感動のフィナーレは











波乱の幕開け











一冊の手帳が











感動的な最後を











ミステリアスに変える



















































































ガラクタ交響曲-定期演奏会-
















































































怖い怖い曲決めやら(結局西園寺先生がほとんど決めてて、私たちはあんまりいる意味なかった)

宣伝のポスター・看板・体育館の装飾やら(隙を見て逃げ出して楽器吹いてたら某黒部長に黒く微笑まれた)

もちろん曲の練習やら(アンサンブル練習はまとまりがなくて大変だった)

なんやかんやで定期演奏会、当日。ついにここまで来てしまった・・・ってそんな大げさなモンじゃないけどさ。

私は宣伝担当で、いろんなところにポスター張りまくったから効果抜群!部員の父兄や友達以外にも音楽好きな人たちがたくさん集まってくれた。

ありがたい、ありがたい。

吹奏楽器、打楽器、譜面、譜面台、指揮台など、必要なものは全部昨日のうちに体育館へ運んだ。後は最後の調整をして、開演を待つのみ。

今日はみんな、ステージ衣装を見につけている。ズボンは黒のスラックス。これは自前。上は笛中吹奏楽部オリジナルTシャツ。

オレンジ色のTシャツにBlass Bandとロゴが入ってる、結構かっこいいTシャツだった。

これ着るとイベントなんだなぁーって思う。だからより一層気合いが入った。

「開場してまだ5分なのに、もうこんなに人いるんですね」

「それだけ音楽好きなやつが多いってことだろ」

セッティングの指示をするため、滅多にのぼることを許されない指揮台の上へ立っているみかみん先輩の横へ行き、そっと声をかけるとそんな答えが返ってきた。

ってかお前ヒマなら手伝え、とか聞こえてくるけど無視。ヒマじゃないもーん。退屈してるだけだもーん。ってかこれからアンサンブルの調整だもーん。

「藤代!その椅子もっと右だって言ってんだろーが!」

「ちゃんと右にずらしてますよ!」

「それは左だボケぇ!お前は右と左の区別もつかねぇのか!」

「え?俺から見て右じゃないんスか?」

「俺に決まってんだろ!何でお前中心で会話しなきゃなんねぇんだ!」

あーもー・・・後ろにお客さんいるんだからそんなに大声出さないでくださいよ、みかみん先輩。まぁ、この場合誠二が悪いけど。

せんぱーい!サックスBグループ揃いました」

みゆきちゃんが嬉しそうに駆け寄ってくる。くはぁ・・・!可愛い!

1年生は初めての定期演奏会だから、すごく楽しみにしているらしい。いや、私たち上級生も楽しみなんだけど、やっぱり初めてだと何もかも新鮮だしね。

「じゃあみかみん先輩まだセッティング時間かかりそうだから、先にBグループだけ見ちゃおうか」

「はい!」

みゆきちゃんと共に体育館を出て、裏へ回る。ここなら音出してもお客さんには聞こえないから、調整するにはもって来いだ。

「あ、来た来た。おせーよ

「ゴメンよ、かじゅま」

「かじゅまっていうな!」

「はいはい。で、曲はみんな暗譜してあるよね?」

「流すな!」

「おう、暗譜してあるぜ」

「OK黒川。じゃあ最初から通してみて」

かじゅまの言葉をあっけなくスルーして、水野のアインザッツが下ろされた。

曲はサックス四重奏『子どもの遊び』。曲名の通り、可愛らしく明るい曲。

Aグループがちょっとしっとりした曲やるから、ちょうどバランスが取れてていい感じだ。

いくらBグループとはいえ、さすがは私のサックスパート。めっちゃいい音。しっかり練習してきたみたいだね。偉い偉い。

ザンっ!という軽快な和音で締めくくられた曲は、終わりを告げた。

「どうだ?

水野が心配そうに私の顔を眺める。

「うん、すごくよくまとまってるよ!これならお客さんも大満足。後はリードミスとかに気をつけて、曲の雰囲気を崩さないよう、楽しく吹けばバッチリだね!」

「ありがとうございます、先輩!」

みゆきちゃん・・・(キュン)

「おーいお前らー!そろそろチューニングだってさー!」

結人が体育館の壁からひょっこり顔をのぞかせて私たちに伝える。あー結局Aグループのアンサンブル出来なかった・・。みかみん先輩のせいだ!

「なんか言ったか?・・・・」

「み、み、みかみん先輩!」

私の後ろには米神に怒りマークを浮かべているみかみん先輩。なぜここに・・・?

