『新着メールなし』
その文字を何度みただろうか
そのたびにため息をつく私の心は
いつもあの人からのメールを待っている
募る不安 寂しさ
でもそれをなくしてくれるのは
やっぱりあの人しかいないの
離れていても
忙しいのもわかってる。大変なのも痛いほど知ってる。
どれだけ練習に力注いで、どれだけ毎試合を大切にしているか。それは私が誰よりも理解しているつもり。
でも寂しくて。とても切ない。離れてるからメールとか電話とかでしか連絡とれないのに、最近それすらない。
どれだけ理解してても、どれだけ一馬のことを思っても、やっぱり寂しいもんは寂しい。
今朝も携帯の電源を入れて、新着メールを確認する。もしかしたら、夜にメールが入ってるかもしれない。
でも、画面に映る文字は『新着メールなし』の表示。朝から大きなため息をついた。
この前久しぶりに会った時、ちょっとケンカっぽい別れ方をした。我ながらわがままなことを言ったと思う。
「どうして最近メールしてくれないの?」
一馬は困ってた。当たり前だよね。忙しい合間にメールしてくれるのに、それでも足りないなんて言われたらどうしていいかわからない。
そのときは私もむしゃくしゃしてて、思ってもないこといろいろ言ってしまった。今ではすごく後悔してる。
そのあと、ちゃんと謝ってくれて、私も謝った。けど、その日を境にまたメールは届かない。
電話してっていうメールを送っても返信はなし。無論、電話もなかった。
話したいことたくさんあるのに、伝えたい気持ちたくさんあるのに、それが伝わらない。全て一方通行。
こんなに辛いなら、いっそのこと別れてしまおうかとも考えた。でも、それすらできない。こんなにも一馬が愛しい。
メールが来なくて怒っているのに、たった1通メールが来るだけで嬉しくなる。単純といわれればそれまでだけど、たぶん人間なんてそんなもん。
今日もまた、来ないメールを待ってる。何回も問い合わせして、何回も確認して。
狭いアパートの部屋で一人、私はケータイを握り締めていた。
時計の音が大きく聞こえる。時刻は9時45分。今日もまたこないんだろうなぁ。
半ばあきらめかけていたそのとき、ケータイが激しい音を立ててなった。小窓には真田一馬の名前。
しばし呆然としたあと、すぐに通話ボタンを押す。
「もしもし・・・」
『あ、か?ゴメンな急に電話して』
「ううん、大丈夫・・・どうしたの?練習終わったの?」
『あぁ、これから家に帰るとこだ。・・・どうした?元気ないな』
一馬の所為だよなんて絶対に言えなかった。電話ごしなのがありがたい。もし直接顔が見えていたら、泣いているのがバレてしまうから。
なんでもないよ、と私は答えた。精一杯声の震えを抑えて。でも、やっぱり一馬には隠し事ができないらしい。
彼にしては鋭いほうだった。なんで気付かれたんだろう。この泣き声に。
『泣いて・・・るのか?』
否定できなかった。泣いてないよって言えない。だって止まらないんだもん。止まれって命令しても、身体はそれを許さなかった。
その言葉を合図に私は声をあげて泣いた。安心したのか、寂しいからなのか、まったくわからない。
ただ胸に残るのは、複雑な気持ち。壊れそうなほどのこの感情に、名前は付けられない。
「か、ずま・・・ごめんね・・・」
『な、なんで謝るんだよ!悪いのは俺だろ?』
違うよ、私が悪いの。わがまま言った私が全部悪いんだよ。一馬は悪くない。
一馬はサッカーだけに集中して欲しいの。誰よりもサッカーに没頭してほしい。そんな一馬に私は惚れた。だから、いつも楽しそうにボールを蹴っていてほしい。
それなのに私は、自分勝手なことばかり言った。練習が忙しいのに、メールが欲しいとか電話が欲しいとか、普通のことを夢見てしまった。
誰よりも一馬を応援すると誓ったのに、逆に足引っ張ってる。それでもまだ別れたくないとか言ってる私は、この世で一番わがままな女だ。
だから、嫌われたと思った。けど、それを聞くのが怖くて。私なんてもういらないと言われるのが怖くて、聞けなかった。
「嫌いに、ならない・・で・・・!!」
『?』
嫌わないで。お願い。私が悪いの。もうわがまま言わないから、お願い。いらないなんて言わないで。
『俺がを嫌うわけないだろ?』
「え・・・?」
頬をぬらしたまま、私はただ言葉を失った。一馬の言った言葉の意味が理解できない。
「嫌いじゃ、ないの・・・?」
『当たり前だって!俺のほうこそ、のこと構ってやれなくてゴメンな』
「一馬・・・」
嫌いじゃないって言ってくれたことが嬉しい。けど、それ以上に、一馬の心の中に私がいることが嬉しかった。
嫌われてなんかなかったんだ。よかった。心のそこから安心できた。
「ありがと、一馬・・・」
『大好きだよ、』
「私も、大好き」
一馬の言動で私の心は揺れ動く。それがなんだか悔しいけれど、嬉しくもあった。
大好きな人がいるっていうのは、たぶんそういうこと。
いつも私は一馬のことを想ってる。それが恋をするってこと。
一馬の心に私がいる限り、私は一馬を愛し続ける。
大好きな人。この世で一番愛しい人。
半分実話です。日記を見ている方はわかると思います。でも私は、あんな言葉かけてもらってません;
やっぱりメールも電話もこなくてまいってます。すっごいテンション低いです。
花月
