ずっと前から好きだった











あなたはもう覚えていないかもしれないけれど











私はずっと想ってた











一度たりとも忘れたことはない











あなたのことが












大好きです











































































めぐり合い








































































イベントの日に告白すると振られるとか言いますが、私はそんなの一切気にしません。12月25日。いわずと知れた恋人達の一大イベント、クリスマス。

はここに宣言します。私の想い人、犬飼冥くんに今日こそ告白することを。

冬休みに入った校舎はがらんとしたものでした。聞こえる音といったら部活の人たちの掛け声とかそういった類。

私は冬休みも一生懸命練習に励んでいる野球部のところへ向かいます。

ネットの裏からそぉっと覗き込むと、マウンドの上で剛速球を投げている犬飼くんの姿がみえました。

近くのネット裏は犬飼くんのファンクラブが占領しているため、ちょっと遠くからの眺め。でも、それだけで充分です。あんなかっこいい犬飼くんを近くでみたら、きっと倒れてしまいますから。

犬飼くんが一球投げるたびに、女の子たちの黄色い悲鳴が飛びます。私もあんな風に接することができたら・・・。でも内気な私にとってそんなの夢のまた夢。

所詮はこうして、遠くから見ることしかできないのです。

キャプテンの牛尾さんが休憩を伝えました。ベンチの辺りに戻っていく犬飼くんを見つめながら今だ!と思い、覚悟を決めてグラウンドへと入っていきます。

「犬飼キュン!私の作ったドリンク飲んで〜vv」

「ダメよ!犬飼キュンはみんなの犬飼キュンなんだから!」

「私クリスマスケーキ作ってきたの!食べて〜v」

ファンが群がっていて先に進めません!それどころか犬飼くんの姿すら見えない始末・・・。さすがはクリスマス効果。みんな犬飼くんを我がものにしようと必死です。

「い、犬飼くん!」

なんとか大きな声を出してみますが、ファンの声にかき消されて届きません。しょうがない、これは部活終了まで待つしかないようですね・・・。ホントに私って;

ファンに押しつぶされそうになりながらも、なんとか群れから出て再びネット裏へ。しかし、そこにも他の部員さんたちのファンが集まっていて私の居場所はありませんでした。

そういえば、昨日は司馬くんの誕生日でしたね。だから今日もプレゼントの嵐なんでしょう。本当に私ってついてない。

この日のために夏からせこせこと作っていた手作りの手袋を抱いて、そのまま校舎裏へと引き下がりました。

思い起こせば去年のクリスマス。夜の道を歩いていたとき、不良に絡まれたところを助けてくれたのがきっかけで始まった恋。

まさか同じ高校になるなんて思ってなかったし、犬飼くんはそのときのことなんて忘れてるだろうけど、本当に私は嬉しかった。

誰もが見てみぬふりをしていた中で、たった一人助けてくれたのが犬飼くん。その気持ちは涙が出るほど嬉しいことでした。

「私はなんでこう、自己主張がはっきりできないんだろう・・・」

助けてくれたときだって、名前のひとつも聞けなかった。高校に入ってから初めて知った。昔からそう。私はいつも臆病で、人の影に隠れてる。

変えなきゃ、こんな自分。私は犬飼くんに告白するんです!断られてもいい、あの時のお礼も兼ねて自分の気持ちをしっかりと伝えないと!

「がんばるぞー!!」

校舎裏で空に向かって叫んだ声。それは誰にも聞こえていない・・・・はずでした。

しかし、神様というやつは私のことがとことん嫌いらしいです。後ろから聞こえたのは何度も聞きほれた声。

「とりあえず、何を頑張るんだ?」

「い、い、い、犬、飼くん!?!?!」

あんまりです。ひどいです。誰もいないと思ってたのに・・・。神様、私に恨みでもあるんですか?

息を切らして立ち尽くしている犬飼くんが、とても近くてかっこよく見えました。どうやらファンの子たちから逃げてきたみたいです。

最悪な現場を見られてしまいました。見ず知らずの人(私は知ってるんですけど、犬飼くんは覚えてないでしょうから)が叫んでるなんて、とてもいい光景には見えません。

しかも台詞が、頑張るぞなんていう・・・。もう私にどうしろっていうんですか。

「あ、お前は・・・」

だんだん息が整ってきた犬飼くんは、私の顔を見るなりなにか考え込むような表情をしました。な、なにか顔についてるんでしょうか。だとしたら、本当に恥ずかしいです!

ただでさえ二人っきりで恥ずかしいのに・・・!

だろ?」

「そ、そ、そうです・・!なぜ知って・・・」

「忘れたのか?去年のこと」

覚えていらっしゃったんですか!?あんなこと!嬉しい・・・。本当に嬉しい・・。犬飼くんが私を覚えていてくれたなんて。

とっくに忘れられてたと思っていたのに、こんな嬉しいことありますか?一気に嬉しさがこみ上げてきて、私は思わず涙してしまいました。

「お、おい!?」

「ごめんなさ、い・・!私、うれ、嬉しくて・・っ!」

「と、とりあえず泣くな・・」

困っています。明らかに困っていらっしゃいます。早く泣き止まなければ。でもその気持ちとは裏腹に涙はどんどん流れていきます。

と、そのとき。私の身体は暖かい感触に包まれました。

「え・・・?」

だ、抱きしめ・・・られてる?犬飼くんに・・・?

「忘れるわけねぇだろ。俺はずっと見てた」

その言葉で、また涙が溢れ出しました。こんなにも嬉しいことって他にありますか?ないですよね。

「い、犬飼くん・・・」

「なんだ?」

「私は貴方が・・・大好きです」

小さな声で、でもちゃんと芯の通った声で私はそう告げました。すると、犬飼くんは私の身体をそっと離して、目を見つめます。

「俺も、好きだ・・・//」

少しだけ頬を赤らめてそう言ってくれた犬飼くんは、やっぱりかっこよくて、めまいがしそうでした。

サンタさん、ありがとう。今年最高のプレゼント。

この恋を運んでくれて、感謝します。