個性的で











人数が多くて











いっつも騒がしいけど











それでも大好きな











愛しき我が家
















































































Family
















































































「ただいまー!!」

亮と一緒に帰ってきたは、玄関を開けて元気よくそう言った。

それに対して亮は黙って靴を脱ぎ、さっさと家へ入っていく。誰もいないのを知っているからだ。

ところが、亮の予想は早くも裏切られることになる。中から返事が帰ってきたのだ。

「おかえり、二人とも」

ダイニングのドアから顔を出したのは三男の翼。大学生の翼がこの時間にいるのは、めずらしい。

「ただいま翼兄!今日は早いね!」

「うん、4限までだったからね。亮兄と入れ違いになったんだよ」

をみながら翼は天使のような笑顔を浮かべる。しかし、亮は翼を無視して急いでキッチンへと向かった。

もちろんそれは翼への恐怖からであったが、それを見逃すような翼ではない。亮ともきっちり言葉を交わす。

「亮兄もタイムサービスお疲れ様。今日は亮兄が夕飯作るの?」

「あ、あぁ・・・」

「ふぅん、そっか。じゃあまた見られるんだね。亮兄のフリ「さ、さぁてと!早く下準備しないとなぁ!手伝ってくれるか?」

「・・・?う、うんわかった」

着替えてくる、とは二階へ上がっていった。がいなくなってから亮は思いっきり冷や汗をかいて翼を睨んだ。

翼も翼でいたずらな笑みを浮かべ、亮を見ている。

二人の間には冷たい空気が流れていた。

「お前、性格悪すぎだぞ・・・」

「だってこんな面白いネタもってるんだから、使わないわけにはいかないだろ?」

もはや次男の権限などまるで役には立っていない。翼のほうが数段優位に立っていた。

こいつこの愛らしい顔のどこにこんな汚い心隠してやがんだ・・・と亮は深いため息をつく。

人というのは見かけによらないというのを、亮は身をもって体験していた。恐るべき、三男翼。

亮としては早く条件を言って欲しくて、たまらなかった。その条件さえ飲めば身の安全は確保される。

しかし、翼はそんな優しい性格ではない。いつ度掴んだネタは死ぬまで離さない、そんな性格なのだ。

「まぁ、俺も鬼じゃないからね。条件はそのうち言うよ」

「・・・・・」

ルンルン気分で翼はダイニングへと戻っていった。その後姿を見ながら亮はまたもため息をつく。苦労人はいつまでたっても苦労人だった。

少しして、階段を下りてくる音がする。だ。

「お待たせ亮兄!・・・ってどうしたの?顔色悪いよ?」

「いや、なんでもねぇよ。さて、はやく作っちまうか」

「うん!」

言えない。翼の脅しが怖すぎるなんて、亮は口が裂けても言えなかった。特に可愛い妹のには。

だってかっこ悪すぎるじゃないか。弟に脅されてるなんて。しかもその内容が、フリルのエプロンをつけていたことだなんて。

だけにはバレませんようにと祈るしかなかった。

気を取り直して、亮とはキッチンへと向かう。途中、ダイニングでレポートを書いている翼に不敵な笑みを向けられたが、それもなんとか乗り切って久しぶりに二人で夕飯を作る。

克朗が遅くなるときは、大抵か亮が夕飯を作ることになっていた。二人とも長年やっている所為でかなりの腕前を持っている。

特にはもうお嫁に出しても問題ないほどおいしい料理を作ることができた。

今日のメニューはの好物である、ハンバーグとマカロニサラダ。基本的に渋沢家はを中心に回っているので、夕飯のメニューはの好物ばかりだった。

ここからも兄たちのブラコンぶりが垣間見える。

「じゃあ、俺はハンバーグ作るから、はマカロニのほうやってくれるか?」

「わかった♪」

可愛いクマのエプロンを身にまとい、鼻歌を歌いながら料理を作る。その姿に、近くにいた亮と翼は我が妹ながら胸をときめかせていた。

そして、絶対にお嫁には出さないと心に誓った瞬間でもあった。

さっさとレポートを終わらせた翼は、洗濯物を取り込みにベランダへと向かう。そこで友達と一緒に帰ってくる一馬が眼に入った。

「あ、ただいま翼に、い・・・;」

「おかえり、一馬。今日はと一緒じゃなかったんだね

(((怖ぇー・・・)))

