全国の姉を持つ人々よ











いくら姉が変わっていても気にするな











俺の姉ほど変わっている奴なんて











きっとどこにもいないはずだから・・・















































































ブラザーコンプレックス















































































俺の姉貴はちょっと変わってる。いや、変わっているといったら俺の家族みんな何かしら変なのだが、特に姉は度を越えていた。

一つ上の姉、。顔良し、性格良し、頭良し、スタイル良し、その上スポーツまでそつなくこなす。当然学校ではもうアイドル的存在。異性、同姓関わらず愛されている完璧人間。

一見どこも変わっているように見えないが、これはあくまで学校での顔。つまりは「表向き」の姿。家でのは、学校では想像できないほどの変人ぶりを発揮する。

そして今日も、東京選抜の練習が終わり家路に着く。玄関の前で一度ため息をついて、よしと気合いを入れたあと、思い切ってドアを開けた。

「た、ただいま・・・!」

自分の家に緊張しながら入るっていうのも問題あると思うけど、しかたがない。だっていつもならが・・・。

「お帰り一馬ぁ〜vvvv」

「うわぁ!?」

ホラ来た。は俺が帰ってくると、必ず抱きついてくる。女に免疫のない俺はもうこれだけで致命傷。実の姉でも、恥ずかしいもんはやっぱり恥ずかしかった。

というか、の所為で女が苦手っていうのもある。この前漫画で女が苦手な色黒のピッチャーを見たけど、それもやっぱり姉が原因らしい。その気持ちわかるぜ。

「ね、姉ちゃん!わかったから離れろって・・・//」

「もう一馬ったら照れちゃってv可愛いぃ〜vvv」

「うぉお!?!?////」

は赤くなっている俺をさらにきつく抱きしめる。まだ玄関から1mも進んでないのにこの状況。学校の知り合いからすれば、こんなに嬉しい光景はないのだろうが、毎日コレが続いたらたまったもんじゃない。

もうわかっただろう。俺の姉、学校では完璧人間といわれるの裏の顔。

ブラザーコンプレックス。略してブラコン。

「一馬、お腹すいたでしょ?それとも先にお風呂入る?v」

やっと離れてくれた(とは言ってもまだ首元には手が巻きついてる)を見て、俺はひとつため息をついた。

いちいち語尾にハートマークをつけないでくれ。いや、それよりもどうして家に帰ってきてまでこんなに疲れなきゃいけないのか。ただでさえ外に出ると疲れるのに・・・。←ナイーブ

「先に飯食うよ。腹へったし」

「わかった!じゃあすぐ暖めるからね〜v」

嬉しそうに笑って、はキッチンへと向かって行った。その後姿を見ながら俺はまたため息をついた。なんだか新婚夫婦の1シーンみたいだ。

バックを部屋に置いて部屋着に着替えたあと、下に下りるともう夕食の用意が出来ていた。相変わらず手際のいいことで。

「いただきます」

「はい、召し上がれv」

だからいちいち語尾にハートマークを・・・ってもういいや。それより、この料理全部母さんが作ったのに、なんでが作ったみたいな感じになってるんだ?

俺の食べる姿を嬉しそうに見つめる。集中して食べれないけど、なんか慣れてしまった。だってこんな生活が毎日続いてみろよ。すぐ慣れるって。

「どう?おいしい?v」

「う、うん。美味い」

「よかった〜v一馬の口に合わなかったらどうしようと思ったv」

「どうするんだ?」

「うーん、特に何もしないv」

しないのかよ!?こんなところに限って普通のリアクション。やっぱりは変わってる。

そんな俺達の会話も母さんと父さんは慣れているようで、完璧無視。ごく普通に接していた。そりゃな、両親だって慣れるって。

黙々と食べる俺と、それを笑って見つめる。奇妙な食事が続いていたその時。の動きが突然止まった。

「ねぇ、一馬」

「ん?なに?」

口の中のものを飲み込んだ後、のほうを見ると顔は笑ってるけど目が笑ってない。ヤバイ、と俺の本能が伝えていた。冷や汗が流れる。

「今日ね、私見ちゃったんだけど・・・」

「な、なにを・・・?」

恐る恐る聞いてみると、の顔から笑顔が消えた。来る・・・!何か大きく黒いものが・・・!!

「昼休み廊下で話してた女。誰?」

の顔は今にも掴みかかろうとしているみたいに怖かった。情けないけど、心の底から逃げたいと願う。

「あ、あれは・・教科書貸してくれって言われて・・・」

「ふぅん・・・。じゃあ付き合ってるとかじゃないのね?」

「あ、あたりまえだろ!」

もう俺の神経は限界だった。これ以上突っ込まれたらサッカーで鍛えた脚を使ってすぐに部屋へ非難してるとこだ。

しばらくの沈黙が流れた。母さんも父さんも我関せずで無視を決め込んでいる。頼むからちょっとは助けようという姿勢を見せてくれよ・・・。

箸を持つ手が小刻みに震え、俺の精神はもはやギリギリのところにあった。

そんな時。の顔が元の笑顔に戻る。

「よかったぁ!私の勘違いでv」

「そ、そうだよ!アハハハハ・・・」

笑えない、笑えないよ。もし勘違いじゃなかったらなんておぞましくて聞けない。俺にそんな度胸ない。

「もし一馬とあのあばずれが付き合ってたらどうしようかと思ったv」

あ、あばずれ・・・。それ中学生が使っていい言葉じゃないと思うんだけど・・。え?なに?聞けって!?どうなるか聞けっていうのか、俺に!?頼む、勘弁してくれ・・・!

「一馬?」

「は、はい!?」

「なに一人で葛藤してるの?」

「あ、えっと、べ別に・・・」

「言え。」

「はい。」

怖い・・・!!俺は死を覚悟して、口を開いた。

「もし、付き合ってたらどうするつもりだったんだ・・?」

「え〜決まってるじゃないv」

「決まってるって・・・?」

「よ・び・だ・しvv」

俺の中で何かが凍りついた。恐ろしい。怖い。怖すぎる。コレが俺の姉・・・。だから女っていうのは恐ろしいんだ・・・!!

「あ、洗濯物たたまなくちゃv」

はそう言って俺の目の前から姿を消した。嵐が去ったあとの静けさ。俺はしばらくそのまま一人で固まっていた。

俺の姉、真田。学校でも俺の行動を随一チェックしている、まるでスナイパー。

結局、が生きている限り、俺に彼女が出来ることはないんだろうな・・・。

こうしてまた、俺の一日は終わっていった。


















私も姉持ちです。でも私はシスコンです。(爆)一馬に幸アレ。

花月