出会いと別れの季節
別れを終えた私はまた
新たな出会いにめぐり合う
それは必然か偶然か
神様だけが知っている
再会
春。ついにこの私も高校生になりました。
桜並木を真新しい制服で歩くと、なんだかちょっと大人になった気分。中学校とは比べ物にならないほど大きな校舎を目の前に、私は期待で胸が一杯だった。
新しい友達たくさん作って、部活とか入って、彼氏とか作っちゃったりして!?
あーもー考えただけでわくわくする!走り出したい衝動をなんとか抑え、私はまだ人気の少ない校舎へと入っていった。
入学式のしおりによると、昇降口のところにクラスの発表が書いてあるらしい。あたりを見回してみると、下駄箱の外側に受験番号と名前が書いてあった。
A組から順に見てみると、私はどうやらB組らしい。校舎案内図を見ながらさっそくB組の教室へと向かう。
ガラガラ!と勢いよく扉を開ける。しぃんと静まりかえっている教室。それもそのはず、まだB組に人の姿はなかった。
「ちょっと早く来すぎたかな」
時計をみると、生徒集合の時間までだいぶ間がある。完全に空振り。でも、ちょっと教室を独り占めできた気分で嬉しかった。
自分の席を探し、座ってみる。今日からしばらく、この席で過ごすんだ・・・。高校生活初めての教室。何もかもが新鮮に感じた。
「早くみんな来ないかなぁ〜男でも女でも友達たくさん作らなきゃ♪」
うきうきしながら、机に頬をこすりつける。ひんやりとした感触が気持ちいい。それは中学の時と変わらなかった。
すると、廊下から響いてくる足音が聞こえる。お!やっと誰か来た!
女の子だったら絶対友達になりたいなぁv
好奇心いっぱいの目で前の扉へ全神経を集中させる。そして、私と同じように勢い良く扉は開いた。
そこにいたのは・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・カズ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」
男の子にしては小柄な身体。少しつりあがった目。迷彩柄の帽子。
それはサッカー九州選抜の守護神であり、私の幼馴染。功刀一、その人だった。
「なんでカズがここにいんの!?A校が第一志望のはずじゃ・・・」
「こそなしてここにおるとね?C校が第一志望やって母さんが言っとったが」
「私ははじめからここが第一志望よ」
「俺やってここが第一・・・・」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・母さんたちかぁ」」
私とカズは幼稚園からの幼馴染。当然母親同士の仲もいいわけで。
つまり、全てはお母さんたちの思惑通り。こうなることを予想してたのか、ちょっとお互いに見栄を張ったのかはわからないけど、どちらにしろ性質が悪かった。
カズは一回ため息をついて、自分の席を探し始めた。そして座った先は、なんと私の隣。
「ちょっと!なんでここに座るの!?」
「そげなこつ言ってもしょうがなかやろ!ここが俺ん席やけん!」
まさかとは思いつつ、机に書いてある名前を見る。そこには確かに『功刀一』の文字。
中学校でも3年間一緒のクラスだった。まさか高校でも同じクラスになるとは・・・・。腐れ縁としか言いようがない。
でもその反面、嬉しがってる自分がいることに気が付いた。
卒業式の日、カズと離れてしまうことがとても寂しくて、永遠泣き通した。あーこんなことになるんだったら、あんなに泣かなきゃ良かった。あの時の涙を返せ!
なんて心の中で思ってても、やっぱり嬉しいもんは嬉しい。自然と顔がにやけてしまう。
「・・・・・・・なに一人でニヤニヤしとおね」
「う、うるさい!//」
「それにしても、またと同じクラスになるとはな」
「そうだねーホント腐れ縁だね」
「まぁ、俺としては嬉しい限りやけどな」
「そうだねー私もそう思・・・・・・ってえぇ?」
あのぉ、カズさん?今なんておっしゃいました?
嬉しい限り?うれしいかぎり?URESHIIKAGIRI?(読みにくい)
つまり、その、あの、えっと・・・私とまた同じクラスになれて嬉しいってことですか?
「なに赤くなっとおとね、」
「え、だって・・・そんな嬉しいこと言われるとは思わなかったから・・・」
「はぁ・・・昔から鈍い奴やとは思っとったけど、ここまでとはな」
「ど、ど、どういう意味!?」
頭の中はパニック状態。いや、さっきまで友達作ろう☆とか考えてたのに、今は一転してカズのことしか考えられなくなっていた。
まさか入学式からこんな修羅場?が待ち受けていたとは!神様、私の高校生活どうなるんですか?
なんて一人でパニクってると、突然カズの顔がアップになった。
「わ、わわわわ!?//」
そして――
チュ!
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?!?!?!?!?」
「こういうことや。わかったか?」
こ、こういうこと!?ってどういうこと!?つまり、そういうこと!?!?
カズがキスを・・・私にキスをしたってことは・・・・・。
「好きってことですか・・・?」
「そうや」
あーあーえっと・・・どうしよう。彼氏ができてしまいそうです。っていうか私の答えは・・。
「で、返事は?」
「あのぉ・・・えっと・・・・よろしくおねがいします///」
「よし」
よしって。なにがよしなんですか。人のファーストキス奪っといて。まぁ、嫌じゃなかったけどね。
「これで高校生の間は、に変な虫はつかんな」
「私の父親か、カズは」
二人で笑いあう、静かな教室。
一足お先に、本当の春が訪れました。