味方はいない
部員全員が敵
自分ひとりで
見つけ出すしかないんだ・・
ガラクタ交響曲-音のない一週間-
突然ですが、私。は今最大のピンチに立たされているのであります。
というのも・・・・。
「今日からテスト期間なので、一週間部活動停止となります。その間楽器に触ることは一切禁止となるので、くれぐれも規則を破らないように。わかったわね?さん?」
なぜ名指しなんですか、西園寺先生。そしてみんななんで私の方を見てるんですか?っていうか、なんで私はみかみん先輩によって羽交い絞めにされてるんですか?
そうです。テスト期間。この時期はいつも私にとってのピンチだ。SAX愛好家のわたしとして、一週間も愛しの楽器に触れないのは、地獄を意味する。
あー神よ!ただでさえテストが嫌いなのに、なんで楽器にまで触れちゃいけないんですか!?これは私にとっての罰ですか!?
「ちょっ・・・離してくださいよ、みかみん先輩」
「ダメだ。お前離したらすぐに楽器隠すだろ?」
「なっ!なんでバレてるんですか!?」
「テスト期間のたびに同じことしてりゃバレないもんもバレるだろ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「おい、藤代。早くの楽器隠せ」
「了解っす!三上先輩!」
「誠二!この裏切り者!」
「ごめんねちゃん。これも全部にんじん一週間分食べなくて良い権利のためなんだ」
くっそー!みかみん先輩め!いいように誠二言いくるめやがって。
言いなりになる誠二も誠二だ。こんなことになるんなら、テスト前に隠しとけばよかった・・・。
「はい、じゃあ今日から一週間テストがんばってね。以上、解散」
『ありがとうございました!』
バラバラと帰っていく部員達。やっとみかみん先輩からの呪縛から解き放たれる私。
「苦しかったじゃないですか、みかみん先輩!女の子なんですから、もっと優しく接してくださいよ!」
「お前は性別上女だけど、俺の中では雌だから問題ない」
「問題なくない!!!」
雌ってなんだよ。人間にも見られてないってことかぁ!?
いずれ名誉毀損で訴えてやる・・・ってなんの名誉もないけどさ。
そんなこんなで、今回も始まってしまったテスト期間。前回まではなんとかテスト期間中でも吹けたんだけど、楽器隠されるのは初めてだしなぁ・・・。
こうなったらやるしかないですよね。
SAX愛好家として、この状況を黙って見過ごすわけがない。
毎朝鍵壊してまで学校に入ってくる女の根性見せてやるっ!!
なので、女。楽器捜索に入らせていただきます!
○月曜日○
そぉーっと忍び込む楽器倉庫。
まずはここから探さないとね。木を隠すには森ってやつよ。
どうせ誠二が隠す場所なんて大体いらなくなったティンパニーの裏とか、古びた打楽器の中とかに決まってるわ。
しかし。ティンパニーの裏にも、古びた打楽器の中にも私のサックスの姿はない。
なんで!?絶対ここだと思ったのに。もう基礎練のメニューも考えちゃったのに。
「なにしてんだ?」
「げっ・・・・つ、翼先輩;」
「まさかとは思うけど、楽器探してたなんていわないよな?」(にっこり)
「・・・・・・・・・・・・・・・」(滝汗)
「はぁ、そんなことだとは思ったよ。言っとくけどここにはないから探しても無駄だよ」
「そんなぁ!じゃあどこにあるんですか!」
「そんなん言ったら隠したら意味ないだろ?」
確かにその通り。一日目、楽器倉庫。捜索結果、なし。
○火曜日○
次に狙うは第2音楽室。つまり合奏部屋。
どうせここにあるんでしょ?ってかあってください、お願いします。
この部屋で隠せる場所といえば・・・やっぱりパーカッションのところかな。
ホントはパーカッション以外の人は入っちゃいけないんだけど、愛しい愛しいサックスのため。意を決して入っていく。
にしても、2日使ってないだけでだいぶほこりかぶっちゃってるなぁ。そういえば、パーカッションの人たち毎日楽器の手入れしてたしね。
そりゃやらないとこーなるわけだ。
「ここにもなし、かぁ・・・・」
「なにがなかとね??」
「か、か、カズ先輩!?なぜここに!?」
「楽譜とりに来たらパーカッションのところでゴソゴソやっとったけんな。そりゃ気付くとよ」
「さ、さようで・・・;」
「言っとくが、ここに楽器はないけんな?」
「マジっすか!」
「当たり前やろ。こげんわかりやすかところに隠すほど藤代もバカじゃなか」
いや、あいつは結構バカだと思うんだけど・・・・まぁいいか。ってよくない!どこ!?私のサックスはどこなの!?
二日目、2音。捜索結果、なし。
○水曜日○
2音にないなら1音にあるでしょ、ってことで1音へ侵入。
暗い1音って結構怖い・・・。でも、SAXのためなら火の中水の中の精神で進んでいきます!
