トナカイよし
プレゼントよし
準備は万端
さぁはりきって
配りましょうか!
サンタの恋
こんばんは。私の名前は。サンタの国からやってきました、サンタクロース見習いです。
サンタクロースっていうと白いひげ生やしたおじさんだと思ってませんか?いえいえ最近は違うのですよ。こんな女の子サンタもいるんです。
けど、やっぱり見習いだから。今は仮免中。今日は実習が終わって初めてのサンタ活動。緊張するなぁ;
さぁ、記念すべき最初の家はここですね!椎名翼。あ、サッカー少年だ。なになに・・・欲しいものは、直接聞け!?おい、ふざけんなよサンタ管理事務所!プレゼントくらい聞いといてよ!
まぁいいや。適当になんか置いて帰ろう。どうせもう寝てるんだし、バレないバレない。
ってまだ寝てないし。本読んでるし。電気むっちゃついてるし。
寝るまで待つか?それとも違うところに置いておく?他の家も回らなきゃだし、どうしよう・・・。
私は翼くんの部屋をそっとのぞいて様子を見ることにした。にしても大きな家だなぁ。ずいぶんリッチ。
翼くんを確認。うわっ!かっこいい!茶色い髪の毛を程よく外はねさせて、まるで女の子みたいな可愛さ!
さぞかしモテるんだろうね。うらやましい。神よ、翼くんの家に来られたこと感謝します。なのでもう一つお願い。翼くんを寝かしつけてください。
ホント寝てくれないと困るんだよねぇ。最近の子どもは夜更かしが好きなのかな。それともサンタ待ち?どっちにしてもサンタは基本的に姿見せちゃダメだし・・・。
「ねぇ」
一番最後に回る?でもそうしたらせっかくトナカイにルート覚えさせたのに狂っちゃうなぁ。
「ねぇってば」
おまけに何が欲しいのかわかんないし。いっそ聞いちゃう?何が欲しいか。
「ちょっと!!」
「何!!今考え中なの・・・よ・・・・ってあれ?」
私の目の前には可愛い顔に青筋を立てた翼くんの姿。ちなみにここはベランダ。窓にはカーテンがかかっていない。つまりは・・・。
「バレバレ。あんた、人ん家で何やってるわけ?」
やってもーたー!!!!!やばい!やばい!やばいやばいやばい!やばいやばいや(強制終了)
とにかくやばい!気付かれちゃったよ。もう仮免も剥奪されたらどうしよう!どうすればいい!?サンタの国追放とかになったら!私ニートになっちゃうよー!!
「なに一人でもだえてんのさ。とにかくそこにいたら完全に不審者だから、あがりなよ」
「あ、あが、あがる?」
緊張とパニックでどもってしまった。ベランダの窓を開けて翼くんは暖かい部屋の中に私を招き入れる。
入ってみるとやっぱり広い。こんないい家に住んでるなんて、本当にうらやましかった。
ってのんびりしてる場合じゃない!どうしよう、バレたからには正直に・・でもバレちゃいけないんだし、隠し通すか!もしかしたら何かのドッキリだと思って気付いてないかも。
「あんたサンタだろ?」
思いっきり気付かれてます。そりゃ気付くわな。こんなサンタの格好してたら。それにしてもあっさり受け入れる子だなぁ。もっと大きなリアクションが欲しかったけど。
「あぁそうですよ。サンタですとも。それが何か?」
「なんで怒ってんだ?;」
もうこうなったら開き直るしかない。口止めしちゃえばいいんだよね。要するにサンタ界にバレなきゃいいんだよ。うん、きっとそうさ。大丈夫、なはず。
読みかけの本を閉じて、翼くんは私の方に向き直る。そしてその可愛い顔にうっすらと笑みを浮かべて微笑んだ。
うっわー可愛い。本気でほれちゃいそうです。
「それで。なんでサンタがうちに来てるわけ?俺なにも頼んでないけど」
「あぁそうですか、頼んでな・・・頼んでない!?!?!」
「うん」
サンタ管理事務所ー!お前ら絶対にうったえてやるからな!サンタ神に言いつけてやるから!じゃあ私がしてきた今までの苦労は全部水の泡ってことですか!?
さよなら、私の仮免・・・・。
しばらく遠い目をしていると、ついに翼くんが噴出した。なに?なぜに笑う?
「お前全然サンタらしくないな。俺は椎名翼。あんたは?」
「、・・・」
びっくりした。名前聞かれるなんて初めてだったから。それと、翼くんは笑うとかなりかっこいい。サンタと人間の恋ってありですか?
でも、そろそろ時間だ。もう次の家に行かないと。
せっかく部屋にまで上がらせてもらったのに、もう行かなくちゃいけないなんて寂しい。寂しすぎる。
もうちょっとでいいから、ここにいたい。
「ねぇ、」
「なに?」
「プレゼント、くれるの?」
「え?」
そりゃ、欲しいものがあるならあげますよ。なんてったってサンタですから。仮免だけど。
「もちろん。でも欲しいものないんでしょ?」
「今できた」
「なになに?このサンタがドドーンとあげちゃいますよ♪」
バッチとウインクをすると翼くんは苦笑して、私の方を指差した。どういう意味?
欲しいもの=今できた=私を指差す=私!?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・me?」
「Yes」
え、え!?ちょ、ちょっと待った!待って待って!どういう意味っすか!?私が欲しいってどうすればいいわけ!?
「、あせりすぎ」
「そりゃあせるよ!ってか私!?本気で!?」
「本気だよ。俺はが欲しい。文句ある?」
「・・・・・ないです;」
「よろしい」
にっこり笑った翼くんは優しく私を抱きしめた。そして優しいキスをする。
サンタと人間の恋。それもまたあり。
メリークリスマス、翼。あなたのプレゼントは私です。