夏の終わり
それは何かがおこる
不思議な時間
夏の終わりに
夏休みも終わりが近づいている今日この頃。ユース、選抜共に練習がなかった俺は久しぶりにのんびりした夏のひとときを過ごしていた。
「はぁ・・・」
お気に入りのサッカー雑誌をパタンと閉じて小さなため息をつく。要するに、暇なんだ。
結人は今まで溜め込んでた宿題を片付けるため、家に引きこもり状態。
英士は家族で親戚の家に行っているらしい。
昨日も3人で遊んだばかりだったから、今日は昨日の疲れを取るためにもゆっくり家にいようと決意したが、思った以上に暇だった。
風鈴の音がやけにうるさい。
「一馬ぁ!ちょっとおつかい頼まれてー」
下から母さんの呼ぶ声がした。普段なら絶対に行きたくないが、今日は暇だし気分転換にもなるから、俺は素直に下へ下りていった。
母さんからメモを受け取ると、俺は財布をつかんで家の外に出る。
相変わらず暑い。蝉も元気に鳴いてるし、今日も日差しが強かった。
「蜃気楼でも見えそうだな」
独り言をつぶやいて、近所のスーパーへと足を運ぶ。
家の近くに下り坂に差し掛かったとき、遠くに見覚えのある人物が立っていた。
いや、まさか。そんなはずはない。
気のせいだと心に言い聞かせ、どんどん進む。
そして、はっきり分かった。その人がであるということが。
「一馬?」
凛と透き通った声が俺の耳に届く。昔はいつも聞いていた、あの懐かしい声が。
「久しぶり。こんなところで会うなんて、偶然だね」
そういって笑うは少し大人っぽく見えた。それに比べてなんにも変わっていない俺が恥ずかしく思える。
夏の暑さにクラクラした感覚を覚えながら、俺たちは公園のベンチに移動した。
「ホントに久しぶりだよね。私が中2のときに転校しちゃったから、2年ぶりくらいかな」
は、俺の買ってきたジュースを飲みながら懐かしそうに目を細めた。
その横顔は相変わらず優しい。
今日みたいに暑くて、気だるい夏の日には遠くへ行ってしまった。
俺の想いを伝えられないまま――
「いつ帰って来てたんだ?」
「昨日。連絡入れようと思ったんだけど、ちょっと時間が取れなくて」
申し訳なさそうに笑う。その笑顔を直視してしまった俺は照れ隠しにジュースを飲み干す。
「一馬、焼けたね。背も伸びたし」
「そうか?あんまり変わってないと思うけど」
「ううん、ずいぶん大人っぽくなったよ。高校生ってかんじ」
のほうがよっぽど高校生っぽかった。髪も前より伸びたし、顔つきも変わった。
前よりずっと綺麗になった。
「今度はいつ行くんだ?」
「今週いっぱいはこっちにいるけど、またすぐ戻っちゃうかな。それまではこの辺りをうろうろしてるから」
暇だったら声かけてね、とまた笑う。
いつの間にか、公園で遊ぶ子供たちはいなくなっていた。
「懐かしいね、この公園」
ブランコや滑り台を見回してがつぶやく。そういえば、結人と英士と俺とでよく遊んでた。
「覚えてる?かくれんぼしたとき、一馬が一番に私を見つけてくれたんだよ」
「・・・・そんなことしたか?」
「したよ〜忘れたの?それで、私に言ったんじゃない」
俺がを最初に見つけたから、のお婿さんは俺だ!
忘れてるわけがない。むしろ、今でもしっかりと胸に焼き付いている。
今では口が裂けても言えない台詞だけど、そのときの気持ちは今でもずっと変わらぬままだ。
「その約束は、今でも有効?」
「え・・・」
下を向きながら小さく言ったの言葉に、俺は言葉を失った。
俺だけだと思っていたから。に対するこの気持ちは。
「一馬が、好きなの」
俺の目を見て静かに、だけど芯のある声で言ったはとても綺麗で、思わず顔が赤くなった。
風が吹くのと同時にを抱きしめる。ふわっといい香りが鼻をなぜた。
「か、一馬?」
「俺もずっと好きだった。昔からずっと・・・・」
互いに変わったところは山ほどあった。だけど、俺との気持ちは何年たっても変わらない。
「俺と付き合ってください」
「はい」
どちらともなくしたキスは、夏の味がした。
夏の終わりの蜃気楼
それは君という名の
大切なもの
けっきょく何が書きたかったんだか・・;
相変わらずの駄文で申し訳ありません。もっと精進しなくては。。。
花月
