いかないで いかないで
私は貴方を愛しているの
心の底から 愛しているの
だからお願い
いかないで―――
雲の行方
もっと愛してほしかっただけ。
もっと傍にいてほしかっただけ。
それなのに、どうして貴方は私の傍から離れていってしまうの?
あんなにたくさん、愛し合ったのに。あんなにたくさん、愛の言葉をささやいてくれたのに。
あの言葉は全部嘘だったの?だから私から離れていったの?
うそつき。でも、まだ嘘じゃないって心のどこかで気付いてる。
どうしたら振り向いてくれるか一生懸命考えた。
昔はこんなことしなくても、あなたは私だけを見ていてくれたけど。
今はあなたを繋げておかないと、他のところに行ってしまうでしょう?
だから私は考えた。一生懸命、一生懸命、考えた。
そして出た、答え。
それは――
気付けば私は病院のベッドの上にいた。
体中にいろんな管をつけられて、無機質な機械音が私の『生』を示す。
なんだ、また死ねなかったのか。
くらくらする頭。ふらふらする体。
こんなボロボロの私でも、あの人を思う気持ちは変わらない。
ねぇ、また愛してくれる?優しく包んでくれる?
医者は小さな声で「OD」の名をくちにした。
家族からもらったタオルやら、なんやらの中にはケータイが入っている。
すぐあの人にメールをうった。
けど、帰ってきた言葉は期待はずれで。
私は今すぐに会いたいの!今すぐ私を抱きしめて欲しいの!
あの人はそんな私の心もしらないで。ただ私が入院した事実しかわかっていない。
大丈夫?なんて聞かないで。大丈夫なわけないじゃない。
支えて欲しい。いつもみたいに、私を支えて。
それすらできないのなら、もう私を苦しめないで。
結局あの人が見舞いに来ることはなく、私は退院した。
生憎の曇り空。雨も降っている。
まるで私の心をそのまま映したみたいだ。
そんな中、ふと。灰色の雲を見つけた。
ぽっかりうかんだその雲は、いびつな存在。
あの雲はどこへ流れていくのだろう。そして、どこへたどりつくのだろう。
雲に私の心を重ねて、そのままずっと立ち尽くしていた。
あの人は今頃だれのことを思っているのだろう。
私のことは、もう忘れちゃったのかな。
それなら早く別れを告げて。
あなたのためにいろいろ考えるのは、もう疲れちゃった。
だからお願い。私をこれ以上苦しめないで。
居場所がないわけじゃないの。ただ、その場所はとても息苦しい。
学校も、家も、どこもかしこも、酸素が足りない。
ただ唯一安心できるあの人の傍。それも今、失いかけている。
私はどうしたらいいの?あの人を失って、私はいったい誰にすがっていきていけばいい?
自分から別れを切り出すのは簡単なこと。
でも、それから先は?私は一人で生きていけるの?
そんなに強くないこと、わかってる。だからって、だれにでも弱音を吐けるわけじゃないんだよ。
大声を出して泣ける場所はあなただけ。
ねぇ、一馬。
苦しいよ。辛いよ。泣きたいよ。
ずっと、ずっと、あなたに会いたいと思ってる。
忙しいのよね。わかってる。それでも会いたいの。
こんなこという私は、わがまま?
だったら、わがまま言うなって叱ってよ。
別れるのは秒読み段階。私から言われるのを待っているの?それとも、その現実から逃げているの?
どうして、離れなくちゃならないの?どうして、私はこんなふうになっちゃったの?
誰か教えてよ。
雲の行方はだれも知らない・・・・。
また意味のわからんものを・・・・っ!!(死
花月