「個人チューニングしようと思ってきてみたら、お前らが練習してたんだよ」

「そ、そうなんですかぁ〜!じゃあ、私たちはコレで・・・っていない!?」

「あぁ、Bグループのやつらならもう戻ったぜ」

あいつらぁ!私を置いて逃げたな!みかみん先輩の怒りに触れぬよう逃げやがったな!!

許さんぞぉ・・・!!

「それより、

「は、はい!?」

「罰としてチューニング手伝え」

「はぁ・・・」

なんだ、そんなことでいいのか。なら手伝いますよ。ちょうど楽器もあるし(いつも持ち歩いてるけど)チューニングもまだだったし。

「じゃあ最初に私からチューニングさせてもらっていいですか?」

「あぁ」

みかみん先輩御用達のチューナーを受け取る。よく見ると傷とかがたくさんあって、使い込んでることがわかった。

こう見えて結構努力家だからね、意外に。この人は。

!お前また失礼なこと思っただろ!」

「うっ・・・!」

なんでわかるんだみかみん先輩は!ずるいやぁーエスパーなんて!

お前の考えがわかりやすすぎるんだよ、と天の声がささやいた。

私のチューニングが終わって、みかみん先輩とあわせる。

アルトサックスとテナーサックスだから、私が先に音を出さないといけない。チューニングは下から重なっていく、が基本。

私の出した基本音(B♭)に1オクターブ高いみかみん先輩の基本音が重なっていく。

最初はちょっとうねったけど、そこはみかみん先輩。すぐに高いのか低いのか見極めてマウスピースを調節していた。

サックスのチューニングはマウスピースの出し入れによって行われる。金管楽器みたいに口で合わせることは稀にしかない。

「よし、完璧」

「みかみん先輩、音また良くなりましたね」

「まぁな。ってか当たり前だろ」

こンの自信家・・・!まぁいっか。仮にも先輩だしね。仮にも。

「だから!なんで叩くんですか!」

「お前がとことん失礼なやつだから」

「〜〜〜〜〜〜!」

「それはそうと、

「なんですか?」

「今回の定演、絶対成功させような」

「みかみん先輩・・・」

そうだ。今回の定演は3年生にとって最後の定演。

1、 2年生はまだ来年や再来年があるけど、みかみん先輩たちはこれが最後。なら、一番いい思い出として絶対に成功させなくては!

「まかせてください、みかみん先輩!私がいる限り、絶対に成功しますから!」

「バーカ。お前が一番心配なんだよ。さて、行くか」

ポン、と頭に手を置かれみかみん先輩微笑んだ。あんな笑顔見たことない。いつもデビスマなのに・・・。

ちょっと、得した気分。

よっしゃ!気合い入れていくぜ!、参ります!!
























































































