少しつりあがった目元











さらさらの黒髪











小柄で華奢












そんなカズは











この世で一人しかいない











大切な人







































































オンリー








































































カズのいない部屋で私は一人、迷彩帽を眺めていた。

この前行ってきたナショナルトレセン。そのとき、カズとそっくりな人がいた。確か東京選抜のFWだったと思う。

九州選抜マネージャー兼カズの彼女である私は、思わずカズと間違えて呼んでしまったほど似ていた。

世の中に似ている人は3人いるっていうけど、あそこまで似ているとは・・・。そこで私は思った。

この迷彩帽。もし他の人が被っていたら、誰でもカズになれるんじゃないか?

と、いうわけでカズの迷彩帽を拝借して被ってみることにしました。

・・・なんやそれ」

ジュースと一緒に部屋へ入ってきたカズの第一声。ちなみに私の姿は、カズのコスプレです。

ようは、九州選抜のユニフォームにゴールキーパーグローブ。そして極めつけは迷彩帽。どこからどう見てもカズでしょ。

「似合う?」

「似合う似合わんの問題やなか。なしてそげな格好しとーとや?」

「この前の選抜にカズと似た人がいたから」

「だからなんね」

「もしかしたら誰でもカズになれるんじゃないかと思って・・・」

「アホ」

私の台詞を遮って、カズはすぐさま批判の声をあげた。そして私の頭から迷彩帽を取り返す。

ちぇ、けっこう似合ってたと思ったんだけどなぁ。

カズからジュースを受け取って座ると、カズもその隣に腰を下ろした。

そういえば、私服のカズを見るのも久しぶり。相変わらず室内でも帽子はかぶってるけど。

よく見れば、カズのユニフォームからはカズのにおいと土のにおいがした。

キーパーグローブは使い込まれたようにボロボロ。今度プレゼントしてあげよう。

は俺になりたいんか?」

「はい?」

唐突に質問されて、戸惑う私。それに対してカズは少し照れたようにジュースを飲み干す。

カズになりたいっていうか、カズになれるか実験したかったんだけどね・・・なんて言えばいいか。

「カズになりたいんじゃなくて、カズになれるかってこと」

「で、なれたんか?」

「まだ考察中。鏡見てないから」

「・・・・アホ」

あ、またアホって言った。仮にも彼女にアホアホってもし本当のアホになったらどうしてくれんのよ。

っていうかもうアホなんだけどね。それだけは認めます。だってカズのコスプレしてるもん。

キーパーグローブを見つめて思う。カズはこのグローブをつけて、どれだけゴールを守ってきたんだろう。

このユニフォームをきて、どれだけフィールドの上に身体をつけたんだろう。

こんなになるまで・・・。

「鏡貸すか?」

「いいや。もうわかったから」

「なんがね?」

「私はカズになれない」

グローブを抱きしめるようにして、私は小さく呟いた。

だって、カズは。功刀一という一人の人は、こんなにも努力して今の生活を手に入れた。

サッカーで上を目指し、努力して努力して、やっとこんなに上手くなった。

私はNO.1GKだと思ってる。全世界の人が否定しても、私だけはそう思ってるから。

だからカズはカズ。私はカズになれない。

「なんね、急に」

「よくがんばりました」

「はぁ?」

戸惑っているカズに追い討ちをかけるように、私はカズの腕に絡みついた。

暖かい陽だまりのようなにおいのするカズ。華奢な身体からは創造もできないほど、その腕はしっかりしていた。

「カズはカズだもんね」

「当たり前やろが。なんば言っちょる?」

「今まで頑張ってきたから今のカズがあるんだもんね」

「・・・・まぁな」

照れくさそうにカズはそっぽをむく。その顔を無理やり私の方に向けさせていきなりキスをした。

「ア、アホ!!なんばしよっとか!!//」

「赤くなってる〜」

頬をつついてからかうと、カズは顔を真っ赤にして迷彩帽を深く被った。

照れたカズも可愛い。こんなカズもサッカーしてるカズも、全部ひっくるめて功刀一。

私の大好きな、彼氏。

これからもずっと一緒にいられたら、こんなに幸せなことはない。

大好きだよ、カズ。










いつまでも、永遠に・・・。