もっと頑張らないと











もっと努力しないと











誰も私を見てくれない











私がいつも一人なのは











私のことを知らない人間が多いから











そんな人生












今までも











これからも








































































孤独の影











































































いつからだろう。

一人の孤独に気付いてしまったのは。

隣に誰もいなかった。

両親も友だちも、誰一人として私を見てはくれなかった。

痛いとすら言えずに、時を無駄にした。

それでも私は誰かに認めて欲しかった。



「一番のりだぁ・・」



誰もいない教室を見渡して、ポツリと呟く。

どうやら時間を間違えて来てしまったようだ。

時計を見ると、クラスメイトたちが来る時間はまだまだ先。

これからしばらくどうやって時間をつぶそうか。

とりあえず自分の席に着いて、教科書やノートを整理する。

別にクラスメイトが居ようが居まいが私には関係ない。

だって私は、一人なんだから。

友だちなんていない。いるとしたら、みんな私を妬む人たちばかり。

そんな人、友だちでもなんでもない。

私から見ればみんなゴミ屑。

それ以上でもそれ以下でもなかった。

鞄がすっきりしたところで、もう一度時計を見やる。

まだ5分も経っていなかった。

どうせならこのまま一人で居たほうがずっと楽。

一人でなら、私の望んだ世界が広がる。

誰もいない、私だけの世界。

誰にも侵されない楽園。

私を認めてくれる人なんていないことわかってるから。

いらない。他人なんて、いらない。



?」



ぼんやり窓を見ながら、朝練している生徒達を眺めていると、私の名前を呼ぶ声がした。

びっくりして声のしたほうを向くと、見慣れたクラスメイトの姿。

真田一馬。あまりしゃべったことのないクラスメイト。

しゃべったことがないのは、クラス全員そうなんだけれど、この人は特に不思議な人だった。

クラスの女子から人気があるのに、話そうとしない。

すぐ帰ってしまったり、休みがちだったり。

そのため、クラスで友だちと呼べる存在は多くない。

ずっと昔、彼の悪口を言っていた男子がいた。

今はどうなのかしらないけど、彼に妬みを持った存在がいることは確かだった。



「早いな。どうしたんだ?」

「別に・・・」



最低限の会話しかしていない。まぁ私は誰でもそうなんだけど。

真田はすぐ自分の席に着いて鞄の中からノートと教科書、ペンケースを出した。

何をする気なんだろう。

真田の席は私のすぐ前。だから、彼が何をしているのかがすぐわかる。



「なに、してるの?」



自分で言って自分が一番驚いた言葉だった。

他人に興味を持つなんて。私らしくない。

でも、なんとなく気になった。

ただ、それだけのこと。



「数学の宿題。今日俺当たるの忘れてて、やってなかったから」



ぎこちない笑みを浮かべて、真田は私に振り返った。

私はどうしていいのかわからず、頷いただけ。

それでも真田は満足したのか、数学の問題に取り掛かった。

でもしばらくしたら、ペンの動きが鈍る。どうやら、難しい問題にあたってしまったようだ。

何度も数式を書いたり消したりの繰り返し。

そして完全にペンが止まってしまった。



「なぁ、



「なに?」



「この問題、教えてくれねぇ?」



クラスメイトから問題を教えてと言われるのは初めてだった。

別に断る理由もなかったから、そのまま真田の隣に座り、一緒にノートを覗き込む。

男子にしては達筆な、いや、男子じゃなくてもずいぶん綺麗な字だった。

真田ってこういう字書くんだ。なんか意外。



「どの問題?」

「これなんだけど・・・」

「これはここの数式を使って――」



順を追って説明すると、真田はすぐ理解して次へ次へと問題を解いていく。

頭は悪くないみたい。

なんだか不思議な光景だと自分で思った。

しゃべったことのないクラスメイトに勉強を教えている。

今までの自分じゃ考えられないことだった。



「よっしゃ!全部終わり!」

「お疲れ様」



私が自分の席へ戻ろうとすると、真田は私の手を掴み、それを食い止めた。



「みんなが来るまでまだ時間あるし、ちょっとしゃべんねぇ?」



何を言い出すかと思えば。

なんて積極的なんだ。真田ってこんな積極的な人だったっけ?

特にやることもないし、確かに暇だ。

だから、真田の話に少し付き合ってあげることにした。



「いいよ」



少し間をおいて言った私の手を離して、真田はまた綺麗に笑った。

真田の隣の席に座ると、真田は急に真剣な顔になった。



「前から聞きたいと思ってたんだけどさ」

「なに?」

って・・・その・・友だちとかいんのか?」



なんて失礼な質問。

まぁ私がクラスメイトとしゃべったとこを見たことがないからそう言ったんだろうけど。

真田は自分で聞いておきながら少し焦った様子だった。

でも私は表情一つ変えずに、その質問に答えた。



「いないよ」

「作ろうとは思わないのか?」

「なんで作らなきゃいけないの?」

「友だちいれば、学校も楽しくなると思うぜ?」

「・・・いらないもの」

「え?」



私を蔑む人ばかり。

そんな人たちの顔色を伺って生きるなんてゴメンだわ。

誰も私を理解してくれない。

誰も私を知ろうとしない。

そんな人たちいらない。私には必要のない存在だから。

理由はいつだって簡単。

この理屈さえ、真田は理解してくれないんだろうけど。



「それって、寂しくないか?」

「さみ、しい・・・?」

「人を理解しようとしないと、誰も自分のこと理解してくれないと思うけどな」



他人を理解する?

そんなの出来るわけがない。

だって、興味がないんだもの。

それをどうやって理解しろっていうの?



って、いつも一人でいるけど、本当は寂しいんじゃないか?」

「寂しくなんて、ないよ」

「でも、他人に認められたいと思ってるだろ」



認められたい・・。

確かにそうかもしれない。

私はずっと一人だった。

親や兄弟さえ私を理解しようとはしなかった。

理解者が、私にはいなかった。



「そうかもしれないね・・・誰も私を認めてなんてくれなかったもの」

「でも今日からは違うな」

「どういうこと?」

「俺がいるだろ?」



真田が、いる?

意味がよく理解できなかった。

私を理解してくれるのが、真田だっていうの?



「俺はの価値、わかってるつもりだぜ」

「私の、価値?」

「勉強教えてもらってすげぇ助かったし、としゃべってるとなんか落ち着くしな」



私の価値なんて、考えもしなかった。

認めてもらえるなんて、思いもしなかった。

でも、それって・・・。

これほどまでに嬉しいものなんだね。



「そっか」

「ん?」

「私の理解者、すぐそばにいたんだね」



久しぶりに心から笑えた気がする。

ありがとう真田。

私を認めてくれて。

本当の私を知ってくれて。








心から、ありがとう。

















銀魂の19巻見てて書きたくなった作品

花月