いつもあなたの吸っているそのタバコは
白い煙を空に混ぜ
青いキャンパスに彩りを添えている
白い煙
真っ青な空。下に広がるのは見慣れた街並み。そして貯水タンクから立ち上る、一本の白い煙。
少し錆びたはしごを上り、ちょこんと顔を出す。そこで仰向けに寝転がってる人物、御柳芭唐。
「やっぱりここにいたー」
私が声をかけると、ビクっとしてこっちを向く。どうやら気付いてなかったみたい。
芭唐は上半身だけ起き上がらせて、よう、と片手を挙げた。
私も最後まではしごを上りきり、芭唐の隣にちょこんと座る。タバコのにおいがした。
「また部活サボって。先輩達探してたよ?」
「大丈夫だって。もう少ししたら行くからさ」
「ホントに?」
「ホントに」
「じゃあ芭唐の『もう少し』までここにいる」
「おう、そうしとけ」
私と芭唐は中学校のときから付き合っていて、クラスも一緒。私の隣は芭唐、芭唐の隣は私なのが当たり前な、そんな関係。
芭唐は昔から屋上が好きで、よく二人でサボってた。
そして今日も、部活をサボって日光浴。なんか、こういう時間って好き。
「芭唐、タバコくさい」
「お前まだ吸えないの?」
「ムリだね、そんな煙そうなもん」
ふーん、と芭唐はまた空を見上げる。私もつられて上を見た。
ゆっくりと流れる雲がいろんな形に見えて、ちょっと面白い。だけど、それより空をのんびり見上げてる芭唐の横顔がかっこよくて、少し赤くなった。
「、あの雲なんかに似てねぇ?」
「どれ?・・・ホントだ。なんかに似てる」
芭唐が指差した雲。立てに長くて、丸くて、先っぽからちょっとふにゃふにゃした雲がくっついてる。
何かに似てた。何かはわからないけど、確かに見たことある形だった。
えんぴつ?違うなぁ、とがってないもん。あ、かまぼこ。そんな感じじゃないか。
「スプレー缶とか」
「スプレー缶があんなに細いわけないだろ」
「じゃあ何なのよ。バカら」
「それを今考えてるんだって。ってか、発音変だぞ」
「わざとー」
「わざとかよ!?」
アハハー!面白い。これだから芭唐をからかうことは止めらんない。
でも、なんか本当に気になってきた。ここまで出てきてるんだよね、ココまで。
日常的に見てるものの気がする。なんだっけ。すっごく身近にありそうな・・・。
「あ!」
「あ?」
「わかった」
「へぇ、それでなんだ?」
「コレ」
私が指差したのは、芭唐の口にくわえられたタバコ。あの雲、タバコに似てるんだ。
「そうかぁ?」
「絶対そうだよ!ほら、煙まで一緒!」
「ふーん、俺にはそうには見えないけど・・・もしかしてお前実は吸いたいんじゃねぇの?」
「はぁ!?違うよ!」
「わかってるから、ホラ吸ってみ」
くわえていたタバコをすっと差し出す。うーん、どうしようかな。
このまま行けば間接キスだ、とか変なことが頭に浮かんだ。
しょうがない。一回だけ・・・。
恐る恐る吸ってみると、案の定むせた。
「ゴホっ!ゴホっ!!うぇ、まずい・・・」
「アハハー!やっぱガキだな、!」
すごい勢いでむせた私を芭唐は思い切り笑う。
そんなに面白いか?人の不幸が。ってか、こんなまずいもんよく吸ってるなぁ。
うわぁ、口の中苦い。すわなきゃ良かったと、後悔した。
芭唐はしばらくして笑い終わったけど、その眼には涙。そこまで笑うか!?
「もういいもん!」
ちょっと不機嫌。だってそんなに笑うなんて、傷つきますよ。
いくら彼氏でも、彼女に有害物質を吸わせた上に笑うなんて、ちょっとひどくない?
つーんとそっぽを向く私の名を、芭唐は必死に呼んでいたけど、とことん無視。
「ー」
「・・・・・・」
「ちゃーん」
「・・・・・・」
「おーい、ー」
「・・・・・・」
「、悪かったって。こっち向けよ」
少しやわらかい口調になって芭唐が言うから、ちょっとだけ芭唐のほうをむく。
「ホントに悪かったと思ってる?」
「思ってるって。ホラ、口直ししてやるよ」
「口直し?」
「そ。眼、瞑ってみ?」
言われたとおりに眼を瞑る。すると・・・。
チュッ!
〜〜〜〜〜!いきなりキスするなんて反則でしょ!?
当の芭唐は嬉しそうに笑ってる。対して私の顔は真っ赤。耳の上まで赤くなってしまった。
やられた。ってか口直しって部分で気付けよ、私。
「ごちそうさまv」
「〜〜〜〜!!いきなりなんて、ずるい!」
「だから、口直しだって!」
くそぉ!こうなったら仕返しだ!
チュッ!
へへ〜ん!どうだい?私のキスは。
今度は私からキスをした。芭唐は不意をつかれたといった感じで、きょとんとしている。
と、安心したけど・・・。
「、覚悟しろよ・・・?」
「え、ちょ、芭唐くん?」
「いただきます」
「いやぁ〜〜〜!!!!!!」
その日、芭唐が部活に行くことはありませんでした。その代わり、屋上では甘い時間が流れていたそうです。
そして今日も立ち上る、白い煙。
華月美波様のバースディ記念ドリームです。華月さま、本当におめでとうございます!
花月
