私は人生の中で一度だけ奇妙なことを経験した
今日はその時のことを語りましょう
あれは世にも恐ろしい
ありえない朝
ガラクタ交響曲-酷すぎた合奏-
最近酷い風邪が流行ってるらしいけど、そんなこと私には全然関係ナッシング!今日も元気に休日練を満喫しに部活へとやってきた。
昨日サックスの練習をしすぎた所為でほんの少し寝坊しちゃったけど、それでも規定の時間より1時間30分早い。
今日も2音は私のものだわ!というわけで、ダッシュで音楽室へ。
私の予想通り誰もいない。よっしゃ!今日もハッスルしちゃいますよ〜!!
・・・・・しかし。私はこのとき知る由もなかった。このあともずっと私が一人になるなんて・・・。
時間の流れっていうのは無常にも速いもので、すぐにみんなが来る時間になった。
だけど、待っても待ってもパートの人どころか部員誰一人としてこない。なぜに?
「もしかして、今日休みだったとか?」
愛しいサックスを首から提げたまま、基礎練の本を閉じて私は1音へ向かった。
バックの中から今月の予定表を取り出すと、今日の日付は確かに1日練習が入っている。
2音の時計が狂っている説も浮上したけど、1音の時計と同じ針を射しているから大丈夫。なんでみんな来ないわけ!?
「一人じゃ基礎練しかできないよぉ。早くみんな来ないかなぁ」
これでみんなが来なくて、西園寺先生が来たら怒られるだろうなぁ。それで私は褒められる!それはそれで結構いいかも♪
いつも怒られっぱなしの私にとってはまたとないチャンス!しっかり練習して、先生にいいとこ見せとかないとね!
さっそく2音に戻って、また基礎練を一からやり直した。
誰もいない静かな2音に私のサックスの音と時計の秒針だけが鳴り響く。それが異常に気になって、私はパタンと、本を閉じた。
「き、気になって練習できやしねぇ・・」
どっかの訪問演奏だっけ?それとも練習場所が違うとか?あ!連絡網回ってきて、実はやっぱり休みになってたり!?
考えれば考えるほど悪いことばかり浮かんできて、もう練習どころではなくなってしまった。
お願いだから誰かきて!このままだと集中できない!
と、その時。2音のドアがギィという音を立てて開いた。
「天の助けー!!!」
「はぁ?」
「したらん!君は私の救世主だよ!!」
「落ち着けよ、。なんでそんなに喜んでんだ?」
ファゴットを持ったまま突っ立っているしたらんと抱きついてる私。どう見ても怪しい光景だけど、それ以上に私は嬉しかった。
これで部員が二人に増えた!やっぱ休みじゃなかったんだ。よかったぁ。でも、なんでみんな来ないわけ?
「ねぇしたらん。今日って部活始まる時間遅いの?」
「いや、普通にいつも通りだぜ」
「だよねぇ。誰も来ないんだよねぇ」
「そろって遅刻じゃねぇの?」
「そっか」
まぁいいや。したらん来たからこれで集中して練習できる!早速レッツ!基礎練!
したらんから離れて(やっとかよって顔された)私はまた本を開けた。あーこれもうそろそろ買い換えなきゃ。ボロボロだ。まだ買って1年経ってないのに。
クロちゃんを全調でやっていると、また2音のドアが開いた。
「なんだ、かじゅまか」
「なんだってなんだよ!あとかじゅまっていうな!」
「はいはい。それより、ひとつ聞いてもいい?」
「ん?」
「なんでバリサク持ってるの?」
「はぁ?」
あ、したらんと同じ反応。ってそうじゃない。かじゅまはテナーのはず。それがなんでカズ先輩の楽器持ってるんだ?
「・・・・・、お前熱でもあるんじゃないか?」
「それはないぜ、真田。ホラなんとかは風邪引かねぇっていうじゃん」
「なるほど、そっか」
「ちょっと待て!なんで二人は納得してるの!?」
「あ、なんとかは風邪引かないっていうくだりには突っ込まないんだ」
「シャラップしたらん!」
認めたわけじゃないからね?ただそうなのかな、って感心しただけだからね?
っていうか問題はそこじゃないのよ!なんでかじゅまがバリサク持ってるのかって話よ!
「まさか、バリサクやりたいがためにカズ先輩を・・・!」
「殺してるわけねぇだろ、ってかなんでそんなに驚いてんだよ」
「だってかじゅまはテナーで・・・カズ先輩!!」
「おう、相変わらず早かね」
これぞ本物の天の助け!Myスウィートカズ先輩の登場ですよ。
が!ここでも事件発生。事件です、姉さん。なんでカズ先輩まで違う楽器持ってるんですか?
