どこにでもありそうな家











どこにでもありそうな家族











だがその中は・・・











少し変わっていた




















































































Family






















































































清々しい朝。太陽のまぶしい光を受け、今日もこの街の1日が始まろうとしている。

そんな街の住宅地に、赤い屋根の家があった。表札には『』の文字。

一見なんの変哲もない普通の家。だが、この家、意外と近所では有名だったりする。

なぜ有名なのか。では、さっそく家の中に入ってみよう。

玄関を入り、見えてくる広いリビング。その向こう側にキッチンがある。そこにはピンクのフリルがついたエプロンを着用している、背の大きな青年が器用にフライパンを操っていた。

知らない人から見れば、この人がお父さん?と思われるかもしれないが、それは断じて違う。いや、やっている仕事としては親のようなものだが。

彼の名前は克朗。家の長男である。現在両親が単身赴任中のため、家事全般はこの克朗が行っている。

それにしても大きな身体にフリルのエプロン・・・。似合っているからまた恐ろしい。

克朗は大手旅行会社に勤めている立派なサラリーマンだ。その爽やかな風貌から、社内、近所ともにファンが多い。

それに加え、料理もプロ並。女にモテないわけがなかった。

克朗がたまご焼きを大きめのさらにうつしたところで、トースターが香ばしい香りの漂うパンをはじき出す。

テーブルの上にはすでに、一流の味を誇る克朗の料理たちが並んでいた。

「よし」

太陽の光がキラキラとさしこむリビングで、克朗は一人料理のできばえに満足気な顔を見える。そして息を大きく吸い込み、思いっきり叫んだ。

「朝だぞー!!!!」

さすがは、中・高・大とサッカー部で鍛えた腹筋。そりゃもう、ものすごい音量の声が出た。その声に合わせて、ぞろぞろとみんなが起きだしてくる。ようやく、家の朝が始まった。

「おはよう、克兄」

まず階段を下りてきたのは、三男の翼。赤っぽい癖のある髪を持つ、一見すると女の子にも見えかねないほど中世的な顔立ちの人である。

現在は某有名国立大学に通っている、大学1年生。もちろん、小学校のときからいつも学年主席をキープ。その上、スポーツもでき、顔立ちもそのまま芸能界に行って全く違和感がないほど美しい。

