貴方と付き合ってきていろんな顔を見た











怒った顔 泣いた顔 笑った顔











だから私の最後も











貴方の顔が見たいの
























































































最後の風景






































































































ずっとずっと探してた。この腐ったゲームが始まってからずっと。

貴方に会うためだけに、私はたくさんの人と戦ってきた。そして、その人たち全てを殺してきた。

傷もたくさん負った。でも、全然痛くないの。どうしてだろう。

私はただ、あなたに会いたいだけ。ただそれだけ。

ねぇ、芭唐。今どこにいるの・・・?



「スミくん・・」



目の前で亡骸と化した芭唐の親友を見て、私は思わず足を止めた。

きっと芭唐、悲しむだろうな。あぁ見えても結構友情を大切にする人だから。スミくんを殺した人も、私が殺したんだろうか。

それなら私はいいことをした。芭唐の親友の仇を討ったんだもん。

スミくんはただ黙ったまま、目を開いて死んでいた。私はその前にしゃがみこみ、開いた眼をそっと閉じる。

そして、近くに咲いていた花を摘んで、スミくんの前に供えてあげた。

芭唐は、まだ生きているかな。死んでたら嫌だな。

今までの放送ではまだ呼ばれてないから、たぶんどこかで生きている。この島のどこかで。

もし誰かに殺されてしまっていたのなら、私は芭唐を殺した人を殺す。

だって私は・・・。



・・?」



後ろから声をかけられ、振り返る。顔を見ずともわかった。そしてその姿を見て確信を得る。やっぱり、芭唐だった。

私の手には一丁の銃。芭唐の手にはナイフ。殺傷能力はこっちのほうが上だ。

このゲームが始まってから、最初に思うことはそんなこと。

たった一人しかとることのできない優勝という名の椅子をかけての戦い。政府の思惑通りだとしても、私たちは戦うしかない。

それが嫌な奴は死ぬだけだ。

芭唐は酷く怯えた眼で私を見ていた。それに対して私は酷く落ち着いていた。



、まさかお前が殺したんじゃねぇよな」



芭唐の言葉に意味がよくわからなかった。一体誰のことを言っているのか。心あたりが多すぎて。

芭唐を探すために、数え切れないほどのクラスメイトを殺してきたから。

誰のこと?と言いかけて、私は後ろで死んでいるスミくんのことを思い出した。

そっか。私がスミくんを殺したと思ってるんだ。

そう思ってるんならそれでもいい。私の目的は果たされようとしてるから。



「答えろよ」

「私だって言ったらどうするの?」



芭唐が手に持っていたナイフを私に向けた。少し震えている手。そんなんじゃ私を殺せないよ?



「どうして殺した・・!」

「別に。だってそういうゲームでしょ?」



完璧に勘違いしてる。でもいいんだ。どんな形であれ、私の目的が達成されるのであれば、私はどれだけ恨まれても構わない。

ねぇ芭唐。私はね、こんなゲームしたくなかったの。だけど、自殺するなんてもったいないでしょ?

だから、私は貴方を探した。そのためだけなら誰を殺したって構わなかった。

人は私をこのゲームに乗ってるっていうけど、私はそうは思わない。

だってそうでしょ?私は目的のために人を殺してる。このゲーム自体を受け入れたわけじゃないの。



「早く、殺しなよ・・・」



私は笑った。その笑顔は、いつも芭唐に笑いかけている笑顔とはかけ離れてるだろう。

やっと私の願いが叶う。

でも、芭唐は私の思いとは裏腹にナイフを下ろした。



「どうして!」

がスミを殺すわけないからな」



なんで、私をそんなに信じるの?彼女だから?それとも、私にそんなことできないと思ってるの?

どっちにしろ、私の計画は狂ってしまった。芭唐に殺されるためだけに、今まで生きてきたのに。

私は貴方に殺されたいの。優勝しようなんて最初っから思ってない。ただ、このゲームに参加したくないだけ。

そのためには死ななくちゃならない。だから、私の人生は、貴方に幕を下ろしてほしいの。

ただそれだけの望み。どうして叶えてくれないの?



「芭唐、私・・・たくさんの人を殺したよ」



私は芭唐に近づいていく。銃は捨てた。もう必要ないから。



「見ればわかる」

「そうだよね、こんなにたくさん返り血浴びれば」



一歩一歩芭唐へ近づいていくたびに、私は死に近づいていく。それも知らずに、彼は私を受け入れようとしていた。



「もう、こんなゲームしたくないの・・・」

・・・」



そして私は芭唐の胸に額を当てた。今まで幾度となく感じてきたぬくもり。どれも優しく抱かれた記憶しかない。

今までありがとう。そして、さよなら。



「楽しかったよ・・・・芭唐――」



私は芭唐の持っていたナイフを自分の胸に突き刺した。

もちろん、芭唐の手はナイフを握っている。もう、これでいいよ。これで私は芭唐に殺されたことになる。



・・!!!」



心臓に空いた穴からは血が大量に流れ出た。おかげですぐに逝くことができそうだ。

眼が急速にかすんで、芭唐の顔はもう見えない。

私はゆっくりと手を伸ばして、芭唐の頬にそっと添えた。



「ころ、して・・くれて・・・あり、がとう・・・」

「止めろよ・・・!死ぬなよ、・・・!!!」



芭唐は泣いているだろうか。それとも怒ってるんだろうか。どちらにしても、芭唐が私を殺した事実は変わらない。

これが私の願い。最後に叶えたかった望み。



「さ、よ・・・なら・・・・・ばか、ら・・・・・・」

!!!!」



かすんで見えていた芭唐が、最後の一瞬だけはっきり見えた気がした。

そして私の視界は暗くなる。



私が芭唐に殺されたかった理由は一つ。

最後に見るのは、芭唐がよかったから。













貴方の顔を見て、死にたかったの。














初バトミス。ちなみに優勝者は芭唐です。

花月