王子様のキスを待っていたお姫様








本当は全部わかっていて








わざと眠らされたのかもしれない










































































眠り姫とキス





























































やんなっちゃうなぁ。なんでこんなめんどくさい行事があるんだろう。

文化祭なんて、適当にやっときゃいいのに。よりにもよって、演劇なんて。

そりゃ、くじ引きで体育館ステージの使用権を得たことはわかるよ?だからって演劇はないじゃない。

せめてダンスとかさ、他にもステージ使った出し物なんて山ほどあるはずでしょ?

はぁ・・・。気が乗らないなぁ。

「というわけで、演目は白雪姫に決定しました」

「「「意義な〜し」」」

おい!意義ありだよ!何で白雪姫!?幼稚園のお遊戯会じゃないんだから、もうちょっと知的なもんやろうよ。

プライドってもんがあるだろ!?

「それじゃあ次は配役を・・・」

あぁ、もうどうにでもなってくれ。意義があっても口に出せない私の性分って、とことん損だわ。

裏方に回れば、表舞台に出ることもなく平穏無事に終わるだろうし。大道具は無理そうだけど、照明とか小道具とかになればいっか。

・・・だけど、現実ってそんな甘いもんじゃないのね;

?聞いてるの?」

「え、あ、なに?」

「おめでと!よかったわね、主役v」

「はぁ、そりゃどうも・・・って主役!?」

黒板には『白雪姫役 』としっかり書いてあった。

なぜ?ねぇ、私やる気ないんだけど。こんな奴が主役じゃダメだって。いやホント、頼むから考え直して;

「もちろん、やるわよね。ちゃんv」

さーん。目が笑ってませんよ。早く決めて終わらせたいんでしょ?わかってるって。

しょうがない、やりますよ。やりますとも。やればいいんですよね。はぁ・・・。ドンマイ、私。

「よかったじゃん、!相手はあの真田くんだし、いいなぁ〜羨ましい」

「へ?真田くん?」

あ、ホントだ。真田くんが王子様役かぁ。なんか似合うね。でも意外だなぁ、こういうの引き受ける性格してたっけ?

まぁくじ引きだからしょうがないか。彼も可哀想な人だね、やりたくもない役やらされて、しかも相手役が私とは。

そういえば、真田くんとはあんまりしゃべったことなかったな。いつもクラスの女子とはあんまり話さないみたいだし。

もしかして女嫌い?うわ!ますます可哀想!

