幼馴染







それは家族でも他人でも







友達とも少し違うような







不思議な存在





































































幼馴染と秋の風


































































ある日の朝。なんの変哲もないごく当たり前の朝に、その事件は起こってしまった。

「なんでお前がここにいんだよ!?」

「あら一馬。久しぶり」

教室へ行くと、昔なじみの顔が隣の席に座っていた。俺の目が間違っていなければ、たぶんこいつは。ずっと前に引っ越したはずの幼馴染だ。

「・・・・・なんでそんなに驚いてんの?」

「驚くに決まってんだろ!だいたいいつこっちに戻ってきたんだよ。連絡のひとつくらいよこせ!」

「失礼ね!ちゃんと連絡したでしょうが!」

「してねぇよ!」

「バ一馬!今したわよ!」

「会ってからじゃ遅ぇだろ!ってか、会ってからもしてねぇし」

「コレから言おうと思ってたの!」

「結局してねぇんじゃねぇかよ!」

「一馬が変な態度取るからでしょ!?人のせいにしないで!」

「俺がいつ変な態度取った!?普通の反応だ!」

「普通だったら簡単に挨拶して、何事もなかったように接するはずでしょ!」

相変わらずこいつは・・・(怒)昔から口の減らない奴だとは思ってたけど、高校になっても減らず口は変わんねぇな。

なんで俺が朝からこんなに無駄な体力使わなきゃいけないんだよ!今日は学校が終わったら練習試合があるってのに!

「とにかく!今日からここでお世話になるから。よろしくね」

「よろしくじゃねぇって。お前は昔からなんでも突拍子なんだよ。英士と結人が知ったらなんて言うか・・・」

「英士と結人にはもう言ってあるけど?」

「はぁ!??!!?」

「だって、英士と結人は学校も違うしいつ会えるかわかんなかったから、昨日のうちに電話しといた」

「俺にも電話しろよ!ってか、一番連絡すべきなのは同じ学校である俺だろ!?」

「どうせ学校で会うんだから、電話したら電話代がもったいないじゃない!」

「一人分くらい大して変わんねぇよ!」

つ、疲れる・・・!俺に言わないで英士と結人には言うってどういうことだ!?それじゃあ俺ハブじゃねぇかよ。なんか、むなしい・・・;

ふと、クラスメイトの視線を感じる。一時との言い争いを止めて回りを見渡すと、全員がこちらを凝視していた。心なしか、ヒソヒソ話まで聞こえてくる。

「なんか今日の真田くん、いつもと違うよね」

「あんなにしゃべる人だったんだぁ。知らなかった」

「今まで近寄り難いイメージがあったから、なんか新鮮だよねー」

そうだった!俺、高校ではクールな奴で通ってた。いや、別に狙ってやってたわけじゃないけど、クラスメイトからはそういうイメージが自然とついてたから、俺も流れでそんな感じの雰囲気かもしだしてたんだ。

ショックとかいうより、なんていうか・・・恥ずかしい。これも全部、の所為だ!!

「なにいきなり固まってんのよ」

「な、なんでも・・・ない」

「はぁ〜。どうせクラスの子からいろいろ言われて、恥ずかしくなったんでしょ?」

バレてるし;さすがは幼馴染、なんでも分かるのか?こいつは。

そうこうしているうちに、担任が入ってきた。の紹介とかをささっと済ませる。は普段絶対に見せないような「よそ行きの顔」を前面に見せて、さっき俺達がしていた会話からは想像もつかないような猫なで声を出していた。

元々顔立ちの良いがにっこり笑って挨拶をするもんだから、クラスのみんなは男子女子関係なく、頬を赤らめていた。確かに、昔よりはちょっとだけ、ほんの少しだけ大人っぽくなったとは思うけど。

みんなは知らないんだ。がどれだけ怖・・・じゃなかった、凄いやつかを。

「というわけで、今度の体育祭の紅白対抗リレーは真田とで決定なー」

はぁ!?ちょ、ちょっと待てよハゲ教師!(ハゲてないけど)というわけって、どういうわけで俺が紅白対抗リレーの選手なんだ!?

しかもよりによって相手が・・・・・・。

「よろしくね、一馬v」

あぁ、神よ。あなたはそんなに俺が嫌いですか?

