手もつないだ











キスもした











だけどどうしてもできないことがひとつだけ











それは・・・











名前を呼ぶこと























































































君の名前






















































































マネージャーとしてサッカー部に入ってからもうすぐ1年が過ぎようとしている今日この頃。

私には、ひとつ悩みがあった。それは・・・・。

、どげんしたと?早う飯食わんね」

「あ、うん」

彼氏の功刀一。部活の守護神であり、九州選抜でもGKを勤めているすごい人。そして私の先輩。そう、問題なのは、この人が私の『先輩』ということだった。

九州選抜(私もマネージャーを兼任してる)では上下関係が厳しい・・・というか、バリバリの体育会系。後輩が先輩に逆らうなどもってのほか。呼び捨てなんてとんでもない。

このビシっとした縦社会の九州選抜だからこそ、今まで数々の好成績を残せてきたわけなんだけど、それは時にやっかいな関係でもあった。

女の子なら誰でも恋人を名前で呼びたいと思ってるはず。私だけかもしれないけど、とにかく私は彼氏ができたら名前で呼び合いたいと思ってる。

だけど、私の彼氏は先輩。九州選抜に入ったときから、サッカー部に入ったときから、ずっとカズさんは先輩だった。

そりゃ、カズさんのほうが早く生まれたんだからしょうがないけど、それでも彼氏を『さん付け』で呼ぶなんてちょっと変かな、なんて思う。

要するに、癖になってしまった。カズさんをカズさんと呼ぶことが。

?」

「え、あ、はい?」

「どげんした?最近元気なかな」

「そ、そ、そんなこと、なか、なかですよ!!?」

(どもりすぎや。相変わらずわかりやすか奴やなぁ)

私たちが付き合ってもうすぐ1年になる。サッカー部に入ったときからずっとカズさんのプレーにあこがれて、そのサッカーに対する情熱に惹かれた。

告白したら意外にもOKをもらえて、こうして付き合ってる。

なんとか敬語は直したけど、あせったりするとすぐ敬語に戻ってしまう。それにカズさんをカズと呼ぶことはまだできない。

きっとカズさんに聞けば呼んでもいい、と言ってくれるだろうけど、一度ついた癖はなかなか取れるもんじゃない。

でもやっぱり彼氏なんだし、名前で呼び合いたい・・・・あぁ矛盾してるなぁ。

お昼ごはんはいつも二人っきりで食べるのが習慣になってる。だけど、今日はいつも以上に暗かった。

名前で呼びたい。カズ、って叫んでもいい。

「はぁ・・・・」

「お前、やっぱり悩んどるやろ」

「大丈夫ですって。悩んでなんか・・・」

「悩んどらん奴はため息なんてつかんとよ」

「う゛っ・・・」

私が言葉に詰まると、今度はカズさんがため息をついた。どこからか吹いてきた風がカズさんの、グラウンドの香りを運ばせる。

やっぱりカズさんはカズさんだ。しっかり私のことを見てくれている。

悩んでいるときは悩みを聞いてくれて、疲れてるときは隣にいてくれて、わからないことは、ちゃんと教えてくれて、先輩らしいことこの上ない。

カズさんは私にとって愛しい彼氏。だけどそれと同時に先輩でもある。

ここは敬語だけであきらめて、カズさんはカズさんと呼ぶしかないのかも。

さよなら、私の夢・・・・・(遠い目)



「はい・・・」

「お前は俺のなんや?」

「カズさんの・・・・か、彼女・・です///」

「そや。お前は俺の彼女。で、俺はお前の彼氏たい」

「ザッツライト」

「それやったら、お前の好きなように付き合ってよか」

「え・・・?」

もしかして、あくまでこれは仮定ですけど、まさか、ひょっとして・・・気付いてらっしゃった?

私がカズさんをカズと呼びたいのを、知ってたぁ!?

もし知ってたとしたら、私は一人で勝手に悩んでたんですか?さらっと呼んでもよかったの?

「カズさん、気づいてたの?」

「当たり前や。はわかりやすか奴やけんな」

「言ってくれたらよかったのに・・・」

「気付かんが悪か」

「た、たしかに;」

じゃあ呼んでもいいのかな。カズって、呼んでも大丈夫?



はい、と振り返った次の瞬間に、私はもうカズさんの腕の中にいた。

持っていたお弁当が落ちそうになるのを必死にこらえてただその状況に言葉を失う。なぜに抱きしめられているんですか。

「カ、カ、カ、カズさん!?!!!?//」

「このほうが呼びやすかやろ?」

よ、呼びやすいってそんな!呼びにく・・・くはないですけど、恥ずかしいよ!

ここは誰もいないけど、嬉しいけど、やっぱり恥ずかしい!だけどあったかい。

それは身体じゃなくて、心が。すごく落ち着いて、安心できる。

私はふっと肩の力を抜いて、カズさんの背中に手を回した。

「カ、カ・・・」

「カ?」

「カ、ズ・・・?」

「なして疑問系なんや」

「カズ!」

「よし、上出来ばい」

カズはそう言って頭を優しく撫でてくれた。やっと呼べた。本当の名前。

さん付けじゃなくて、ちゃんと名前で呼べたことがこんなにも嬉しいなんて思ってなかった。出会ってから1年。これでもっともっとカズとの距離が縮まった気がする。

「俺に気なんか使う必要なかよ?」

「わかったよ、カズv」

「なんや、すっきりしたみたいやな」

「だってカズはカズだもん♪」

そうだよ、カズはカズ。私はずっと大好き。

この気持ちはずっと変わらない













私はカズが好き。













相互記念、華月さまにささげます。かなりの駄文ですね;本当にすみません;;

花月