とにかく、やると決まったからには頑張りますか。私よりもっと不幸な彼のためにも。



「ん?なに?」

噂をすれば(してない)ご当人の登場だ。へぇ、けっこう背高いんだね。

「よ、よろしくな・・・今度の劇」

「こちらこそ、よろしくね」

律儀ー。絶対A型だわ。ついでに部屋とは片付いてそう。んで、字とか上手そう。なんて、全部友達からの真田くん情報だけど。

こんな個人情報が飛び交ってるほどの人気者と劇をやるなんて、なんかファンクラブとかが怖そうだなぁ。前例もいくつかあったみたいだし。

こうして、翌日から劇の練習が始まった。






























































「おぉ・・・なんと美しい方だろう。もう一度あの方に会い、会いた・・・」

「カットカット!真田くん!もっとスラスラ台詞読もうよ!」

ありゃー。また鬼監督、ちゃんからの指導を食らっちゃったわね。

これは真田くん、とっても苦労しそうだ。どうみても、甘い台詞をさらさらと言えるような感じじゃないもん。

もう練習が始まってからだいぶ日にち経つけど、真田くんのあがり症&赤面症は一向に治る気配がない。ってか、練習でここまで緊張してたら本番ではどうなるの。

無理やりくじ引きでやらされた役とはいえ、引き受けたからにはちゃんとやらないと劇は台無しになってしまう。

彼も彼なりに一生懸命やってるのはわかるんだけど、どうもまだしっくりこないんだよね。

なんか、私がなんとかしないといけない気になってきた・・・・。

しょうがない。ここは私が手助けしましょうか。

「今日の練習はこれまで。また明日もよろしくねー」

「お疲れさまー」

やっと終わったって感じで、みんなぞろぞろと教室を後にする。片付けなんて言葉は彼らの頭にないようだ。

ふと、真田くんを見ればやっぱ相当落ち込んでるみたい。ため息ついて、どっと疲れてるって雰囲気だった。

「真田くん」

「あ、・・・」

「あのさ、もし良かったら私と一緒に練習してみない?」

「え!?いいのか!?」

「うん、私でよければ」

「ありがと、すっげー助かる」

あ、笑った・・・・。なんか可愛い。

この数日間でわかったけど、真田くんってホントはそんなに怖い人じゃないのかも。

いつもはあんまりしゃべらなくて女子を避けてるような感じがしてたからそういう気になってただけで。

「じゃあ、真田くん家行っていい?」

「お、俺の家!?」

「うん。私ん家は汚いし、真田くん家のほうが近いでしょ?」

「わ、わかった」

なぜどもる?心なしか顔も赤いような気もするし。本気で女の子が苦手なんだなぁ。

そうだ、これを期に真田くんのお部屋ウォッチングしちゃお!あの噂が本当なのか、確かめてみますか♪

「じゃ、行こっか」

「おう」

まさか真田くんと並んで歩く日がこようとはね。人生ってわかんないもんだわ。

互いに何もしゃべらないまま、20分くらいして真田家に到着。

途中で私に話しかけようとしてたみたいだけど、結局それも不発に終わった。・・・・ヘタレ?

「お邪魔します」

「どうぞ」

やっぱり噂は本当だった。部屋めっちゃ綺麗!私の部屋より断然綺麗!

他の人の家ってみんなこんな綺麗なのかな。それとも、真田くんが几帳面なだけ?

完璧に整理された机のうえに、私は写真立てを見つけた。

そこには、真田くんとあと3人のかっこいい男の子が写っている。

もしかして、モデルさんだったり?

「これ、真田くんの友達?」

「あぁ、それな。うん、俺の親友」

へぇ〜みんなホントかっこいいなぁ。真田くんもかっこいいけど・・・って何考えてるんだ私は。

「真田くんって、友達いたんだ」

「お前、失礼だってわかって言ってんのか?」

「あ、ゴメン;」

つい口がすべちゃった。真田くんにだって、友達くらいいるよね(←失礼)

「じゃあ、さっそくはじめますか」

「お願いします」

「お願いされます」

妙な挨拶を交わした後で、真田くんとの練習スタート。ホントは、ちょっと忘れかけてたんだけどね。

まず直さなきゃいけないとこは、その上がり症だよなぁ。どうやって直すか。

緊張するとどもるタイプと見た。ってことは、緊張しなけりゃいいんだよね。

「真田くん、とりあえず台詞を読むときは回りはみんなリンゴだと思って」

「り、リンゴ・・?」

「そう。それだったら緊張しないでしょ?つまりは気持ちの問題よ」

ホントはリンゴじゃなくて・・・・なんだっけ?まぁいいや。真田くんファンクラブによれば、彼の好物はリンゴジュースらしいから。

「じゃあ、この場面から。えっと、王子が眠りについた白雪姫を見つけて口付けするシーン」

今まで通した中で一番出来てなかったシーンだからね。ここさえ出来ちゃえば、あとは楽勝よ。

赤面症+女嫌い+へタレな真田くんにとって、たとえ劇とはいえこれほどの難関はないと思う。

頑張れ、王子!負けるな王子!相手が私なんだから、欲情しようにも出来ないでしょ?

