「あはは!一馬に愛想つかして他に好きな男でもできたんじゃねぇの?」
「結人!」
「結人、一馬に愛想つかしたのはわかるけどちゃんが浮気なんて酷い真似するわけないでしょ」
「英士まで・・・;」
俺はそんなにダメな男か!?なんで親友にこんなこと言われるんだよ;
心にグサグサと棘を刺されながら、また他のことも思い返してみる。
「あと、腹さすってまたため息ついてるな」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・マジ?」」
「あ、あぁ」
その言葉を言った瞬間、英士と結人は顔を見合わせて驚いたような表情になった。
な、なんかまずかったか?それともがヤバイのか!?
「一馬、お前さもうちゃんとは当然ヤったんだよな?」
「ま、まぁな・・・//」
「アレはもちろんつけてるよね?」
「当たり前だろ」
「途中で破れたりとかはしてないよな?」
破れたり・・・?恥ずかしながら、ここ最近の事情を思い出す。
「そういえば、1回だけ破れたことがあった・・・」
英士と結人が同時に深いため息をついた。
え!?やっぱりそうなのか!?俺、やらかしちまったのか!?
「ちゃん、最近生理きてる?」
「いや、それはわかんねぇけど・・・」
「すっぱいものが食べたいとか言ってるか?」
「そういえば、グレープフルーツジュースをよく飲んでるな」
「もどしたりとかは?」
「・・・・しょっちゅう」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
英士は呆れた顔でまたポテトにBBQソースをつけながら食べていて、結人にいたってはちょっと電話してくる、とか言って席をはずしてしまった。
これはもう100パーセントデキちゃったと見ていいのだろうか。
そうなると、俺父親になったのか!?まだ結婚もしてないのに。
デキちゃった結婚かぁ、順序は逆だけどそれでもと結婚するのは俺としては大歓迎だ。
でも、もしが俺とは結婚したくないって言ったら?シングルマザーになることを望んだら、俺は一体どうしたらいいんだ・・・。
「まぁとりあえず、おめでとうと言ったほうがいいのかな」
「英士・・・俺・・・」
「一馬が父親になるとはね。コレはさっそくみんなに報告しないと」
「結婚式の日程も決めないとな」
電話が終わったのか、ケータイを持った結人も帰ってきて俺の肩をポンと叩いた。
俺が父親・・・まだ実感がわかないけどこんなに嬉しいもんなのか。
でも、なんでは子どもができたこと俺に報告しなかったんだ?
「もしかして俺、結婚相手として認められてない?」
「なんで?」
「いや、だって報告されなかったし・・・」
「そういうことは、本人に聞いたほうが一番いいって♪な、ちゃんv」
「は!?」
結人がにっこり笑ってみたほうにはの姿があった。
なんでここにいんだ?ってかいつきたんだ!?
「なんか私がいない間に、かなり話が進んでるみたいだね」
「!?なんでいんだ?」
「さっき電話で結人くんに呼ばれたのよ。一馬が大変なことになってるって」
結人・・・さっきの電話はだったんだな。気付かなかった。っていうか、大変なことってオイ。
「でさ、ちゃん。結局なんで一馬に報告しなかったんだ?」
「報告?なんの?」
「子どもができたんでしょ?おめでとう」
「、ホントなのか?」
「はぁ?」
「子どもなんてできてないけど?」
「「「・・・・・・・・・・・・・えぇ!?!?!」」」
俺と英士と結人の声が同時にハモった。
子どもができてない!?だって、あんなに当てはまることがたくさんあったのに、どうして・・?
「だってすっぱいもの飲んでただろ?」
「最近ハマってるだけよ。ちなみに吐いてたのは、この前食べたふぐが中っただけ」
「じゃ、じゃあため息ばっかりついてるのは?」
「気候の所為よ。最近ジメジメした天気ばっかり続いてるじゃない?だから」
「生理は?」
「今月はまだ来てないだけよ。先月はちゃんと来たわ」
「ってことは、俺たちが真剣に話してたことは・・・」
「全くの無駄」
チーンという音が聞こえてきそうなほど、俺たちは固まった。
女ってやつは、とことんわからない。
しばらく固まったままで俺たちはマックの閉店時間までそこに座っていた。
ちなみに。
本当に子ども騒動が起きたのはそれから数年先だった。
祝40作品目!なのに駄文;最近ヒロインの出番が少ないです(泣
花月
