久しぶりの自室デート











相変わらず綺麗な彼の部屋











でも悲劇は












いつも傍らに











足音をしのばせる




















































































秘めごと















































































史上最大のピンチっていうのは、意外とすぐ近くにあるもので。突然、なんの前触れもなくこの身に降りかかるものだ。

私、も今まさにその状態にある。ヤバイ。これはヤバイ。お兄ちゃんの楽しみにしてたアイス勝手に食べて半殺しにあったとき以来のヤバさだ。

目の前に広がる青色の破片。それはまさしく、今さっき私が落としてしまったトロフィーの破片だった。

悪気はなかった。これだけははっきり言える。誰が彼氏の家に来て故意に大事そうなトロフィーを割ったりしますか。

そう、出来心。ほんの出来心だったんですよ、神様。あまりにも綺麗なトロフィーだから、一馬がお茶を入れている間にちょっと触ってみたくて。そしたらうっかり手が滑って・・・・今に至る。



「どうしよう・・・・」



思わずそんな言葉が口から出た。顔面はすでに蒼白。空気は緊迫。あ、ラップできた。ってんなこと言ってる場合じゃないっつーの!

なんとかしなきゃ。いくら温厚でヘタレな一馬だってさすがにこれは怒られる。

そんなとき、私の頭の中では天使と悪魔が激しい言い争いをしていた。



『正直に言えば、一馬だってきっと許してくれますよ』

『そんなわけねーだろ?一馬だって人間だ。こてんぱんに怒られるって』



ちょっと悪魔が優勢だけど、なんか一馬なら許してくれそうな気もするし・・・。ホントどうしよう。



『だから、さっさと証拠隠滅しちまえばいいんだよ!』

『ダメです!正直に言ったほうがいいんです!』



激しい戦いだなぁ・・・なんかチャカ的なものまで使い出してるよ。こうなるとどっちが悪魔でどっちが天使かわからないし。

でもホントどうする?最終的に決めるのは私。悪魔でも天使でもない。

もうちょっと意見を聞いてみますか。



『正直に言ってこそ、真の反省ができるのです』

『バーカ。なに言ってんだよ。、お前嫌われたくないだろ?』



嫌われたくないだろ?嫌われたくないだろ?嫌われたくないだろ?――(エコー)

その瞬間、悪魔は天使を打ち落とした。そして私は悪魔の言うとおり、さっさと証拠隠滅を図る。

嫌われたくない。当たり前じゃん。一馬に嫌われたら一生の終わり。大好きな人に嫌われるほど嫌なことはない。

とにかく、隠さないと。一馬が戻ってくる前に!

そこから私の行動は早かった。とても手際がいい。いつもこんな風に動けるといいんだけどね。

手早く破片をかき集め、バックからタオルを出して丁寧にくるむ。あとはバックにしまうだけ・・・・と、その時。



ー悪い。茶葉が見あたらなくて・・・ってなにしてんだ?」



帰ってきてしまった。なんと悪いタイミング!神様、あなた私が嫌いですか?

あわててタオルを背中に回して隠し、一馬のほうに向き直る。緊張と動揺の所為で上手く笑えなかった。



「お、お、お、お、お帰り、かかかかかかっか、一馬!」

「どもりすぎだろ。どうかしたか?」

「べべべべべべ別に!何にもないよ!」

「?そうか、ならいいんだけど」



私の言葉に終始疑問を浮かべながら、一馬は持ってきたお茶とお茶菓子を丁寧にテーブルへ置いた。

相変わらず几帳面な性格。コップの向きまでしっかり計算されていた。

一馬、あんたいい奥さんになれるよ。

しかし、ここで問題点が一つ。私のバックが一馬の向こう側に行ってしまったのだ。つまり、私がバックを取るには、一馬の前にこのタオルを通過させなくてはならない。

そんなことしたらバレる。確実にバレる。いくら鈍い一馬だからとはいえ、そこまで鈍感ではないだろう。

このままの状態で動けなくなってしまった。



、なにしてんだ?早くこっち来いよ」

「う、うん・・・・」



あー一馬が優しい微笑みで私を呼んでいる!やめて!そんなかわいい笑顔浮かべないで!理性がもたない・・・!

いますぐお持ち帰りしたいところだけど、この状況じゃそうも言ってられないし。

とにかくテーブルのところに行かないと。話しはそれからだ。

できるだけ音を立てないようにゆっくりと、地を這うように移動する。まるでナメクジだ。

一馬も不思議そうに私を見ていた。と、ここでまた事件は起きる。

ベッドの足に手が当たってガシャンという音がしてしまった。



「なんだ?今の音」

「さ、さぁ・・・?」



ヤバイ!どうしよう!バレるって!これバレるよ!

明らかになにか隠してる感じの格好してるし、妙な音はするし。もう絶体絶命。

一馬の目が一瞬鋭くなった。もしかして・・・・。



、お前なんか隠してるだろ」

「かかかかか隠してなんかい、いいいいないよ!」



一馬の顔を見てられなくて、思わず目を逸らす。それでさらに気付かれたのか、一馬もまた私の視線を追った。



「嘘だ、絶対なんか隠してる」

「・・・・・・・・・;;」



もう限界だ。これ以上隠し切れない。

私は諦めてゴメンナサイ、と頭をたれた。そしてゆっくりと、背中に回していたタオルを広げてみせる。



「ゴメン、壊す気はなかったの。ただ手がすべっちゃって・・・」

「こ、これ・・・っ!」



やっぱり大事なトロフィーだったんだ。大会で優勝したとかじゃなくて、MVPとかそんな感じの大事な・・・大事な・・・。



「これ隠すために、一生懸命になってたのか!?」

「う、うん・・・・」



一馬の肩が小刻みに揺れる。怒りで体が震えてるのかな・・・ってあれ?なんか笑ってません?一馬さん。



「一馬?」

「アハハハハハ!!!これトロフィーじゃねぇよ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ?」



どういう意味?トロフィーじゃない?ってことはなに?

一馬は一通り笑ったあと、目じりに浮かんだ涙を拭って私を見つめる。

その顔はまだ笑いにゆがんでいた。それでもかっこいい一馬にそっと頬を赤らめる。



「それ俺が小学校の時に作った夏休みの課題。だから別に大事な優勝トロフィーとかじゃないんだ」

「夏休みの・・・・課題・・・・・」



ってことはなんですか?私は一馬がずっと前につくった手作りトロフィーを守るために一生懸命になってたわけですか?

私は完全に空回りしていたと。そう言いたいんですね?

その言葉を聞いた瞬間、私の体が怒りに震えた。そして叫んだ。のどがつぶれるほどに。



「私の・・・私の・・・」

?」














「私の苦労を返せーー!!!!!!!!!!!!!!」














それからしばらく、一馬家からは女の叫び声が止まなかったそうな。
























來渦ちゃん!誕生日おめでとう!!!

せっかくの誕生日なのにこんな駄文をプレゼントしてごめんね;

あーもっと良い文章書きたいのに・・・(遠い目)

受け取ってくれたら嬉しいですv本当におめでとう♪

花月