この世の中に




こんな熱中できるものがあるなんて





まったく知らなかったんだ

























































ガラクタ交響曲-SAX愛好者-
























































長く退屈な授業を終え、私はダッシュで音楽室へとむかった。

うちの担任はめんどくさがり・・・というかあまり無駄なことはしない主義なので帰りのHRは比較的早めに終わる。

そのため、いつも放課後の練習は私が一番のりになることが多かった。

「よっしゃ!今日も一番だ♪」

あ、申し遅れました。私、市立笛中学校吹奏楽部2年。です。担当はテナーサックス。一応パートリーダーを務めております。

さてさて。なぜ私がこんなに早く部活に来ているかと言うと、理由は簡単。楽器が吹きたいから!それだけです。

そう、全ては愛しい愛しいサックスのため!!

朝、部長に怒られるくらい早く来るのも(学校の鍵を勝手に開けて入ってくる)

担任に怒られるくらい朝練するのも(一時間目の授業も間に合わないこと多々)

部活の練習じゃ物足りず、近所の公園で吹いていて警察に補導されるのも(この間はまたかよって顔された)

みんな大好きなサックスのためなのです。

あぁ、この時間帯をどれだけ待ち望んだことか。睡魔と闘い全敗し続けた辛く長い授業を耐え抜いたものだけが過ごすことを許される聖なる時間。

部活最高だぜぃ!!!

おっと、こうしちゃいられない!私は荷物を1音(第一音楽室)に投げ入れるとすぐさま楽器倉庫へとむかった。

私が所属するサックスパートは入ってすぐ右側の棚に上から1年、2年、3年の順で楽器が置いてある。私は2年なので真ん中の棚。ちょっと背が低めの私にはきつい高さ。

だけどそこは愛でカバーよ!しっかりキャッチして、廊下で楽器を出す。

あぁ〜いいわぁ〜この金色に輝くボディ・・・きれいに並べられたキーたち・・・どれをとっても美しい!見てるだけでご飯3杯はいけるね!

こうしていつまでも眺めていたい・・・。しかし、それだけじゃこの子(楽器)が飽きちゃうね。

よっし!さっそく音だしだぁ!!

ルンルン気分で2音(第二音楽室または合奏室)のドアを開けようとしたとき、一音へ続く廊下の曲がり角からひょっこり渋沢部長が現れた。

「あ、部長!こんにちは」

「こんにちは、。相変わらず早いな」

「いえいえ、それほどでもあります」(キッパリ)

「・・・・・。まぁ、早く来るのは良いことだが、鞄はちゃんと椅子の上に置いておけよ?1音に投げっぱなしはよくないな」

「はい、すみません;」

「わかればいいんだ。それじゃ、俺は先生にメニュー聞きにいってくるから」

さっすが部長。細かいところまで厳しいわ;

笛中吹奏楽部では生活面において、いくつかの決まりがある。

たとえば鞄。部活中は1音が私たちの荷物置き場なんだけど、1年は床、2年は椅子の上、3年は机の上と学年があがるにつれ、使いやすさが増す仕組みになっている。

だから私は椅子の上に鞄を置くはずなんだけど・・・ぶっちゃけ床の方がずいぶんと使いやすい気がするのは私だけなんだろうか・・・。

あっ!そうだ練習練習♪鞄なんてきっと誰かが直してくれるさ!もしかしたら渋沢部長が直してくれたかもだし。(プラス思考)

「マジで好きよ好きよ好きよわたしのサックス〜♪」

秘○のアッコちゃんの替え歌を歌いながら2音へと入っていく。はぁ〜やっぱ誰もいない音楽室って最高に気持ちいいわぁv

「さて、人が集まってくる前にチューニングしちゃいましょうか!」

ちゃっちゃと今日のリードをセットし、ある程度音だしをしたあとチューナーで音あわせをする。

一応マイクもついてるけど、たくさん音のある中でやるとあんまりチューナーが反応してくれないから、こういう静かなときにやるのが一番だよね。





〜♪〜♪〜♪〜





「おぉ!今日も音程バッチリねvv」

「そいつはどやろなぁ〜」

なぬっ!誰だこの完璧な音程にケチをつける奴は!

バッと後ろを振り返ると、そこにはClを肩にかけて立つ吉田光徳、通称ノリックの姿があった。

「合ってますぅ〜ちゃんとチューナーで合わせてますぅ〜」

なんとも嫌味な言い方をしてベーっと舌を出す。だいたい、私のサックスちゃんに音程の狂いなんてないザマス!