そんな彼の唯一の欠点。それは・・・・あとでわかるだろう。

翼はいつもの席について、さっそく焼きたてのトーストに手をつける。まだ眠いのか、まぶたが少し落ちていた。

「翼、牛乳でいいか?」

「あぁ。あと、バターとって」

「おはようさん、二人とも」

次に起きてきたのは、四男の成樹。流れるような金髪。耳にはピアス。こう見えても高校1年生。

バイト命の自由人。家族の中でも、わが道を行くいろんな意味で大人びた彼。

「相変わらず毎朝豪勢な料理やなぁ。克兄、コーラ取ってんか?」

「あんまり炭酸ばっかり飲んでると、骨が弱くなるぞ」

「大丈夫やって!俺は骨折なんて野暮なもんせんからv」

はたして骨折は野暮なのか・・・?まぁ、そんなツッコミは置いといて。

成樹はなぜか関西弁をしゃべる。兄たちいわく、小さい頃は普通に標準語をしゃべっていたらしいのだが、いつのまにかこうなってしまったらしい。

家の謎の一つである。

成樹も自分の席につき、ほかほかのたまご焼きに手をつけた。

「あと起きてないのは・・・・亮と一馬、あとか」

テーブルの空席はあと3つ。その椅子を眺めながら克朗が呟く。

「一馬ならもうすぐ起きてくるんじゃない?さっきドアの前通ったら着替えてる音してたから」

「そうか。じゃああと二人だな」

克朗はコーラと牛乳をテーブルに置いて、自らも席に着く。まだフリルのエプロンは脱いでいない。

誰も突っ込まないのが、また痛々しかった。

「おはよー・・・」

学生服に身を包み、降りてきたのは五男の一馬。中学3年生。剣道部所属。いつもなら朝練のため、誰よりも早く出て行くのだが、今週はテスト期間のため、朝練はない。

眠そうな目を擦りながら、寝癖の取れていない髪をかきあげ席に着く。

「一馬。昨日、かなり遅くまで勉強してたみたいだな」

「まぁな。今回のテストで赤点とったら1週間部活停止くらうし・・・」

「だから毎日少しずつでも勉強しとけっていってんだろ。それでなくてもお前覚え悪いんだから。これだから凡人って嫌だよな」

天才の言葉とは、なぜこんなにも嫌味に聞こえるのだろう。というか、翼はわざと言っているのかもしれないが。

おかげで一馬の周りには、朝からブルーな空気が漂っている。家族一繊細な彼のことだ、翼の毒舌にかかればひとたまりもない。

さきほど言っていた翼の唯一の欠点。それはこの毒舌。今まで一体何人の人がこの毒舌にやられて朽ちていったのだろう。昔から、翼は口が悪かった。

「一馬も大変やなぁ。ほな、俺はを起こしてくるさかいv」

「「「ちょっと待て!!」」」

成樹がパンを飲み込みながら立ち上がろうとすると、克朗・翼・一馬の3人が一斉に声を上げた。

いよいよ始まろうとしている。家、毎朝の恒例行事。

「今日は俺が起こしに行くに決まってるだろ?成樹は昨日起こしに行ったし」

「そんなん、先に言った奴の勝ちやわ。も俺に起こされたほうが絶対ええに決まっとる!」

「ずりぃよ毎朝兄ちゃんばっかり!たまには俺も・・・」

「「お前は黙ってろ」」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「まぁまぁ、そんなに喧嘩するな。ここは間をとって俺が――」

家の恒例行事。それは末娘のを誰が起こしにいくか、という論争。

毎朝毎朝凝りない兄たち。家で唯一の花、はそれほど大事に育てられてきた。

早い話が、全員シスコン。命の奴らばかりなのだ。

「今日は俺だ!」

「いや、俺やで!」

「たまには俺が・・!」

「間をとって俺だと言っているだろ」

「おはよー!お兄ちゃんたち!どうしたの?」

「「「「おはよう、vv」」」」

さっきまでの言い争いはどこへやら。全員にこやかに、階段から降りてきたへと振り返った。

。現在中学2年生。一馬と同じ学校に通っている。

顔よし、頭よし、性格よしの3拍子揃った完璧ガール。そんな彼女を兄たちが愛さないわけがなかった。いや、たとえどれか一つが欠けていてもシスコンになっていただろうが。

小さい頃からすでに両親は単身赴任していたので、にとっては兄たちが親代わり。もまた、ブラコンの気があった。(兄たちほどではない)

、ウインナー食べるか?」

「うん、食べる!」

、今日も可愛えなぁv」

「シゲ兄もかっこいいよv」

、帰ってきたら勉強見てやろうか?」

「ありがとー翼兄!」

、今日も一緒に学校いくか」

「うん、いいよー一馬兄!」

にっこりと笑顔で兄たちと会話する。その微笑みに誰もが癒されていたとき、がふと口にした言葉。

「あれ?亮兄は?」

「「「「あ・・・」」」」

4人の兄たちは、思わず口をふさぐ。のことに気をとられ、すっかり次男の亮を起こすことを忘れていたのだ。

しかも亮は低血圧のため、朝はすこぶる機嫌が悪い。もはや起こすのも命がけだ。

「まだ起きてないの?じゃあが起こしてき・・・・」

「いや、は行っちゃダメだ。ここは一馬が行くから」

「えぇ!?お、俺!?」

「当たり前やん。一馬の仕事やろ?」

「いつ決まったんだよ!毎朝俺ばっかりずりぃって!」

「一馬・・・」

克朗がにっこりと笑って一馬の肩に手を置いた。嫌な予感が一馬の頭をよぎる。他の兄たちも嫌な笑顔で一馬を見ていた。

「「「行ってこい」」」

「・・・・・・・・・・・・・はい」

コレが末っ子(厳密に言うと違うのだが)の定め。所詮、兄たちには逆らえなかった。

重い足取りで階段を上っていく一馬を見送ったあと、4人で何事もなかったかのように朝食を続ける。心配してるのはだけ。他はもくもくと朝食をとっていた。

「あ、そろそろ出勤の時間だ。お前たちも遅刻するなよ?」

「いってらっしゃい。後片付けは亮兄に任せとけばいいよね」

「あぁ、頼んでおいてくれ、翼。それじゃ、いってきます」

やっとフリルのエプロンを脱いで、スーツ姿のかっこいい克朗が現れる。そのまま家を出て行った。

「俺ももう行かなきゃ。成樹、送っていけよ」

「え、でも一馬兄が・・・」

「ええって、ほっとけば大丈夫やvそれより早う行かんと、遅れてまうで」

「う、うん・・・」

ちゃっちゃと食器をさげ、出かける準備をする。そして、心配するをよそに翼と成樹はさっさとを連れて、家を出て行った。

その後、家から一馬の断末魔が響き渡ったのは言うまでもない・・・。



こうして、家の朝は過ぎていった。








「俺だけ出てねぇじゃねぇか!!」By亮














家族連載スタートです♪亮さん、すみません!出せなかった;;ヒロインもあんまり出てないし・・・;

次こそは全員出します!

花月