突然起こったハプニング
でもそれは
きっと神様がくれた
恋のチャンス
ハプニング
放課後、部活が終わったカズは人気の少ない廊下を歩いていた。
いつもならすぐ家に帰って練習をするのだが、今日は生憎先生に頼まれたノートを提出しなくてはならなかったため、職員室によっていたのだった。
「失礼しました」
さっさと提出物を出し終えたカズは、急いで昇降口へ向かう。一刻も早く練習がしたかったのだ。
そのとき、廊下の突き当たりから大量のボールが入ったケースが歩いてきた。
大きなケースの所為で顔は見えなかったが、こんな無謀なことをするやつはカズの知っている限り一人しかいない。同じクラスのだ。
「」
ため息交じりに呼ぶカズの声に反応して、が思いっきり振り返った瞬間。案の定バランスを崩した彼女はケースと共に転んでしまった。
「いったぁ・・・」
「大丈夫や?」
「あ、功刀くん。おつかれ〜」
打った腰をさすりながら笑顔で挨拶をする。おっちょこちょいというか、なんというか。少し他人とずれているところがある彼女にカズはまたため息をつきながらボールを集めはじめた。
「なしてこげん重かもん一人で運んどーと?フラフラ歩きよって、危なかやろ」
「体育の先生に体育倉庫まで運んどけって頼まれてね〜」
「なにもいっぺんに運ばんでも、2回に分けて運べばよか」
「あ、そっか!頭良いね功刀くん!」
ポンと手を叩いて、心底納得したような目でカズを見る。対してカズは、そんなことも気付かないのかと呆れてしまった。
あらかたボールを拾い集め終わると、はまたケースを二つ重ねて持ち上げようとする。それを慌ててカズが止めにはいった。
「おい、お前さっきの話ば聞いとったか?」
「え?何を?」
カズの身体から一気に力が抜けていく。危ないから2回に分けて運べと言ってなるほどと納得したのは紛れもない本人だったのに。しかも、まだその話をしてから1分も経っていない。
どこまでボケてるんだこいつは・・・。
話してもわからなそうだと判断したカズは、何も言わずにケースを一つ持ちあげた。それをただ呆然と見ているだけのを置いてスタスタと先に行ってしまう。
「あ、ちょっと待ってよ功刀くん!悪いからいいって」
「女の子にこげんもん持たせられんと。特にに持たせたら死人が出るったい」
「そんなに褒めなくてもいいよ。照れるから」
「褒めてなか!」
疲れる会話。さっきから何度したであろうため息をまたついて、カズはと共に体育倉庫へ向かった。
校舎から体育倉庫まではグラウンドを突っ切っていくため、少し距離がある。それをこのケース2つも抱えて歩くなんてムリに等しい。ましてや女の子なんかに。
カズは改めての無謀さを知った。否、彼女はきっと何も考えていないに違いない。少し考えれば他の人に手伝ってもらうなり、分けて運ぶなりできるのだから。
(俺が通りかからんかったら、どげんするつもりやったんやろ・・・)
考えただけでもおぞましい大惨事を予想して、カズは少し青ざめる。そして自分を職員室に呼び出した教師に感謝した。
しばらくして体育倉庫につく。部活が終わったころからもう薄暗かったが、この時期になると日が落ちるのがめっきり早くなる。辺りはすでに暗くなっていた。
倉庫の中は照明器具などないため、外よりも断然暗さが増している。足元も見えないほどだった。
「。だいぶ暗くなりよるけん、足元気をつけ・・・・」
「うわぁ!!」
「って言いよる傍から、おまえは・・・!」
額に青筋を立てながら、仕方なく手を差し伸べる。は笑いながら手をつかんでゴメンね、と立ち上がる。そして、カズの後ろを見て驚いたような表情を浮かべた。
「ん?どがんした?そげん驚きよって」
「功刀くん。さっき入ってきたとき、シャッター閉まってたっけ?」
「いや、閉まっとらんけど」
「なんかさ、閉まってるみたいなんだけど・・・気のせいかな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・ホンマや」
同様後ろを向いたカズも、驚きを隠せなかった。入るときまでは開いていたはずのシャッターが今はぴったりと閉じている。
大方、この暗さで中に人がいることに気付かなかった先生が閉めてしまったのだろう。全く面倒なことをしてくれる、とカズはシャッターに近づき思いっきり上へ引っ張った。
「あれ?」
「どうしたの?」
再度上に引っ張る。それでもシャッターはびくともしない。ということは・・・・。
「鍵閉められたと」
「うっそぉ・・・・」
一気に青ざめていく二人。こんなところで一晩を過ごすなんて、考えられないことだった。
いろいろな風景が頭をよぎる。もちろん家にも帰れないから、捜索願なんて出されたりして、警察沙汰になってしまったり。とにかく大変なことになることだけは確かだった。
