何百年経とうが











世界がどれほど変わろうが











君との居場所が違おうが











そんなの関係ない











これほど俺は











君が好き





































































数百年の時を越えて







































































北の廃墟から東へ少し行ったところに、小さな丘がある。結人はよくそこで暇な時間をもてあましていた。

今日も非番、というか仕事がない。一馬や英士、潤慶たちは戦闘部署の仕事をもらって出払っているから、久しぶりに一人になる時間ができてしまった。

昼間でも暗く、月が浮かんでいるこの世界で、この丘に1度だけ光が射したのを結人は知っていた。

それは何百年に1度あるかないかの貴重な現象で、それを見て以来結人はこの場所が大好きだった。

誰に話しても信用してくれないが、それでも確かに見た。雲間から一筋の光が舞い降りたところを。

「もう一回なんねぇかなー」

丘の廃れた草の上に寝転がりながら上を見る。それでもはやり暗く、月がただ浮かんでいるだけ。

つまんない、といったように顔をしかめて起き上がる。周りを見れば瓦礫ばっかり。草も花もみんな廃れてしまった。

悲しい世界だ、と結人は思う。もしなんて言葉好きじゃないけど、もしDispar of nightmareが起こっていなかったらこの世界はどうなっていたんだろう。

前みたいに、にぎやかな場所のまま・・・。

「あーもー!!何考えてんだよ、俺は!こんな世界つぶすことが目的だろうがー!」

頭をかきむしりながら、結人が大声で叫ぶとその声は静かな丘に響いて消えた。なにやら急に切なくなって、しばらくボーっとする。

なにやってんだろ、俺。なんか調子狂うなぁ・・・。

「帰ろ」

そう言って立ち上がろうとしたとき、かすかな足音が聞こえてきた。昔からの癖で、瞬時に身をかがめていつでも動ける体制をとる。

足音はこの丘にだんだん近づいてきているようだった。枯れた草を踏む音が聞こえる。

そして、足音が止まると同時に結人はその人物を見ることができた。白月の姫、

「あ!?」

「え!?」

しまった、と思ったときにはもう遅かった。を見て驚いた結人が声をあげてしまったため、せっかく隠れていたのにが気付いてしまったのだ。

は枯れた花を大量に持っていた。そしてそのまま固まっている。

「結人?」

?」

互いの名を呼び合ってその存在を確認すると、どちらもあせりと緊張が溢れてきた。

B・TとW・M。しかも相手は白月の姫。普段なら戦いの場以外で顔を合わせることなど皆無だ。

それがこんな辺鄙なところで出会ってしまった。どう対処すべきか、結人の頭は爆発寸前だった。

「えっと・・・ここで何してんの?」

お互い黙っていると、が先に声をかけてくる。結人は散々迷ったあと、戦うことを止めた。ここではやりたくないし、第一相手は白月の姫。いや、だ。

絶対に戦いたくない相手。

こそ、何やってんだ?枯れた花なんか摘んで」

「あぁこれ?ちょっとね」

嬉しそうに笑うに、ガラにもなく赤くなってしまった。結人はまた丘の上に腰を下ろす。

「結人は何やってたの?」

「俺?俺はただ暇してただけ。こっち座る?」

「うん、じゃあお言葉に甘えて」

丘の上に咲く、枯れた花を踏まないように気をつけながらは結人の隣にちょこんと座った。

いい香りがする。花のにおい。さすが前世は花屋だな、なんて思ってみた。

「この前、Dispar of nightmareのこと聞いたよ」

「うん」

「大変、だったね・・・」

「そんなことねぇよ。俺らが起こしたわけなんだし」

「だけど・・・心苦しくない?」

「え?」

「瓦礫の山を見ている結人、なんか寂しそうだったから」

はっとした。自分ではそんなことないと思っていたけど、そんな顔していたなんて。

確かに少し悲しい気分になることはあった。だけどそれは自業自得として、むしろB・Tとしては喜ばなくちゃいけないこと。

誰にもいえなかった本当の思いを、は感じ取ってくれていた。

「大丈夫。だって俺、B・Tだし」

「そっか・・・でもなんか違うような気がする」

自分で無理やり納得して、は困ったような笑顔を見せた。

数百年前と全く変わっていない。たとえ前世とはいえ、一馬から聞かされていた通りの女性だ。

ずっと想い続けてきた人。その人が今、白月の姫として自分の横に座っている。不思議な感じがした。

「結人はここが好きなの?」

「え、まぁな。ここすっげーんだぜ!・・・ってやっぱりいいや」

「なんで?話してよ」

「だってぜってー信じないもん」

「私は信じるよ」

そうか、きっとなら・・。結人は照れくさそうに頬をかいて、話し始めた。

「ここさ、一度だけ雲間から光が射したことがあるんだ」

「ホント!?」

「そう!もうすっごかったんだぜ!パァーって光って!」

「すごいね!へぇ、だからここ好きなんだ?」

「あぁ、すっごく好き」

楽しかった。になら何を話しても大丈夫な気がする。光が射したことも、やっぱり信じてくれた。

今なら数百年前から変わらないこの気持ち、伝えても平気な気がした。

一馬には悪いけど・・・・やっぱり俺は、が好きだ。

・・・」

「なに?」

「あのさ、俺・・・」













「「が好きなんだ」」













と声が重なる。あっけにとられてしまっている結人とは反対に、は赤くなりながらも嬉しそうに笑っている。もしかして、知っていた?

「知ってたよ。なんか・・ずっと前から?」

「なんだよそれ、変なのー」

「運命ってやつ?」

「わかんねぇけど、俺すっごい惨め。緊張して損した」

「お生憎様v」

はまた楽しそうに笑った。この笑顔が大好きでしょうがない。結人は顔が熱くなるのを感じた。

「それで、返事は?」

「私も前からあなたが好きよ?」

また言葉を失う。思ってみない反応。だっての前世は一馬の恋人だろ?

おいおい神様。あんたそんなんでいいのか?一馬が哀れでなんねぇよ。

気持ちとは裏腹に、結人の顔は嬉しそうだった。数百年胸にしまっていた想いが今、ようやく報われた。

「あ、結人!ホラ!」

「うわぁ・・・!」

が指差した空から、一筋の光が射してきた。これは紛れもなく、前にも見たことのある光。

「いいことが2つも同時に起きたな」

「ううん、三つだよ」

「あとひとつは?」

「ホラ、これ」

の持っていた花たちは、すっかり元気に咲き誇っていた。あの枯れていた花がこんなになるなんて。

どれも数百年前に見た光景ばかりだった。懐かしさがこみ上げる。



「なに」

「ありがとな!」

「こちらこそ、ありがとう」

こうして2人は笑いあった。







B・TだろうがW・Mだろうが







数百年経とうが関係ない






俺はただのことが







好きで好きでしょうがないだけ













リクエスト企画にご参加くださった南紗友里さまに捧げます。駄文で申し訳ありません;;

花月