『ただいまより、第30回・笛中学校定期演奏会をはじめさせていただきます。まず第1部、クラシックフェスティバル。今年度課題曲と自由曲を続けてお聞きください』

渋沢部長の司会で、いよいよ定期演奏会が始まった。

第1部のクラシックフェスティバル。毎年、最初は課題曲と自由曲をやるって決まってる。

これはコンクールの本番を想定したリハーサル。お客さんもいるから臨場感バッチリだ。

西園寺先生が丁寧にお辞儀をすると会場から拍手が巻き起こる。

みんなの顔を見渡して、先生がタクトを振り上げた。

まずは課題曲。今年は2番。滑らかな旋律とアンサンブルが広がっていく。

あー・・気持ちいい。やっぱり体育館は違うよね、音の響きが。音楽室は響かないから。

今回の課題曲、実は松下先生が作ったものだった。最初聞かされたときはびっくりしたけど、全国狙える!と思った瞬間でもある。

課題曲が終わり、次は自由曲。

課題曲がしっとりとして落ち着いた雰囲気の曲だから、自由曲はどっしり重い感じの短調。

最初のミステリアスな雰囲気は、ドロンで伸ばしている低音郡のおかげ。カズ先輩のバリサクが聞こえてくる。相変わらずいい音。

次に主旋律。ここはテナーも参加して、思いっきり暗い感じを出す。まるで、なにかに追われているような緊張感。

西園寺先生いわく、自由曲と課題曲はギャップがあったほうが審査員からの得点が高いらしい。

たしかに、同じ感じの曲を吹くより、全く相反する曲を吹いたほうが「あ、けっこうバリエーション持ってんじゃん」という評価に繋がる。

この2曲で・・・全国へ。

私の思いは一層強くなった。

ワァァァ!と割れんばかりの拍手が起こる。熱のこもった演奏には、自然とお客さんの笑顔が見えた。

嬉しくなって、自然と笑みがこぼれた。

『続いてお送りするのは、2000年の課題曲・Wishです。この曲は――』

渋沢部長が解説している間に、場所移動。テナーの一番端に来る。

Wish。変拍子が多くて、結構難しい曲。みゆきちゃんは死に物狂いで練習してやっと出来るようになった。これで先輩である私が失敗するわけにはいかない。

しっかりしないと、

この曲も最初は低音群のドロンで始まる。

どっしりとした伸ばしの音が体育館中に響いていく。

そして、ミステリアスな雰囲気を残しながら私たち主旋律組が入ってきた。

うん、いい感じ。

そしてフィニッシュ!全員で奏でる層の厚いハーモニー。

「ワァァァ!!!」

これも大成功。あと、クラシック部門は1曲のみ。

『続いての曲はマゼランの未知なる大陸への挑戦です。この曲は今年のマーチングコンクールで金賞を受賞した曲で、私たちの思い出の曲でもあります。今回は代理指揮であります、松下先生に指揮をお願いしたいと思います』

いつもはずぼらな松下先生も今日はビシっと決めている。

指揮台の上に立ち、力強くタクトを下ろした。

西園寺先生とはまた違う、迫力のある指揮。これはこれで、また良い。

最初は航海に出た時の静かな雰囲気。これから先に訪れる不安や期待。そして未知なる大陸に対する憧れ。

サックスは早いパッセージだけど、何とか指が回るように練習を繰り返した。元から出来てた人もいたけどね、みかみん先輩とか水野とか。テナーで出来てたのはかじゅまくらいかな、意外に。

私もみんなに追いつきたくて基礎練の時間削ってまで練習した。

だって、コレが先輩たちにとって最後の定演。そして最後のマゼラン。

成功させないと。今までのお礼も兼ねて。

誠心誠意をこめて一音ずつ吹いていく。そして、曲は壮大な雰囲気を残し、終わりを告げた。

「ブラボー!!」

「ブラボー!」

スタンディングオーベーション。みんな立ち上がって拍手をくれた。

暖かい。これが、吹奏楽の――音楽の魅力。

私たちも立ち上がり、深々と頭を下げた。聞いてくれてありがとう。拍手をくれて、ありがとう。

私たちはステージに立つたび、感動をお客さんからもらってる。それは私たちが与えているものでもあるけど。

演奏者と聞き手の感動ではまた違うんじゃないかな。

なにはともあれ、第1部大成功!

『これより10分間の休憩を挟みまして第2部ソロ・アンサンブルに移ります』

「はぁー!楽しかった!ね、カズ先輩!」

「そやな。なかなか良い演奏だったばい」

「次、みゆきちゃんじゃない?頑張ってね」

「ありがとうございます!頑張ります!」

みゆきちゃんはにっこり笑ってステージ袖へ移動した。初めてのソロ。緊張してるだろうなぁ。

でもきっと大丈夫。あんなに一生懸命頑張って練習してたんだもん。

、人の心配してる暇あるわけ?」

「げっ!翼先輩!いつの間に・・・」

「僕らを差し置いて第2部のトリやるんだから、それなりの演奏してもらわないと困るんだけど。もし僕らより下手な演奏したら・・・どうなるかわかってるよね?」(にっこり)

こ、こ、怖い・・・っ!!!!怖いよー!お母さんー!お父さんー!私の後ろに天使のような悪魔が・・・!

「だ、大丈夫ですよ!しっかりやって見せますから!見ててください!」

「期待してるよ」

期待してるよ、とは裏を返せば絶対失敗すんじゃねぇぞコラぁ!である。

いやぁ・・・私もだんだん人の心がわかるようになってきた。いや、こんなん読めてもしょうがない・・ってか読めて当たり前なんだけどさ。こんな黒いオーラ。

「そろそろ始まるよ、ソロが」

「英士・・・それシャレ?」

「そう聞こえるの思考回路が寒い」

「・・・・ですよね」

英士に冷たい目線で睨まれながら、私はステージの端で出番を待っていた。ステージではみゆきちゃんがソロの曲を吹いていた。

まだはじめたばかりなのに、あんなうまくなって・・・。自分のことのように嬉しかった。頑張ったね、みゆきちゃん。偉いよ!私の背中は任せた!