「とにかく明かりが欲しか。こげん暗かとこじゃ、出れるもんも出れんたい。、ライターかなんか持っちょるか?」
「ライターはないなぁ」
「そうか。俺もライターは持っちょらんし、マッチでもあれば・・・」
「でも、ろうそくなら持ってるよv」
「早う言わんかい!なしてろうそくなんち持っちょるん!?」
がバックから取り出した大量のろうそくにマッチで火を灯す。これでだいぶ明るくなった。
「よし、コレでなんとか見えるようになったと。これからどげんしよか・・・」
真剣に考えるカズの後ろで、必死に何かをしている。カズはそれを見てまた小さくため息をついた。
「、今度はなんばしよるん?」
「窓から出られないかと思って」
笑いながら上を指す。そこには人一人がやっと通れるほどの小さな窓があった。
しかしそこはかなり高い位置にあり、手をかけることすら難しい。それでもなお必死にジャンプして何とか窓に手をかけようとするを見て、カズもその腰をあげた。
「功刀くん・・・」
「お前より俺ん方が背が高かよ。ちょっとは届くかもしれんやろ」
カズはの顔を見ずに言う。そして、はきれいに笑った。しかし、その笑顔がカズに向けられたものだとは、知る由もなかった。
体育倉庫に閉じ込められてから、早3時間。さすがのカズもずっとジャンプし続けていたため、相当疲れが出てきてしまい、少し休憩することになった。
マットの上に腰を下ろし、息を整えていると妙に静かなことに気が付く。不思議に思ったカズは隣にいるに声をかけた。
「?」
それでもに反応はない。もしかして、気分が悪くなってしまったんだろうかとカズに焦りが浮かんだ。
「おい、!大丈夫や!?」
体操座りをしてうずくまるの身体をカズの方へ向けると、そこには健やかな寝息を立てるの姿があった。
「zzzzzzz・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(怒)
どこまでもノー天気なに呆れるを通り越して怒りがこみ上げてきた。よくこの状況で眠れると感心してしまうほどだ。
「無防備すぎや・・・」
小さくつぶやいたカズの顔は少し赤みを帯びていた。カズを信用しきった顔でぐっすり眠っているの髪を優しく撫でる。
そのとき、カズはの手にある無数の傷を見つけた。おそらくさっき窓に手をかけようとしていたときに出来たものだろう。
普段教室ではのほほんとしていて、何かに必死になるなんてしないやつだと思っていたが、その痛々しい傷を見て、カズは少しだけ見直した。
「ありがとう、・・・・」
優しい声でつぶやいた声は、静かに響いて消える。名前を呼ぶのがこんなにすんなり出来ることだとは思っていなかったが、何故かすっきりした感覚を覚えた。
「ん・・・くぬ、ぎ・・・くん?」
「おぉ、起きたか。お前よくこげんとこで寝られるな」
「あははは・・・。それより、窓開いた?」
「ダメや。全然届かんと」
「そっかぁ」
残念そうに俯くの横顔を見て少しドキッとする。カズは慌てて目を逸らした。
「ねぇ、功刀くん」
「なんね」
「あの、さ。ありがとね。ボール運んでくれて。すっごい助かったよ」
「別に、お礼言われるようなことはしちょらんよ」
そっけないカズの態度に苦笑を浮かべる。そしてその視線を感じつつも、気付かないフリをしているカズ。
静かな空気が流れていたそのとき。カズの頬にやわらかいものがあたった。
「!!??」
「あっはは!さっきのお礼だよ」
驚きのあまり口をパクパクさせているカズを笑いながらはそう言った。
全く不意をつかれたカズの顔は真っ赤になっている。しかし、しばらくしたらその顔も優しい表情に変わっていった。
そして今度は、カズの唇がの唇を奪った。
「く、功刀くん!!?」
「お返しや」
しれっと答えるカズ。の顔はろうそくの炎以上に赤くなっていた。
すると突然、が笑い出す。おかしそうに、楽しそうに。びっくりしたカズはそのままを見つめていた。
「ありがと、カズ!」
突如名前を呼ばれて、またカズの顔が赤くなった。それでもは笑い続ける。
カズはそのとき自覚した。これが愛しいという感情だということを。
そのまま二人は笑いあった。
薄暗い倉庫の中には笑い声がいつまでも響いていた。
-おまけ-
「あ、そういえばケータイ持ってた」
カズ「はっ!」
似たもの同士v
2323HITをとってくださった阿弥若さまに捧げます。カズドリームです。遅くなってしまい申し訳ありません。
駄文ですねぇ、相変わらず。もっと頑張らなくては・・・・。っていうか話がまとまってません;本当にすみません;
結局なにが書きたかったんだ・・・?これからも精進していきます。
花月
