初めて貴方に会ったのも











初めて恋を知ったのも











初めて素晴らしい景色を見たのも











ここが最初











貴方と見る最後の景色は











とても素晴らしい宝物






























































































この場所で





























































































卒業式も無事に終わって、最後のHRも終わって、一通り後輩へのあいさつも終わった。

さぁあとは帰るだけってときになって、私は急に足を止める。夕日に照らされている校舎を見上げながらふと、懐かしさがこみ上げた。

そして、もう一度校舎の中へと入っていく。3年間使った階段をもう一度だけ上って、ひたすら上を目指した。

さび付いたドアを勢い良く開けると、すぐに見慣れた風景が飛び込んできた。



「うわぁ・・・・」



もう何回も見慣れているはずなのに、今日の屋上はいつもとは違って見えた。

毎日のようにここで授業をサボっていた。仲間と一緒にいろんなことを話して。

将来のこと、友達のこと、先生のこと、そして・・・サッカーのこと。

ここに翼がいてくれたら、もう何も言うことはない。最後に見たかった風景が見られたのに。



「さすがにいないよねぇ・・・」

「誰のこと探してんのさ」



え・・?

後ろから聞こえた声に私は一瞬身をこわばらせて振り返る。

そこには貯水タンクの上に乗っている翼の姿があった。

いつもの笑顔で、いつものところに座っている。これが私の見たかった風景。

最後にここから見る景色は、翼と一緒にみたかった。だって、翼と初めて出会ったのもこの屋上なんだから。



「卒業式では涙一つ見せなかったがこんなところで感傷に浸ってるとはね。驚いたよ」

「翼こそ、最後の景色私と見たかったんじゃないの?」

「否定はしないであげるよ」



素直じゃないんだから。初めて会った時と少しも変わらない。身長はちょっと伸びたみたいだけど。

私もドアの隣にあるはしごを登って、翼の隣に座った。学校で一番高い場所。そこは私たちがいつも占領していた。いわば特等席。

私たちが卒業したら、今度は誰がこの場所を特等席にするんだろう。

そんなことを考えながら私はまた夕焼けに目を細めた。



「ねぇ翼。ちょっと過去を振り返ってみてもいい?」

「はぁ?何を急に・・・」

「いいから。今日だけ、ね?」



私らしくないなんてことわかってる。でも今日くらいは、振り返りたいの。

ここで過ごした一日一日を、大切に心の中へしまっておきたいから。

翼も私の心情をわかってくれたみたいで、しょうがないな、と承諾してくれた。なんだかんだ言って優しいところはちゃんと優しい。



「はじめて会ったときのこと、覚えてる?」

「忘れるわけないだろ?初対面で俺にあんな楯突いたのぐらいだよ」

「そうそう。どっちがこの貯水タンクを支配するかでもめたもめた。結局会うたびに口げんかしてたよね。その時は翼が私に告白してくるなんて思ってもみなかった」

「自分でも未だにわかんないよ。のどこに惚れたんだか」

「それ酷くない?彼女に向かって」

「ホントのことなんだからしょうがないだろ?」

「う゛っ・・・;」

「ま、今はちゃんとわかってるけどな」



そう言って翼はまたふっと笑みをこぼした。

その横顔が夕日に照らされて、余計綺麗に見える。いつも綺麗だけど、それはまるで完璧な芸術品のような気品さがあった。

こんなにすごい人の彼女なんだって、改めて感じることができた。



「ねぇ、翼・・・」

「なに?」

「学校違っても、ずっと私のこと好きでいてね?」

「当たり前だろ?俺が以外のやつ好きになるわけないじゃん」

「ありがと・・・」

「それに、まったく会えないわけじゃない」

「そうだね」



明るく笑った私の瞳には、うっすらと涙が流れていた。

その涙を拭って、翼は優しいキスをする。

またこの場所に上って、二人並んでいろんなこと話そうね。

離れていてもここで過ごした3年間は変わらない。

またいつか、この場所で・・・。