たくさんサッカーの勉強をしたのも














りんごジュースをつくったのも














ちょうちょ結びをやってあげたのも














全部全部、あなたのためだったのに














ねぇ、少しは














期待してもよかったの?






































































ナミダの枯れるとき






































































放課後の教室。グラウンドから響く運動部の声を聞きながら、私は机に突っ伏す。

ありえない光景を見てしまった。前からそうかなぁとは感づいていたけど、さすがに目撃してしまうと辛い。

私が1年から思い続けてきた人。真田一馬くん。その人が今日、女の子と一緒に歩いていた。

真田くんのことならなんでもわかってるつもりだった。

林檎ジュースが好きなことも、たまごサンドが好物なことも、ちょうちょ結びが苦手なことも。

そして・・・女の子が苦手なことだって。

そんな彼が今日は本当に楽しそうに、嬉しそうに、愛しそうに、その女の子を見つめていた。

クラスの子だったと思う。とっても美人で、可愛くて。成績もいいって聞いてた。あの雰囲気、

どう考えたって付き合ってるとしか思えない。

1年の頃から思い続けてきたのに。なんでこうなっちゃうかな。

慣れない編み物とかしてクリスマスにプレゼントしてみたり、積極的に話しかけたり。

そのおかげで、最近ではやっと普通に話してくれるようになった。

サッカーが好きだって知ってからは、サッカーの勉強もして話しも合わせた。

たくさんたくさん努力して、やっと掴んだのに。それはまた手の隙間から零れ落ちる。

むなしくて、切なくて、どうしようもなかった。

こんなにも好きなのに、伝わらない。この気持ちをどうしていいかわからない。

私はバカだ。遠回りなことばっかりして、自分の気持ちを伝えなかった。

それじゃあ真田くん、わかるはずないじゃん。

でもさ、だけど。ほんのちょっとだけど、期待してた。

真田くんが私と話すとき赤くなるのは、私のこと好きだからなんじゃないかって。

自信過剰だっていうのはわかってる。だけど、そう思いたかった。

そうじゃなきゃ、こんなに不利な片思い。やってられない。



「バカ、みたい・・・」



気持ちも伝えられなかった恋に、終止符が打たれた。そのことがなんだかバカらしくて、私はそう呟いた。声は響いて消える。

窓から見える景色が滲んだ。涙が止まらない。



「バカみたい・・・!」



目から流れ落ちる雫は、机に小さな水溜りを作っていく。

私は、どうすればいい?いつか真田くんと結ばれる日を夢見た私は、これからどうすればいいの?

デートコース、たくさん考えてた。

サッカーのチームだって、選手も暗記するくらい覚えた。

たまごサンド、何度も作って最近やっとおいしくなったのに。

所詮は夢。人の夢、それはとても儚い。

終わったんだ、何もかも。



?」



幻聴かと思った。けど、それは確かに聞こえた。何度も聞いたその声にまず間違いはない。

真田くん?振り向くと、そこにいたのはやっぱりその人。

涙でボロボロの顔だなんてこと、すっかり忘れてそのまま凝視する。

真田くんは不思議そうに、心配そうに私を見ていた。大丈夫か?と目が語っている。誰の所為で泣いてるかわかってるの?



「どうした?」



何も答えられない。だってこれは、真田くんの所為なんだから。

涙を拭って、もう一度真田くんを見つめなおす。

やっぱりかっこいいな。これじゃあモテるのも仕方が無い。

私もあの子みたいに美人だったら、真田くんの特別な人になれてたのかな。

それとも、どう足掻いても神様は私と真田くんを引き離すつもりだったのかな。



「なんでも・・ないよ・・」



「うそつけ。そんなに泣いてんのに」



あぁ、もう止めて。



「俺でよければ話聞くから」



もう嫌。優しくしないで。そんなことしたら・・・私・・・



・・・」








































































またあなたを好きになってしまう。








































































「何でもないよ、心配しないで」



だけど、ごめんね。真田くん。せめて涙がかれるまで・・・



「このままでいさせてください」



真田くんの腕の中。とても暖かくて、こうしていることが夢見たいで、とても嬉しかった。

そしてこれが最後だと思うと、また涙が溢れてきた。

もう少しだけ、夢を見ていたかったのに。それは許されなかった。

真田くんが私を抱きしめてくれている。ありがとう、ごめんね。



私は泣いた。いつまでも、その腕の中で。











ねぇ、もし私がもっと早く気持ちを伝えていたら











あなたは私を見てくれていた?


















死ネタ以外で恋が実らない作品ってこれが始めて・・・かも?辛いですよね、こういうの。

花月