こうして、の恐怖特訓が始まってしまうのだった。


































































翌日。朝5時。なんだってこんな朝早くから学校のグラウンドに集合しなきゃいけねぇんだよ。

呼び出したのは他でもない、同じ紅白対抗リレーの選手であるだ。

昨日いきなり電話がかかってきたと思えば、朝練するから5時に来いとのこと。断ればどうなるかなんて、知ってたから自分の身を守るため、俺はYESの返事をだした。

「おはよ〜一馬」

「あぁ、おはよ」

「さってと。さっそくはじめますか!」

「はじめるって、なにを?」

「なに言ってんの!特訓に決まってるでしょ!」

「特訓なんてしなくてもは十分早いだろ」

「バ一馬!私じゃなくて、一馬の特訓よ!いくらサッカーで鍛えた足でも、今のままじゃ白組の陸部になんて適うわけないわよ。だから、そのための特訓」

にやりと笑ったに俺はただならぬ嫌な予感を感じる。昔から、がこの表情をすると、ろくなことが起きなかった。

「じゃあ、まずは学校周り20週」

「20週!?授業始まっちまうだろ!」

「だからいいんじゃない。がんばればHRに間に合うわv」

「でも・・・」

「いいから!さっさと走りなさい!」

ものすごい顔で睨まれて、俺はしぶしぶ走り出す。しかし、この特訓はまだ序の口にすぎなかった。








「肝心なのはスタートダッシュ!バトンをもらってからのダッシュが大切なの!バトンをもらってすぐのタイムを計るわ。まずは、軽く100本からいってみよう!」

「100本!?」








「次はスタンダードに100m走よ。これは150本からスタート!ちなみに1回でも平均タイムから落ちたら最初からやり直しだからね」

「か、勘弁してくれ・・・・」








「バトンをもらうフォームも重要よ。手を移し変える練習ね。3時間から行きましょう」

「さ、さ、3時間!?」































































そして迎えた体育祭当日。最後の目玉である紅白対抗リレーの選手たちは続々と入場門へ集まってくる。俺ともその例に漏れず、しっかり列を作っていた。

「ついに来たわね。このときが!」

「お、おう!」

「なに?もしかして、緊張してるの?」

「なっ!んなわけねぇよ!」

「ホント〜?その割には顔が引きつってるみたいだけど?」

「/////」

の言うとおり、緊張はしていた。しかしそれは、レースに対する緊張感ではない。紛れもない、に対する緊張感だった。

ここまで徹底的に特訓してきたんだから、もちろん本番での失敗は許されない。つまり、このレースに負けたら、今までの特訓以上に厳しいものが待ち受けているのだ。

それほど、のリレーに対する思いは熱かった。

「一馬、コレ」

「ん?」

が手渡したのは、古びれた小さなお守り。たしかコレは、引越しの当日俺がに渡したものだ。

「一馬がくれたお守り。コレがあったから、私は一人でも頑張ってこれた。だから、コレには結構な効果があると思うのよ」

・・・」

「だからこれ持って、しっかり走ってきなさい。あんたはアンカーなんだから」

お守りを握り締めると、のぬくもりが伝わってきた。こんなになるまで持っていてくれたんだと思うと、自然に頬が緩んだ。

「ありがと、な」

笑ってそういうと、もにっこりと笑みを返す。昔と変わらない笑顔だった。

『さぁ!体育祭もいよいよ大詰め!最後の競技、紅白対抗リレー!選手の入場です!!』

やたらテンションの高い放送と共に、俺たちはグラウンドへ入場する。心臓の音が早く、大きく聞こえた。それは、応援席から聞こえる声援よりも大きく響いた。

俺はアンカーの証であるたすきを肩にかけ、静かに出番を待つ。とは反対側に整列した。

「よーい・・・」



-パァン!-



ピストルの音と共に、第一走者が走り出す。会場のテンションも一気に上がった。

落ち着け。落ち着け俺。大丈夫だ。今まで嫌ってほど特訓してきただろ?できる。俺ならできる。

があんなに必死になるなんて、久しぶりのことだ。元から行事ごとには燃えるほうだったけど、ここまで熱くなるのは、やっぱり俺がいたからだろうか。

最初に会えたとき、あんな会話したのだって、ホントは嬉しかったからだ。

そんなの努力、無駄にするな!

「アンカー、並んでください」

係りの生徒が俺と白組のアンカーを呼ぶ。見ると、は白組とのデッドヒートを繰り広げていた。

!!」

互いに一歩も引かない状況で、俺はの名を叫んだ。そして、俺はいち早くのバトンをもらった。

『これは体育祭史上未だかつてないほどのデッドヒートだ!先にバトンをもらったのは赤組・真田一馬選手!』

もう少し、あと少し。後ろからは白組の選手が迫ってくるのが分かる。俺はさらに加速をつけた。

そして、最後の直線。ゴールテープが見える。不思議と景色がゆっくりに感じた。

応援席の盛り上がりは絶頂に達し、リレーの選手達も総立ちで応援している。その中に、の姿を見つけた。

「一馬!!」

泣きそうな顔をして、が俺の名を呼んだ。なんでそんな顔してんだ?俺が負けるわけねぇだろ。

心配すんなって。俺は大丈夫だから。

一瞬の飛び出し。そして俺の身体はゴールテープをまとった。



































































「あ〜疲れたぁ!!」

「お、おい!!」

俺の背中に負ぶさっているは全体重をかけて持たれかかった。思わずバランスを崩す。

「にしても、まさかお前が足怪我してるなんてな。終わったあと急に倒れるから、びっくりしたぜ」

「当たり前でしょ!私が本気出してたら、白組とのデッドヒートなんてありえなかったわ」

「・・・自信家;」

「なんか言った?」

「い、いや・・・別に」

しばらくは俺の言葉に疑問を持っていたようだったが、そのあとすぐ俺の背中にうずくまった。

?」

「なんかさ・・・一馬、大きくなった?」

「そうか?」

「絶対そうだよ!なんか背中大きいもん!ずるい!私はもう小さくなるしかないのに・・・!」

「小さくなるしかないって・・・;」

「ずるい・・・ずるいやぁ・・・」

ふっと、の力が抜けるのがわかった。何事かと思って後ろを振り返ると、小さく寝息を立てているが見える。

「お疲れ、

静かにそう言って、俺はを起こさないようにゆっくり歩いた。

昔を知ってるっていうのは、すごくいいことだ。そりゃ、全部が全部いいってわけじゃないけど。

を背負ってると、自然に頬が緩んだ。とても、懐かしかった。







幼馴染ってのも、悪くないかもな――









体育祭夢です。あわわ・・・;キリリクもあるのに、すみません;キリリクは必ず書きますので・・・!

花月