「ほな、音だしてみ?」

言われた通りにB♭の音をだす。すると・・・





〜〜〜〜〜





後から入ってきたノリックの音と全くあっていない。

「うわっ!気持ちわるいわぁ;」

嫌な顔をして楽器から口を離す。

「うっそ!?なんで!?わかった、ノリックの音程が悪いんだ!」

音程の神、チューニングリーダーにむかって恐ろしいことを言う私。

「ちゃうて、ちゃん。ちょい、チューナー貸してくれへん?」

だまってチューナーを差し出すと画面を見てノリックはやっぱりという顔をした。

ちゃん、これ440になっとるで」

「えぇ!?!?!?!」

440とはHzのことで、私たちのバンドでは通常442で統一してある。つまり、私がさっきまでやってたチューニングは・・・

「・・・・・無意味?」

「ご愁傷さまやな」

そんなぁ〜〜!!せっかく人のいない時にできたのにぃ・・・。

そうこうしている間にも、ぞくぞくと人が入ってきてしまった。

「うえぇ〜ん!!ノリックのバカ!!」

「俺のせいなん!?」

「ちがう!」

(・・・・完璧俺のせいにしとったやん;)

もういいもん!こうなったら廊下でやってやる!音が響くからちょっとあわせづらいけど、ホールだと思えば大丈夫だよね。

チューナを急いで442に直したあと、私は楽器倉庫前を陣取って再びチューニングを始めた。





〜♪〜♪〜♪〜





あぁ、やっぱ音程違ってた;合奏中じゃなくてよかった。

なんか、とうぶん渋沢部長こなさそうだし、メニュー発表されるまでこのままでここで基礎練やっちゃお。





〜♪〜♪〜♪〜♪〜〜





う〜ん!今日も冴えてるわ♪指ならしするにはクロちゃん(クロマティックスケールの略。半音階の意)が一番だねぇ。

このままずっと吹いていたい・・・。

しかし。そんな切なる願いも神様は聞いてくれなかった。

ちゃ〜〜んvvvvvvvvvv」

「うわぁ!?」

痛っ!リードに歯打ったよぉ!誰だ、いきなり後ろから飛びついた奴は!!(泣)

ちゃん、今日もかわいいね♪」

「誠二、それ朝も聞いたけど・・・」

私よりかなり背の高い藤代誠二を見上げながら呆れた声をだす。またこいつか。もう、見るたび抱きつかれるこっちの身にもなってくれよ;

「おい、バカ代。俺のから離れろ」

低めのダークボイスが聞こえてきて、二人そろってそっちを向くと俺様サックス奏者が仁王立ちしていた。

「バカ代じゃないっスよ、三上先輩!それに、いつから三上先輩のちゃんになったんスか!ちゃんはみんなのものですよ!」

いや、私はみんなのものじゃなくて、私のものなんですけど・・・。

「ちがうなバカ代。は俺のもんだ」

「違うっす!」

「違わない」

「違うったら違うんです!」

「違わないったら違わないんだよ!」

「違うっ・――
「シャラーップ!!!!!!」

私の張り上げた大声で動きを止める二人。お、そのあっけにとられた顔イイね!

「誠二、みかみん先輩・・・」

((みかみん先輩・・・?))

「お願いだから、私にサックスを吹かせてください!」

そう言って私は2音の方を指差した。つまり、早うどっか行かんと海のもくずにしたんぞコラァということである。

これにはさすがの二人も驚いたのか、青い顔をしてそれぞれの方向に散っていった。

さぁ、これでやっと練習ができる♪再びマッピに口をあてると・・・

「終了」

不破の声が聞こえてきた。それを聞いて他の人たちはなんの疑いもなく楽器を片付けていく。

え、なんで!?まだ終了時間じゃないじゃん!!

「不破ぁ!!なんで!なんで終わりなんよぉーー!!」

今にもなきそうな顔で不破に問いただすと、少し呆れた顔で話始めた。

、聞いてなかったのか?」

「なにを?」

「今日は顧問の教師が全員いないから、部活は1時間で終わるんだ」

「そんなことだれが・・・・」

「渋沢だ」(←呼び捨て)

部長!!なんで最初に会ったとき言ってくれなかったんですか!






「ちっくしょぉーーーー!!!!!!!!!!!」






私の叫び声は遠く職員室にまで聞こえていた。





















































あぁ、音楽の神様。お願いです、どうかどうか。

































サックスを吹かせてください・・・










かなりマニアックな内容になってしまった・・・;

もっと良い文がかけたらなぁ〜

花月