一馬、結人、英士の三人は翼の後ろに見えるダークオーラを感じ取り、先ほどの亮と同じく冷や汗を流した。

を送り迎えするという一馬の大事な使命・・・というか羨ましすぎる使命を果たせなかった時はソレ相応の対応が兄たちから送られてくる。

手っ取り早く言えば、なにを一人で帰らせてんだよ。何かあったらどう責任取るんだゴラァ!ということだ。

もちろん、そこは一般常識のある翼なので一馬の友達がいる前ではそんなこと言わないが、抑えきれないダークオーラはにじみ出ていた。

「じゃ、じゃあ俺たちはこれで帰るな、一馬!」

「また明日、学校で」

巻き込まれる前に逃げろという教訓の元、一馬の親友である二人はそそくさとその場を後にした。

助けてくれという一馬のオーラを知りつつ、やっぱり人間わが身が大事。取り残された一馬は翼の黒い微笑みとあとで待ち構えているであろう他の兄たちからの仕打ちを考え、心底怖くなっていた。

「どうしたの?早く入りなよ」

「は、はい・・・;」

今日はずっと部屋に閉じこもってよう・・・。そう心に決めた一馬だった。

家に入り、とりあえずダイニングへと入る。渋沢家の決まりとして、そのまま部屋へ直行することは禁止されている。

「ただいま」

「あ、おかえり一馬兄!委員会のお仕事結構かかったね」

「まぁな。英士と結人が手伝ってくれなかったらもっとかかってたけど」

「おかえり、一馬。今日は一人で帰ってきたんだな

またこのパターンか・・・。一馬は一人心の中で涙する。

薄々というか確信に近いほど感づいてはいたけど、亮も翼と同じようにダークオーラを放っていた。

それにプラスして亮には、デビルスマイル(通称デビスマ)がついてくる。そんなオプションいらないというのが一馬の心の中だが、デビスマは亮の専売特許だから仕方がない。

このデビスマで何人の女が胸をときめかせ、何人の男が恐怖に心を凍らせたのだろう。

渋沢一家は全員顔がいいからなお更怖さが増した。

「一馬兄、着替えてこないの?」

亮と翼の恐怖に身を凍らせているとき、がふっと笑いかけた。

この笑顔だけが一馬にとって唯一の癒し。家の中ではしか味方がいないとすら思っていた。

すぐにさっきのダークオーラやデビスマもどこかへ吹き飛んでしまった。

「じゃあ着替えてくるな」

「うん!夕飯できたら呼ぶね」

に心から感謝して、一馬は駆け足で二階へと向かっていく。

チっと亮が心の中で舌打ちしたのは、本人しか知らないことだった。























































































外もだいぶ暗くなり、どこの家も明かりが灯る。

そんな住宅街を、シゲは一人歩いていた。もちろん、大好きな家へ帰るために。

「はぁー今日も疲れたわぁ」

綺麗な金髪は月に照らされ、キラキラと輝いている。そんな髪を見てシゲはふっと微笑んだ。

初めて髪を染めたのは中1の冬休み。特に理由はない。ただの好奇心だった。

もちろん学校でも禁止されていたし、頭の硬い克朗は困った顔を見せていた。

しかし、そんな中だけは違った。

かっこいいと、まるで外国の俳優さんみたいだと褒めてくれた。

そのことがとても嬉しかったから、誰から何を言われようと色を元に戻そうとはしなかった。

学校では怒られたし、何度も元に戻せと言われたけど。

の喜ぶ姿がみたかったから、の笑顔がみたかったから、決して変えることはなかった。

きっとはこんなこと忘れてると思うけど、それでもいい。

これは自己満足に過ぎないから。

の笑顔のためなら、なんでもできる。それほどを大切に思っていた。

たぶん、世界中どこを探してもこんなにいい妹はいない。

それはおそらく他の兄弟たちもそう思ってるだろう。両親が家にいない以上に、我が家は幸せなんだとシゲはつくづく思っていた。

ピアスだって、この髪の色だって、全部のためのもの。

自己主張もあるけれど、それだってへのアピールなのかもしれない。

とにかく、ただひとつはっきり言えること。

が大好きだってこと。

さぁ、早く家に帰ろう。

きっとはあの綺麗な笑顔で俺を迎えてくれるから。

晩御飯のにおいと共に、の笑顔が頭をよぎる。

自分の居場所は、とても心地よい。

早く帰ろう。










愛しい家族がいる場所へ。





















苦労人が増えてる気がしません・・・?

花月