つまらない授業
くだらない内容
こんな時間を
有効活用しない手はないでしょう?
手紙
私にとって学校とは、友達としゃべるための場所。
そして、私にとって授業とは、隣の人――つまり真田一馬としゃべるための時間なのでありました。
「えーつまり、このXをYに代入して―――」
頭の風通しが良すぎる数学教師の呪文のような言葉を聞き流しながら、私は隣にいる一馬に手紙を書く。
一馬とは1年の時からの付き合い。真っ赤になりながら告白してきたときに姿は、今でも眼に焼きついている。
偶然同じクラスになって、偶然隣の席になったときは、二人とも神様というものの存在を感じた。そして、そんな状況の中、わざわざ知りたくもないことを知ろうとするほどいい子でもないわけで。
案の定、私はいつもこうして一馬に手紙を書いている。そしてそれはもはや日常。当たり前のこと。
一馬も数学の授業が眠いのか、あくびをかみ殺していた。
―――よし、できた。
一馬の腕をシャーペン(芯の出てるほう)でつつく。
無防備な顔でふっと私の方を向いた瞬間、その顔に手紙を叩きつけてみた。
「痛って・・・!!」
「くくくっ・・・間抜け面!」
「うっせ!がやってきたんだろうが!」
「そこ!静かにしろ!」
「「すみませーん」」
全く反省の色を見せずに、私たちはまた黒板の方を向く。一馬は私の渡した(あ、シャレじゃないよ?)手紙を開く。
しばらく横目で見ていると、私の手紙に返事を書いてくれてるみたいだった。そして今度は私の机の上に投げてよこす。
もうちょっと丁寧に渡せないのかな・・・って人のこと言えないけど。
ガサゴソと静かに手紙を開くと、私の書いた文の下に丁寧な字で返事が書かれていた。
『今度映画見に行こう』これは私が書いた文。
『いいぜ。何見にいくんだ?』
何を?うーん・・・最近のデートはショッピングが多いからたまには気分を変えて映画でもと思ったけど、肝心なこと忘れてた。何見ようかなぁ。
『何がみたい?』
また一馬の机の上に放り投げると、少し嫌そうな顔をした。しょうがないじゃん、堂々と渡せないんだから。
私の手紙に驚いた表情を見せ、そのあとすぐに一馬はまた文字を書き連ねた。
『が誘ったんだから、が決めろよ』
そんなこと言われてもねぇ・・・。ホラー系はあんまり好きじゃないし、アクションだと興奮してその夜眠れないしなぁ。
『バラエティー系がいい!一馬は?』
ぽん、と今度は丁寧においてみた。
一馬はしばらく考えこんだあと、にやっと笑ってなにやら書き始めた。その笑顔たるや、某有名サッカー部のエロタレ目先輩みたいな笑顔だった。
ヘタレかじゅまにしては珍しい。
『ホラー系がいい』
んのやろ・・・・!知ってるし!知っててわざとやってるんだ!
「わざと言ってるでしょ!ホラー嫌いなの知ってて!」
「当たり前だろ」
「そこ!静かにしろ!」
「「ごめんなさーい」」
またあのハゲを怒らせてしまった。ま、別に怖くないけどさ。
私はまた手紙を見ながら考え込む。ホラーは却下(当然だよね)として、バラエティー系はなんかやってたっけ?
あ、すっごくいいのがあるじゃん!最近公開した映画!でももう一つ見たいのがあるんだよね・・・。
『バラエティーと恋愛系どっちがいい?』
男の人って、大抵恋愛映画見ると寝るんだよね。でも、この前一馬と見た恋愛映画は私より真剣に見てたし。ってかちょっと眼が潤んでた気もする。
ホント、乙女チックなんだからv
あ、一馬からの返事が返ってきた。このスリルがたまんないんだよねぇ♪
『バラエティー系がいい』
やっぱりそうくるか。じゃああの映画にしよう。THE有頂天○テル。ビデオ出る前に一回は見たかったんだよね〜。
よし、決定。と、次は時間を決めて・・・。『何時ごろがいい?』よし、これで後は渡すだけだ。
一馬は黒板の文字をノートに写してる。相変わらず律儀なことで。そんな一馬に私から愛の手紙を渡そうとしたその時。手紙は第3者の手によって取り上げられた。
二人ともびっくりして上を見上げる。そこには頭の風(以下略)数学教師の姿。
「、真田。コレはなんだ?」
「「手紙です」」
素直に答えたつもりなのに、なぜか数学教師は怒りマークを頭に浮かび上がらせた。
そして言った言葉はたった一つ。
「立ってなさい」
In廊下。結局こうなるよね、と私たちは並んで廊下に立っていた。
「の所為だぞ、渡し方が下手だから」
「人の所為にしないでよ。一馬の取り方が悪かったんでしょ?」
「まぁこっちの方が話やすいけどな」
「そだねv」
こうして私たちは懲りずにデートの予定を決めた。
一馬と一緒の廊下なら、全然辛くない。むしろ楽しいおしゃべりの場所。
授業中の手紙回しって楽しいですよね。スリリングで♪
花月