「カズ先輩、間違ってたらすみません」
「あぁ?」
「それって・・・・・・ホルンやなかですか?」
「なんや当たり前やろ。とうとう目までおかしくなったとね?」
そうかもしれない。私ついに目までおかしく・・・。サックス以外は見分けられない目になってしまったのかもしれませんよ、カズ先輩。
「なんでですかカズ先輩!なんでカズ先輩がいきなりホルンを!?」
「前からそうやったやろ。アホか、」
「嫌だー!戻ってきてくださいー!!」
「どげんしたんや?」
「さぁ」
カズ先輩とかじゅまは互いに顔を見合わせて首をかしげている。したらんも同様に。
え、なに!?私がおかしいの!?私が間違ってる!?コレが正しい反応じゃないの!?
「失礼します」
「あ、翼先輩!聞いてくださいよ!みんなおかしいんで・・・・あれ?」
やっだなぁ、翼先輩までそんな冗談を。みんな今日はドッキリパーティー?
な・ん・で!!翼先輩がフルートを!?ってか似合いすぎ!
「なに青ざめてんのさ、」
「いえ、翼先輩がフルート持ってるから・・・」
「前から変だとは思ってたけど、ここまで変だとはね。呆れたよ」
「私がおかしいんですか!?」
「「「「うん」」」」
そんな、うんって・・・・。声をそろえて言わないでよ。傷つくじゃん;
わかったわかった。もう私は驚かない。絶対に驚かないよ。何があっても驚かない。
そう心に誓って私は自分の席で精神統一を始めた。もちろん楽器を吹きながら。
それからしばらくして、部員がどかんと集まってきた。無論、その手にはいつも使っている奴とは違う楽器を持っている。
驚かない。平常心、平常心。何事も涼しい顔をしていればいいんだよ。
大丈夫、落ち着け・・・落ち着け・・・落ち着けるかぁ!!!!!
「みんな!どうしたんですか!なんで違う楽器ばっかり持ってるんですか!?」
「何言ってるんだ、」
「渋沢部長!あなたはトロンボーンだったはずですよね!それがなんでピッコロ持っちゃってるんですかぁ!?」
「俺はもとからピッコロだが?」
「違いますよ!断じて違います!!」
「そう言われてもなぁ・・・」
「何してるの?」
『さ、西園寺先生!』
私と渋沢部長が言い争っているところに、西園寺先生が現れた。
そうだ!西園寺先生ならきっとわかってくれる!仮にも先生だし、しっかりみんなを指導して・・・。
「さん、早く席に着きなさい。合奏を始めます」
んなわけなかった。高望みした私がバカでした。
なにあっさり受け入れてるんですか!?なんで?あ、これもしかして新種のウイルス?私以外のみんなが新しいウイルスにかかっちゃってるわけ!?
「、早う席つかんね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい」(ボソっ)
変な日だ。こんなに変な日は他にない。あってたまるか。
せめて合奏くらいはまともにやってくれないかな。だって人の楽器持ってるってことは、それなりのスペシャリストでしょ?
隣にテナーを持った将ちゃんがいるからすっごい違和感あるけど、そこを何とか押さえて私は先生のほうを見た。
先生は相変わらず涼しい顔で指揮台に立っている。本当に違和感ないのかな、先生。
「それじゃあ最初から、Dまで通します。音程に気をつけて」
『はい』
先生のタクトが振り下ろされる。そして奏でられた音は・・・。
!%&#$|‘*!!??!!?!??♪
「ちょ、ちょっと待ったー!!!!」
「あら?どうしたの、さん」
どうしたのじゃないよ先生!なに?この演奏!みんな始めて楽器持った人たちの集まりじゃん!
全然なってない!音程どころかフレーズもふけてない!不協和音過ぎる!
「とてもいい演奏だと思うわよ?」
「どうしちゃったんですか、先生!」(泣)
認めない!絶対にこんなの認めない!こんな合奏なんて・・・なんて・・・
「嫌だぁー!!!!!!!!!!」
はっ!
部屋中に鳴り響く目覚ましの音。辺りを見渡せば変な合奏はなくなっていて、自分の部屋の風景が広がる。
「ゆ、め・・・?」
夢。夢・・・夢!!!!
「おっしゃぁ!!!」
私はベッドの上でガッツポーズをした。そうだよ!あんな合奏あってたまるか。
カレンダーをみれば、今日は1日練の日。よし、今度こそまともな日々を送ろう!ってあれ?
時計が指していた時間は、部活開始の時間だった。
「ノォーーーー!!!!!!!!!!!」
-出席確認、日生の記帳より-
○月×日△曜日
遅刻者1名・
理由「夢見が悪かった」
担当者のコメント「ふざけんな」
夢オチ。渋沢さんがピッコロ持ってたら面白いなぁと。
花月
