私は負けず嫌い
それは例外なく
ましてやあんなもん見せられたら
対抗したくなりません?
ラブラブ対抗戦
東京選抜の練習が終わり、私と彼氏の一馬は河川敷を歩いていた。
一馬の大きな手に自分の手を絡め、仲良く並んで歩いてく。本当ならもっと早く歩けるのに、わざと速度を落として、一馬といる時間を長くしてみた。
空はもう暮れかけていて、遠くに見える夕日は半分以上沈んでいる。それをボーッと見つめながら私は一馬の手を握ったり放したりしていた。
「何してんだ?」
「何が?」
最初は黙っていた一馬も私の不思議な行動に気が付いて、疑問の声をあげる。それに気付かないフリをして、私はまだその行動を続けた。
「?」
「なに?」
「だから、何してんだって」
「だって、寒いんだもん」
寒いと手がかじかむじゃない?だから手の体操。一馬の手って大きいから包容力あるし、あったかいんだもん。
「あー温いわぁ」
「俺はホッカイロかよ」
「一馬はなんでそんなに体温が高いわけ?ヘタレだから?」
「ヘタレじゃねぇ!!」
「そー怒りなさんな。かじゅま」
「かじゅまっていうな!」
「あー温いわぁ」
「俺の話スルーかよ!?」
漫才みたいな会話をしながら、とことこと帰る夕日の小道。
そんな時、二人乗りの自転車が私たちの横を通り過ぎて行った。
「やだーちょっと早いよぉvv」
「大丈夫だって、じゃあもっと飛ばしちゃおーvv」
「やだってばぁvvv」
んのやろぉ・・・(怒)なにが「やだってばぁvvv」だよ!全然嫌がってないじゃん!むしろ喜んでるだろ!なにがむしゃらにハートマーク飛ばしてんじゃボケェ!!!
「・・・・・許せん」
「え?ちょ、?お前なに考えて・・・」
「一馬ぁvvv」
「はぁ!?」
親にも聞かせたことないような猫なで声を出して、私は一馬の首に抱きついた。
案の定こういうのに慣れてない一馬は大赤面。耳の先まで真っ赤だ。
こうなったらあのバカップルに対抗して周りに私たちのラブラブっぷりを披露してやる!負けてたまるか、あんなケバい奴らにぃ・・・・!!
「ちょ、離れろって///!!」
「寒い〜一馬あっためてぇvvvv」
「や、やめろって///」
照れてる。むっちゃ照れてる。うーん、これはこれでおもしろいなぁ。もうちょっと続けてみましょうか(にやり)
「やーだーvv寒いーvv」
「!!??///」
アハハ、もう声になってない!相変わらずからかい甲斐のあるやつだなぁ。
なんて思っていると、急に一馬の足が止まった。さっきまで照れながらでもなんとか歩いてたのに。
「一馬?」
もしかして、怒らせちゃった?怒らせちゃったの私!?
「あのぉ・・・一馬さん?」
「・・・・」
静かに私の名を呼んですっと近づいてくる。怒られるかな、と目を閉じた次の瞬間。私は一馬の腕の中にいた。
「へ?」
「へ?じゃねぇって。寒いんだろ?」
だ、抱きしめられてる?抱きしめられてるよ!あのバカップルに負けてないくらいのラブラブっぷりアピールしてるよ!
「か、一馬!人が見てるから!」
「だってやってたくせに//それには顔隠れてるからいいけど、俺なんて丸見えだからな?」
あ、そっか。顔見えてないんだ。じゃあもっとあったかくなりましょか?
私は一馬の背中に手を回して、ぎゅっと抱きしめる。一馬の身体が一瞬こわばったけど、すぐに元通りになって、自然と私を抱きしめてくれていた。
「あーあったかい・・・」
「よかったな」
「あんなバカップルたちより、よっぽど熱いよね」
「対抗してたのか?」
「だってむかついたんだもん」
「くだらねぇ・・・」
「でももういいもん。うちらも負けてないからねv」
「負けず嫌い」
「ヘタレ」
「・・・・・」
口ではまだ私に勝てないみたいだね。だけど一馬、君の勇気はすごいとおもうよ。
それからしばらく私たちは抱きしめあっていた。
冬の夕暮れ。私たちの周りだけ、早すぎる春が訪れた。
ぬくもりボックスと似たようなネタを・・・・;にしても最近短いような気がします。
花月
