あきらめなければ











努力を惜しまなければ











実力を出し切れば











どんな困難だって











乗り越えられる











愛しい人のために













































































受験戦争













































































受験なんてまだまだ先のこと。3年になってから考えればいい。高校なんて星の数ほどあるんだし、それのどれか一つには入れるだろう。

そんなことを考えて過ごしてきた中学校3年間。一応私にも、いきたい高校ができた。でもそこは、かなりなハイレベル校。

甘く考えてました。こんなことなら1年のときからもっと勉強しとけばよかった。くっそーあのやろう、何であんな頭のいい学校に通ってんだよ!

本屋さんで参考書を買いながら、中学校で別れてしまったあいつのことを思う。たしかサッカー推薦で受かったような気がする。

ずっと一途に思い続けてきた人。その人と同じ学校に行きたいなんて言ったら、きっとあいつは笑うだろうから。



(入学式の日にいきなり名前呼んでびっくりさせてやる!)



そんな密かな計画を頭に置きつつ、階段を下りる。

でもね。人間目の前に大金が落ちていたら拾い上げるように、最高の先生がいたらすがりつきたくなるものなのよ。

そう、私の目の前に現れた大金。三上亮。



「あき、ら・・・さん?」

「あ?お前、か?」



感動の再会も、いきなり出会ってビックリ作戦も全てふっとんだ。なんとしてでも亮と同じ学校に行きたいのよ。

だからお願い。勉強を教えてください。



「お願いします」

「何がだよ」



こうして私たち二人は、最低限の勉強道具をもって近くのファミレスへと赴いた。久しぶりに会った亮は小学校のときよりも背が伸びてて、大人っぽい。

数段かっこよくなったなぁ。こりゃモテるに違いない。ぱっと見中3には見えないもん。どうみてもホス・・・いや失礼、成人男性。



「で、お前どこの高校行きたいわけ?」

「ここ・・・・」



私はさっき買った、学校別の参考書を取り出して差し出した。その学校名をみて、亮は驚きの表情を見せる。しばらくの沈黙が流れた。



「武蔵森だぁ!?」

「い、いけませんか?」

「いや、ダメじゃねぇけど・・・俺の通ってるとこじゃねぇか」



だから行きたいのよ、なんて口が裂けても言えなくて私はただ黙って頷いた。とにかく中学校で会えなかったぶん、高校でたくさん思い出作りたいのよ!

サッカー部のマネージャーもやるつもりだし、なにがなんでも一緒のクラスになりたい。それだけを思って私はこれからやっていく。



「どうしてもここに行きたいの!亮お願い、力を貸して!」

「ったく、しゃーねぇな。ほら、早くノート開け」

「亮・・・!!」

「幼馴染の頼み断るほど嫌な性格してねぇよ」



あぁ神様!久しぶりに見たよ、亮のデビスマ。やっぱりこう見るとホス・・・失礼、立派な大人に見える。

私じゃつりあわないかなぁなんて、思ってみたり。それはちょっと寂しかったり。



「まずは数学な。この問題から・・・」



亮の声は小学校のときよりも低くなってた。声変わりってやつ。なんだか遠くに感じた。でも今はすごく近くに感じる。この複雑な気持ちは、やっぱり恋ってやつなのかしら。

亮に教えてもらいながら、私はめくるめく亮とのラブロマンスを想像してにやけていた。その度にちゃんと聞けって怒られる。またその掛け合いが嬉しくてにやける。悪循環もいいところだった。



「お前ホントに受かる気あんのかよ」

「もち、あたぼーよ!ありまくりよ!」

「はぁ;じゃあもっと集中しろ。こんなんじゃ受かるもんも受かんねぇぞ?」

「はい・・・;」



よし、頑張ろう。絶対武蔵森に入って亮とラブラブになるんだ!

告白とかそういう過程を全てすっ飛ばして私はそればっかり考えていた。

こうして時は流れ、いよいよ試験当日。会場はもちろん武蔵森学園。もしかしたら亮の教室かもって期待してたけど、違うみたい。



「受験生のみなさんはこちらへどうぞ」



女の先生に案内される途中、グラウンドが見える廊下を通った。そこにはちゃんと亮の姿もある。こんな日も頑張ってるんだ。このままずっと亮を見ていたい。

ふと、亮と目があった。しばらくそのまま見つめあう。すると亮は口パクで何かを言っていた。



「がんばれ!」



嬉しすぎて言葉が出なかった。頑張れ。たったそれだけの言葉なのに、精一杯頑張れそうな気がする。

わかったよ亮。私、頑張る。絶対にこの高校受かってみせるから。

教室へ向かい、チャイムの音と共に私は受験のスタートを切った。





数日後。私は武蔵森学園から届いた一通の手紙を手に、亮の住まう寮へと走っていた。

その手紙には『合格』の二文字。やったよ亮!ついに受かったよ!



「亮ー!!!」



どこにいるかもわからない寮に向かって大声で叫ぶと、2階の窓が開いて、見慣れた顔が出てきた。



「おー!どうだった?」



私はとびっきりの笑顔と共に合格通知を見せて叫んだ。



「受かったよー!!」



それを見て亮もまたにっこりと笑う。昔と同じ、優しい笑顔。この笑顔に私は惚れた。



「おめでと、

「ありがと、亮!!」








それから私たちが楽しい高校生活を送るのは









また別のお話・・・。