「またね」って
「絶対」って
そう言って去っていった
別れ際
それはあなたがついた
最初で最後の
嘘
L I A R
秋の特有の美しい夕日が私を包み込む。
学校帰り、急にこの公園へ呼び出された私は呼び出した張本人、彼氏の一馬を待っていた。
一馬から呼び出すなんて珍しい。
なにかあったのかな。
なんとなく、嫌な予感がした。
私の嫌な予感は当たるんだよね。どうせならくじ引きとかに当たって欲しいけど。
そんなことを考えながら、ベンチの近くにあった小石を蹴る。
トントンとバウンドして、石が転がった先には一馬の姿があった。
「一馬!」
やっと現れた一馬に笑顔で大きく手を振る。
でも一馬は、いつもみたいに駆け寄ってきてくれなかった。
目を背けたまま、小さく手を振ってゆっくり歩いてくる。
まるで、私のところへ行きたくないかのように。
どうしたんだろ。いつもと明らかに様子が違う。
私の心臓がドクンと波打った。
嫌な予感が押し寄せてくる。
なんだろう、この胸騒ぎ。
嫌だ。胸が痛い。怖い。
これから何が起こるというの?
「待たせて・・・ゴメン」
「ううん、大丈夫。それよりどうしたの?なんか元気ないね」
胸騒ぎを隠して、いつも通り元気なフリをする。
いつもみたいに、笑って。
この嫌な予感が、外れるように祈った。
「嫌、なんでもない」
「そう?ならいいんだけど・・・」
「」
「・・・・・・・・何?」
「話が、あるんだ」
また心臓がドクンと波打つ。
話ってなに?いいこと?嫌なこと?
一馬がこんなトーンで話を切り出したことなんてない。
それがまた私の嫌な予感を大きくさせた。
目の前にいる一馬がすごく遠くへ感じる。
嫌だ・・・いかないで。
私は無意識のうちに一馬の右手を掴んでいた。
「?」
「あ、ご、ゴメン・・・とりあえず、座ったら?」
「あぁ」
私が手を離すと、一馬はまたゆっくり私の隣へ座った。
沈黙が私たちを包み込む。
先に切りだしたのは私のほうだった。
「話ってなに?」
私は一馬の方を見ているのに、一馬は私の方をまったく見てくれない。
いい憎そうに下を向いているだけ。
しばらく黙ったあと、一馬がやっと言葉を紡いだ。
「俺、ずっと考えてて」
「うん」
「どうしようか迷ったんだけど・・・」
なかなか要領を得ない一馬の話し方。
そんなに言いにくいことなの?
気になって仕方がない。
また沈黙が続き、一馬が言った言葉は・・・。
「別れて、欲しいんだ」
何を言ったのか理解するのに、少し時間を必要とした。
別れる?私と一馬が?
どうして・・・。
「な、なんで・・・」
それしか言葉が出てこなかった。
嫌な予感が的中した。
最悪な予感が現実に・・・。
「他に好きな奴がいる、から・・」
好きな奴?誰?
私よりも好きなの?
嫌だ・・・嫌だよ・・・一馬・・・。
「そんなそぶり、見せてくれなかったじゃない・・・」
「・・・」
搾り出した私の声は、ひどくかすれていた。
涙で言葉が続かない。
でも、引き止めたい。
それがどんなに醜い姿でもいい。ただ一馬を失いたくなかった。
「一緒にいるって言ったじゃない!またお祭り行こうって、映画もいっぱい見ようって・・・」
一緒にいれると思ってた。この関係が永遠に続くと。
来年も再来年もずっと、ずっと・・。
「ゴメン」
「どうして!?私よりもその子がいいの!?私より、好きなの?もう、私は好きじゃ・・・」
声が出ない。その代わりなのか、涙は止まることを知らなかった。
目の前がかすむ。今まであったことが巡った。
「のことはまだ好きだよ。でもあいつのことも好きなのに一緒にいるのは、に失礼な気がしたんだ」
そんなことないよ。
私、頑張るから。一馬がその子より私のこと好きになってくれるよう、頑張る。
だから別れるなんて言わないで。
もう会えないなんて嫌だよ。もっと一馬と一緒にいたいよ。
なんでこうなっちゃったの?私のどこがいけなかったの?
あいつなんて言わないで。一馬の隣は私がいい。
隣にいさせて・・・。
「ゴメンな、」
謝るくらいなら、捨てないでよ。
私を選んでよ。
「か、ずま・・」
やっと一馬が私の方を見てくれた。
そして、優しく・・・抱きしめてくれた。
「、ゴメン」
最後のぬくもり。あぁ、これで全て終わるんだ。
私は一馬にしがみつき、大声で泣いた。
気を引く赤ん坊のように。
こんな思いするなら出会わなければよかったね。
今頃、一馬の隣にはあの子がいる。
私の特等席だった、あの場所。
遊園地も映画館もお祭りも・・・一馬の部屋も。
今は全てあの子のもの。
一馬が残したぬくもりが、まだ腕に残ってる。
体中に染み付いて取れない。
ねぇ、一馬。
あなたは私を愛してた?
私はあなたを愛していたよ。
さようなら・・・。
もう会えぬ愛しき人。
実体験。
花月
