幼馴染
昔は大して気にしてなかったのに
いつからだろう
こんなにも目に入ってしまうのは
こんなにも好きになってしまったのは
以心伝心
結人とは生まれたときからずっと一緒で、兄弟みたいに育ってきた。
高校はさすがに別々になるかなぁとか思ってたら、話し合ってもいないのに同じところ。これはもう腐れ縁としかいいようがない。
そんなこんなで高校入学から早3ヶ月。なぜかクラスまで一緒の私たちは、自然と「高校生」に馴染んでいった。
今日はテスト明けで、学校は午前中で終わり。が!席まで隣同士の私と結人は、日直として残されてしまった。
「クラス全員のノート点検しとけだぁ!?冗談じゃねぇぞ!」
「それは私に言うんじゃなくて、あの腐れ先生に言ってきて」
大量のノートを目の前に私たちはふぅっとため息をついた。
いくらなんでもこの量はないでしょ。それでなくても帰ってからと遊ぶ約束してたのに・・・。
さっさと終わらせたいけど、相手が結人じゃなぁ。上手く終わればいいけど。
「!こんなクソノートなんざ、30分で終わらせるからな!」
「はいはい、その意気込みはわかったからとりあえず早くやっちゃお」
机をくっつけてノートを一つ一つ見ていく。ってかこれって先生の仕事じゃないの?生徒にやらせていいわけ?
ノートを範囲まで終わらせてたらハンコを押す単純作業。だけどこの量はさすがにきつい。どれくらいかかるのかな・・・。
いつもはにぎやかなクラスも今は結人と二人きりで、静か過ぎるほど静か。ノートのページをめくる音だけが響いた。
そういえば高校に入ってから結人とあんまり二人っきりになったことなかったかも。自然と口が開いた。
「めんどくさいね」
「職務怠慢だよな、あの先生。生徒にこんなことさせて、教育委員会に訴えてやる」
「それよか文部科学省のほうがいいんじゃない?」
「お、それもそうだな・・・ってムリだろ」
「ムリだね」
くだらない会話を終えて、また紙をめくる音だけが無機質に響いた。
そういえば、と結人が切り出す。ちょっと裏返った声に反応して、私はノートから結人へと視線を移した。
「お前、B組の奴とできてるってホントか?」
意外な質問だった。まさか結人と恋愛話する日が来ようとは。ってかそんな噂流れてたの?
「できてないけど・・なにそのデマ」
「いや、今日話してたんだよ。とB組の奴が並んで歩いてるとこ見たって」
「見間違いでしょ?第一私B組と関わりないし」
「だよな。あーよかっ・・・た・・・・」
まずい、といった風に結人は口を勢いよく押さえた。その拍子にノートが一冊落ちる。
たぶんよかったという言葉がまずかったのだと思う。それに加え、口まで押さえちゃもうバレバレというか、この場合私はどういう反応すればいい?
@ 聞こえなかったフリをして流す
A 「よかったってどういう意味?」と聞き返してみる
B いきなりどうしたーと笑ってみる
C 別の話題に変える
私が選んだのはCだった。ちょっとお約束かと思ったけど、結人にも同じ質問をする。
「結人こそ、好きな人とかいないわけ?」
「俺?」
あからさまに戸惑って、結人は落ちたノートを拾い上げ、咳払いをした。聞かれたくない話題をフられたときや緊張したときに出る癖。昔からそう。
「俺はその・・・別にいないっつうか、いるっつうか」
「微妙な答えね。どっちよ?」
「が教えてくれたら言う」
「女かお前は。じゃあ同時に言おう。それがベストじゃない?」
「え、でもそれで別々の名前だったら気まずくないか?」
私はドン、とはんこを強めに押してから結人をキっと睨んだ。
「あのねぇ、気まずくなるような話題なんてフらないわよ。大丈夫だから言ったんでしょ?」
「へ?どういう意味だ?」
「とにかく、お互い名前言えばいいのよ。それで万事解決、ハッピーエンド」
だいたい、「よかった」とか言ってる時点でもうばれてるっての。私だってずっと前からこの気持ちは・・・。
「じゃあ、同時に言うぞ?ズルすんなよ?」
「わかってるわよ」
「「せーの」」
「」「結人」
お互い見つめあったままで、しばらく固まる。ほら、やっぱり思ったとおりだったでしょ?
こうなることなんて、きっと生まれたときから決まってたのよ。
「ち、ちなみに・・いつから?」
「中学生のときから」
「あ、俺も一緒」
「アハハハ!!やっぱり幼馴染なだけあるわね!」
「そうだな!でもこれからは・・」
「幼馴染じゃない」
以心伝心とはこのことを言うのかもしれない。それくらい、私と結人は繋がりあってた。
結人とは生まれたときからずっと一緒だった。
これからは死ぬまで一緒だったって言えるように・・・。