誰になにを言われようと構わない
ただあなたに見て欲しいだけ
ただあなたの
そのすばらしい
――リアクションがみたいだけ
腐女子彼女
夏も近づくある春の日。
私は久しぶりに休みの取れた彼氏の一馬と室内デートを楽しんでいた。
いや、楽しんでいたというのは誤りがある。実際楽しんでいたのは私だけだったのかもしれない。
その証拠に一馬はサッカー雑誌を見ながら時々私の方をちら見してはため息をついていた。
それを知りつつ、しかしあっさり無視をして、私はある作業に取り掛かっている。
部屋に着てから数えるほどしか会話をしていない。
そう、私がやっている作業とは・・・。
「・・・お前そろそろその変な趣味止めろよ;」
「え?なんか言った?」
「・・・はぁ;」
一馬が呆れるのも無理はない。私が夢中になっているのは、漫画書き。
それがただの漫画だったら、一馬も無理に止めさせようとはしないだろう。
しかし、書いている内容に問題があった。
「ねぇ、一馬」
(ビクっ)「な、なんだよ」
「ちょっと・・・」
「ちょっと?」
「服脱いでくれない?」
「またか!」
私が書いているのはゾクに言う801(やおい)漫画。
つまりホモだ。
それもアニメのキャラクターじゃ飽き足らず、彼氏である一馬やその友達である英士、結人まで登場させている始末。
だって楽しいんだもん。
普通に書いてちゃつまらないでしょ?
現実にいる人を題材にしたほうがリアリティーがでるし、なにより・・・書きやすい。
まぁ一番の理由は、一馬がおもしろいリアクションを見せるから。なんだけどね。
それは一馬には内緒。
言うと怒るからさ、全然怖くないけど。
「早く脱いでって」
「いや、だからさ・・なんでそんな漫画ばっかり描くんだよ!」
「なんでって、書きやすいからに決まってるでしょ?」
「ち、ち、ちなみに・・・今どんなシーンだ?」(ビクビク)
「見る?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」(コクっ)
顔面真っ青になりながら首を縦に振った一馬に、私はネーム段階の漫画を見せた。
そこに写っていたのは・・・・。
「なんでオレと結人がか、か、か・・・絡み合ってんだよ!!」
「一馬顔真っ赤」
「誰のせいだ!」
いいじゃーん。
別にホントなわけじゃないんだしさ。
一馬は純情すぎるんだよ。
この前結人と英士に見せたけど笑ってたよ?まったく。一馬は・・・。
「、頼むから普通の漫画かいてくれ!な?」
「じゃあ普通の漫画描いたら一馬一番に読んでくれる?」
「当たり前だろ!だからお願い!」
「・・・・あと一つ、お願い」
「なんだ?」
「・・・やっぱ内緒」
「なんだよーそれ」
「書いたら言ってあげる」
「??」
言わないよ。
一馬が好きだからこんな漫画描いてるなんて。
だって、一馬が好きなんだもん。
ホントは一秒でも離れたくないんだよ?
だから漫画描いて思い出してるんだよ?一馬との思い出。
気付いてる?このマンガのストーリー全部一馬と実際してた内容なんだよ?
でも、一馬がまともな漫画書けっていうなら、書きましょう。
そのかわり・・・。
それ書いたあかつきには、倍のやおい本かいてやる。
覚悟しといて。
「、なんか嬉しそうじゃねぇ?」
「そう?」
「なんかよからぬこと考えてんじゃないだろうな?」
「さぁ?♪」
一馬が恐怖を味わうのは、これから少し先。
夏がもうすぐやってくる。
この夏。コミケに一馬たちのやおい本が出版されたのは、私しか知らない事実だった。
腐女子って今はやってるらしいです
花月
