一年に一度だけ












たったそれだけのために











織姫と彦星は











どれだけ胸を躍らせ











幾度となく泣いているのだろうか





























































































星に願いを





































































































『ごめん、!今日急に選抜の練習が入っちゃって――』



その連絡を一馬から受けたのは、私が家をでる寸前のこと。

もう、メイクも着替えもバッチリ済ませて、ルンルン気分でデートを満喫しようと思ってた矢先のドタキャン。これほど辛いものはなかった。

選抜の練習も大事なのはわかってる。でも、それならもっと早く連絡できたでしょ?

私もまだまだ子供だから、そういうことを受け入れられるほど強くない。

だから言ってしまった。



「一馬なんて大っ嫌い!!!」



すぐに電話を切って、勢いよくソファに投げつける。私もそのままベッドに倒れこんだ。

せっかく楽しみにしてたのに。映画も、ショッピングも、カラオケも、全部予定立ててたのに。

それよりも、久しぶりに一馬に会えることが、何よりも楽しみだった。

いつも選抜の練習とか、ユースの練習とかでなかなか遊べる時間が限られている一馬だから、会えるときにはしっかり会いたい。

わがままかもしれないけど、我慢できるほどまだ大人じゃないの。

しばらく泣いたあと、自分の言った言葉の重さを感じた。

大っ嫌いなんて、真っ赤な嘘。本当は誰よりも愛している。

それなのに・・・あーもー!!なんで私はこんなにガキなの!?

もう一度私から電話をかけようかと思ったけど、時計をみたらもう練習が始まってる時間。しょうがないから、通話ボタンを押すのを諦めた。

思ったことをすぐ口にしてしまうのは、私の悪い癖。一馬に・・・嫌われちゃったかな。

一馬は繊細だから、きっと練習にも支障が出てる。モチベーションが下がっちゃってると思うから。

東京選抜にも、もちろん一馬にも・・・迷惑かけちゃったなぁ。



「こんな自分が一番嫌い」



独り言を呟いて、大きなため息をついた。

なんか、何もかも上手くいかない。もっと上手に生きられたらなと思う。

あとで一馬に謝ろう。うん、それがいい。

こんな私でも、まだ一馬は愛してくれるかなぁ・・。

ちょっと不安になってきた。別に、一馬を信じてないわけじゃないけど・・・どうなんだろう。

特にやることもないので、一日中部屋でボーッとしていることに決めた。なにも考えないことが、今の私にとっては一番の休息になるから。

だんだん日も暮れてきて、夕方になり、そして夜になる。

今日は快晴だったから、星がとっても綺麗。窓を開けて、空を仰げば、満点の星空が夜空を彩っていた。



「うわぁ・・・綺麗」



思わず口から感嘆の声が出る。それほど、今日の空は美しかった。

都会の真ん中でこんなに綺麗な星空が見られるなんて。都会もまだまだ捨てたモンじゃないなぁ。

ふと、部屋の中に視線を戻せば、カレンダーが目に入った。今日は7月7日。つまり、七夕。

織姫と彦星が一年に一度だけ会える日。私は、この話が大好きだった。

一年に一度しか会えない恋人。どれだけこの日を待ち望むのか。どれだけ会えたときに嬉しさが大きいのか。

そんなの、毎日会ってるカップル達にはわからない。

私と一馬もそうかもしれないね。一年に一度ってわけじゃないけど、それでも頻繁に会えないのは確かだから。

その分会えたときの喜びも大きい。だから、幸せをたくさん感じられる。



「そうだ、ちょっと外に出てみよう」



幸い出かける時の服装そのままだったから、すぐに外に出た。

夜風が気持ちいい。夏の夜は、好き。

涼しい風がふいてきて、私の髪を優しく揺らした。今日は七夕。願いを一つ、叶えてもらえる日。

じゃあ、一つだけ。お願いしてみようかな。



「一馬とずっと一緒にいられますように・・・・」



「そんなの、願わなくても叶うだろ」



聴きなれた愛しい声が聞こえて、私は勢いよく後ろを振り返る。

そこには少し息を切らせて立っている一馬の姿があった。



「か、一馬・・・!?」



「ゴメンな、。遅くなって」



「練習終わったの?疲れてるのに、そのまま来たの?」



「当たり前だろ?のためなら、すぐに駆けつけるって」





一馬はそのまま私を優しく抱きしめた。

グラウンドと汗のにおいがして、サッカー選手なんだな、と改めて実感する。

嬉しくて、嬉しくて、しょうがなかった。



・・・の願いは俺がかなえてやるから」

「うん・・・一馬。さっきはごめんね。大好きだよ」

「俺も、大好きだ」



零れ落ちそうな星空の下、私たちは優しいキスをした。

ねぇ、私の願い。叶えてくれますか?

この愛しい人と・・・ずっとずっといつまでも。

一緒にいられますように。





























七夕記念。

花月