1音で隠すところとなるとやっぱりピアノの下か指揮台の下。それか掃除用具入れの中。
まずはピアノの下。そこはやっぱりなし。そりゃこんなとこにあったら逆に怒るわ。
次に指揮台の下。ここもなし。うーん・・・物理的にムリか。入んないしね。
最後に掃除用具入れの中。こんなとこにあったらキレます。ってか誠二はもうすでに半殺し決定だけど、余計殺すよ。
とかいいつつ、ここにもなし。
一体どこにあんのよー!?
「?」
「はいぃ!?」
振り返るとそこはユートピア・・・ではなく、かじゅまの姿が見えるだけ。
「なにしてんだ?こんなとこで」
「あ、いや、その・・・ちょっと探し物を」
「あぁ、楽器か」
「そう楽器・・・って知ってんなら聞くな!」
「んなに怒んなよ。まぁここにはないけどな」
「かじゅま私の楽器がある場所知ってんの!?」
「かじゅまっていうな!知らねぇけど、俺ここの掃除当番だから、くまなく見てんだよ。それでもないから、ねぇんじゃねぇの?」
そっか・・・そういえば、掃除当番だったね。今週。私は楽器が心配でそれどころじゃなかったよ。
三日目、1音。捜索結果、なし。
○木曜日○
あと音楽関係の部屋といったら、ここしかない。音楽準備室。
本当は先生の部屋だから入っちゃいけないんだけど、お決まりの裏技(鍵開け)であっさり侵入。
西園寺先生に見つからないことを祈るだけ。
ここで隠せそうな場所は・・・楽譜入れの棚くらい?
楽譜入れの棚を捜索するけど、それらしき影はなし。うーん・・・さすがにここはないよね。
だってさっきまで鍵かかってたし。でももしかしたらあるかもだし・・・どうしよう。
「ここにはないよ〜☆」
「WHAT!?」
「この場合WHOだよ、」
「ユン、英士!なんでここにいんの?」
「楽譜とりにきたんだよ!ちゃんまだ楽器探してるの?」
「当たり前よ!SAX愛好者の名が廃るわ!」
「そうだよね。でもここにはないよ。鍵かかってたし、西園寺先生の下に置いとくほど藤代もバカじゃないから」
やっぱそうだよね・・・西園寺先生怖いからなぁ・・・。いや、美人だけど。
四日目、音楽準備室。捜索結果、なし。
○金曜日○
音楽関係の部屋は全部調べたけど、もうない。
ということは、身近なところにあるかも!?ということで、誠二のいる2−Cへ。
「あれ?、なにしてんだ?」
「結人!私の楽器しらない?」
「まだ探してんのかぁ;でも残念ながら、ここにはないよ」
「なんで!?誠二のことだから身近に置いとくかと・・・・」
「あいつもそこまでバカじゃないだろ。俺も誠二にさりげなく聞いてみたけど、教室じゃないってさ」
なんだぁ・・・誠二の頭の具合がよくわからなくなってきた。
はたしてあいつはバカなのか、本当は頭がいいのか。
謎・・・。
五日目、2年C組。捜索結果、なし。
○土曜日○
ダメ・・・私もうダメ・・・楽器がないと生きていけないの!死んじゃうの!マグロと一緒なの!(?)
どこにあるのよ、私の楽器!早くあの子にあわせて!マルコー(壊)
「あれ、ちゃん。どうしたの?そんなにへばって」
「お前のせいじゃボケぇ!!!!!」
気軽に声をかけてきた誠二の首を思いっきり締める。だんだん青ざめていく顔色を気にもせず、どんどん締める。
どこに隠したぁ!私の楽器ぃ!!!
「ゲホっゲホっ・・!ちょ、落ち着いてちゃん・・・!!」
「どこだぁ!私の楽器!!!!出せぇ・・!!!」
「わかった!わかったから!場所は教えられないけど、ヒント!」
「ヒント!?なになに!?早く教えて!!」
「それは・・・・」
「それは・・・・?」
「・・・・・・・・・・音楽関係の部屋じゃありません!!!」
ドカーン!!!
思いっきり殴る私。思いっきり吹っ飛ぶ誠二。
んなもんとっくに探してないこと確認済みなんだよ!もっと立派なヒントをよこせ!
役立たず!(号泣)
六日目、聞き込み。捜索結果、なし。
○日曜日○
今日で最終日!なんやかんやで最終日になってしまった!今日が終わるまでになんとしてでも見つけ出さないと!
一階から四階までくまなく探したけど、やっぱりない!あとどこ探してない!?もしかしてもう、地球上にないの!?
あきらめかけてたその時。私の親友有紀が一言こう言った。
「、自分のクラス探した?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はっ!!!!!
「探してない!探してくる!」
そして・・・。
「あったぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ようやく見つけたよ!私のスウィートマイ楽器!会いたかったぁ!
と、ここで部活終了の声がかかる。
結局1週間私は一回も楽器を吹けませんでした。
教訓:灯台下暗し
タイトル聞いて暗い話をイメージされた全てのみなさまに謝ります。
花月