「緊張しました・・・」

「お疲れ様!みゆきちゃん!すっごくよかったよ!」

「本当ですか!?ありがとうございます!」

二人で微笑みあう私たちを見て、周りの男達が頬を赤らめていたのは、また別の話。

「あ、ソロが終わった。次翼先輩たちですよね。頑張ってください」

に言われなくても頑張るよ。ま、しっかり聞いてることだね。僕達の華麗な演奏」

「・・・・・はい」

翼先輩のあとに続いて金管グループがステージに立った。

ほとんどが3年生で構成されているこの金管グループ。このメンバーでやるのは、今年が最後。しっかり目に焼き付けておかなきゃ。

「やっぱり、上手かね」

「カズ先輩。そうですね、上手いですよね」

「俺らもしっかりやらんとな。

「はい!」

あ、金管グループが終わった。次はサックスのBグループだ。

「みんな、しっかりね!」

「まかせとけ」

黒川がにやっと笑って私の肩を叩いた。こんな顔見るのコンクールのとき以来だ。

相当楽しみにしてたんだね、黒川にしては珍しく。

こりゃ楽しい演奏になりそう!

。お前ちゃんと俺のアインザッツに合わせろよな?」

「な!みかみん先輩こそ、ちゃんとわかるようなアインザッツだしてくださいよ!」

「んだとこら!てめー・・・!」

「はいはい、そこまで。本番前にケンカすんなって」

みっくんが呆れたように私たちを止める。

全く、チューニングのときはちょっと見直したのに。やっぱり先輩はこういう人だ!もう!

「ほら、Bグループが終わったみたいだぜ。早く行こ!」

みっくんに諭され、素直にステージに立つ。

目の前に広がる観客席。みんな期待の目で私たちの演奏を心待ちにしている。

プレッシャー、緊張。それは当然あるけど、それ以上に・・・。

「楽しまなきゃ!」

小声で呟いた言葉に、メンバー全員が頷く。

そして、Aグループ。私たちの演奏が始まった。


































































































『以上を持ちまして、第2部ソロ・アンサンブルを終わらせていただきます。続きましていよいよ最後、第3部のポップスカーニバルを始めさせていただきます!』

来た来た!一番最高な時間!

いよいよトリの第3部!お客さんも今日一番の盛り上がりを見せている。

『最初にお届けします曲はルパンThe3rd。今も昔も輝きを失わない怪盗ルパン3世の世界をお楽しみください』

部長がそういうと同時に先生のタクトが下ろされた。軽快なリズムが広がっていく。みんな知っている曲だからこそ、みんな盛り上がれる。

でも、ミスは許されない。すぐわかっちゃうから。

クラシックとはまた違う緊張感が襲い掛かった。

楽しい時間っていうのは、過ぎるのが早い。すぐに最後の曲も終わりを告げてしまった。

『以上を持ちまして・・・』

部長が定演の最後を告げようとしたとき、客席のいたるところから声が上がってきた。

「アンコール!」

「ブラボー!アンコール!」

やがてそれは会場全体に広がり、アンコールと手拍子がうめつくした。

「渋沢くん、戻っていいわよ。後は私がやるから」

西園寺先生が部長からマイクを受け取り、客席に向かって一礼する。

『本日は笛中学校定期演奏会にお越しくださいまして、誠にありがとうございます。みなさまのアンコールにお答えしまして、僭越ながら私が作曲いたしました曲、再会を演奏させていただきます』

再会。入部して一番最初に渡される曲。引退式で一番最後に吹く曲。

確かにアンコールにはもってこいの曲だった。

これで、3年生は最後の定演での演奏。私たちがへまするわけにはいかない。

ちゃんとした形で、最高の思い出にしてほしいから。

心をこめて・・・。

西園寺先生のタクトが振り下ろされ、演奏が始まった。

軽快なマーチ。あぁ、なんて――

「素晴らしい・・・!」

客席の一番後ろから、そんな声が漏れた。

ダンっ!!

ビシっと決まったフィニッシュ。割れんばかりの拍手喝采。

私たちの定演は、終わりを告げた。























































































「終わったー!!打ち上げにでも行く?」

「お、いいなそれ!行こうぜ!」

「待て。、若菜。まだ片付けが残ってるだろ?」

「「し、渋沢部長・・・」」

「家に帰るまでが定演だ。そうだろ?」

「「は、はい;」」

((遠足かよ!))

心の中で静かにつっこむ。しかし、決して口に出すことはしない。もし口に出してしまったら・・・命がない。

私たちがしぶしぶ後片付けに加わったとき、シゲは一冊の手帳を眺めていた。

「シゲ?どうした?」

水野が後ろから覗き込む。そこにあったのは・・・。

「どうやらいらん客が入ってたようやな、タツボン」

「あぁ・・・」

シゲが持っていたのは、『私立桐原学園』と書かれた手帳。

何かが、動き始めていた――





























ちょっとミステリアスな雰囲気にしてみました。ってか無駄に長いですね・・・;

花月