「台詞言って、顔近づけて、私が起きたら寝台から立たせて、みんな出てきてハイおしまい。これで最後なんだから、頑張ろう」

「わ、わかった・・・!」

言ってる傍からもう顔赤いし。まぁ、ライトもあるから大丈夫かな?とにかく、倒れないことを祈ろう。

「今、私のキスで白雪姫を魔女の眠りから解き放とう」

なんとなく棒読みだけど、いい感じ♪さて、そろそろ終わったかな?目覚めましょう。

ここで私が微笑んで、真田くんの手を取って立ち上がる。あ、意外と大きいな。

「そうそう!そんな感じ!すごいじゃん真田くん」

うん、よく頑張った!本番もその調子で頼むよ!

というわけで、今日の練習はこれで終わり。日も暮れてきたし、そろそろ帰ろう。

「じゃあ明日も頑張ろうね」

「あ、送ってくよ」

「大丈夫、寄りたいとこあるし」

「そっか・・・あの、!」

「なに?」

「きょ、今日は、ありがとな///」

「どういたしまして」

やっぱり律儀だわ。それにやっぱり顔も赤い。

なんか、可愛いね。なんとなくだけど。

真田くんに見送られ、夕日の小道を一人歩く。

さっき近づいたときの息が忘れられないなんてこと、私だけの秘密。


































































そして迎えた本番当日。朝早くから集まって最後の練習して、今はみんなで舞台袖に集まっている。

私はステージで前のクラスの発表を見つつ、人並みに緊張した気持ちを和らげていた。



「あ、真田くん」

うわぁ!王子様スタイル!すっごい似合ってる!顔がいいだけ、余計に雰囲気が出てて。

ファンクラブが出来たのも頷けるよね。これじゃあ。

「似合ってるな、その衣装」

「そう?馬子にも衣装ってね。思ったより緊張してなさそうだけど?」

「あぁ、なんかここに来たら急に収まった。サッカー試合で慣れてるからな」

「真田くんサッカーやってるの!?」

「知らなかった?」

「全然」

意外。とっても意外。だから結構しっかりした体つきしてるんだ。程よい筋肉が女子のハートを掴んだんだね。

顔もいい、成績もそこそこ、スポーツもできるなんて。反則だ。

「お互いがんばろう。ね?」

「そうだな」

しっかり交わした握手。やっぱり手は大きかった。









劇が始まってから、真田くんは順調にことを運んでる。途中やっぱり棒読みになったり、動きを間違えそうになるところもあるけど、練習よりはずっと上手。

いよいよ、クライマックス。真田くんが最も緊張するであろう、この場面。実は私も相当緊張している。

大丈夫だよね、劇だし。うん、落ち着け私。これじゃあまるで真田くんだ、なんて思ったらちょっと笑えた。

目を瞑り、寝台に横になると足音が聞こえる。真田くんのものだ。

「今、私のキスで白雪姫を魔女の眠りから解き放とう」

うん、上手く言えてる。練習の甲斐があったね。

さぁ、もうすぐ終わりだ。真田くんの顔が迫ってくるのがわかる。きっとものすごく緊張してるんだろうなぁ。
































































そのとき。私の唇に、やわらかいものが触れた。



























































「えっ・・・・」

思わず声をあげて目を開ける。目の前には、やっぱり赤くなっている真田くんの姿。

あれ、今もしかして・・・キスされた?

真田くんの手をとって立ち上がる私の顔は、放心状態。もう何がなんだかわからない。

私が真田くんにキスされた?たまたま唇が当たっただけとは考えられない。

ということは・・・。どういうこと!?

こうして、私たちの劇は終わった。会場に広がるお客さんの笑顔と盛大な拍手。

白雪姫もまんざらじゃないなって思った。









そのあと、真田くんは何も言わずに帰った。私も話しかけようとしたけど、どうも上手くいかなくて。





でも、ただ一つはっきりしてることがある。





今から真田くん家に行くこと。そして、真意を確かめること。





もし、真田くんがホントにキスをしてくれていたのなら、





今度は私から、彼にキスを送ろう。








女の子は、キスを待ってるだけじゃないんだよ?









ね、ヘタレな王子様v








無駄に長いし、よくわかりませんね;ヘタレでも積極的な一馬が書きたかっただけです;

精進します・・・。

花月