どんなに冷たく接していても
どんなに興味がなさそうに見えても
本当の俺は
ずっと君を
愛している
天体観測
今日も綺麗な冬の星空。タクはそんな中、ある一人の少女を待っていた。
「自分から呼び出したくせに・・」
時計を見ると、もう8時を回っている。待ち合わせは7時30分。30分以上この寒い公園で待たされていた。
もうしばらくして来なかったら帰ろうかと考えていたとき、聞きなれた声が後ろから聞こえてくる。
「タクー!!」
振り返ると案の定、そこには彼女のの姿。武蔵森の制服を着ているから、どうやら学校帰りのようだ。
「お待たせ!ホント、ゴメン!!!」
顔の前でパンと手を合わせ、片目を瞑る。は謝るとき、いつもこういうスタイルをとっていた。
もう慣れたといったように、ふぅとため息をついてタクはいいよ、と小さく呟いた。
「ほら、もうすぐ創立記念日でしょ?だから準備に終われてて」
「女子部は何かやるんだっけ」
「うん、部活単位でね。私の部は屋台開くからちょっと忙しいんだぁ」
「そう」
さして興味もなさそうにタクはベンチに腰掛けた。もちょっと戸惑ったあとに、隣へ座る。
「これ、遅れたお詫び。新作いわしジュース!」
「・・・・・ありがと」
いったいこんなものがどこで売られていたのか知らないが、とりあえず受け取っておく。飲む、飲まないは別として。
「それで、いきなり呼び出してどうしたの?」
「え?別に用はないんだけどね。ただタクに会いたくなってv」
にっこりと笑ってタクを見つめる。しばらくその笑顔を見たあとにタクはポケットに手を入れ、立ち上がった。
「帰る」
「えぇ!?ちょ、ちょっと待って!なんで!?」
「なんでって、なにも用ないんでしょ?」
「わかった!用ある!あるから帰らないで!」
必死に袖を引っ張る姿がちょっと面白くて、タクは笑いをこらえつつまたため息をつく。そしてトスン、とまたベンチに座った。それを見て、もほっとする。
とは言ったものの、実は本当に用事などなく、ただタクに会いたかっただけなのに、急に用事を作れといわれても何をしていいのかわからない。
えーっと、どうしよ。あ、そうだ!
「タク、はいコレ!」
「なにコレ」
「創立記念日の屋台の割引券。ホントは明日配布なんだけど、タクは特別ってことで」
「ありがと。用事ってこれだけ?」
まずい。タクはもう帰ろうとしている。にもそれは充分わかった。
どうするべきか。あぁそうか。簡単なこと。今は夜。この空を見れば・・・。
「タク!天体観測しよ!」
「天体観測?」
につられて上を見上げれば、そこにはところ狭しと散りばめられた星たち。
さすがのタクも言葉を失った。あまりにも綺麗な星空。これなら、どれだけに待たされても全然苛立ちはしないと思った。
ふと、隣の彼女が気になって横を見る。そこにはにこやかな顔で空を見上げるがいた。
変なジュース買ってきたり、用もないのに呼び出したり、30分も遅れてくる。そんな彼女だけど、やっぱり自分はこのという少女が・・・。
「、帰ろう」
「え!?ちょっと待って、えーっと・・・」
タクを引きとめようとまた次の用事を考え込んでいるに、タクはふっと吹き出した。
その様子を見て、へ?といった顔をする。タクはポケットから手を取出して、の冷えた手を握った。
「ここじゃなくても、天体観測できるだろ?」
「あ・・・うん!!」
嬉しそうな声とともに、が腕を絡めてきた。歩きにくいなんて思ったけど、それでも腕を解かないのは、やはり心地いいと思っている自分がいるから。
いつからこんなに好きになってしまったんだろう。
前まではこんなこと、絶対にありえなかったのに。
時の流れか、それともこうなる運命だったのか。
に聞いたら絶対に運命だっていうんだろうけど、俺は・・・。うん、俺も運命だと信じたい。
冬の星空。このすばらしい景色を見せてくれたに
俺は感謝すべきだろう。
リクエスト企画にご参加いただいた翠さまにささげます。甘い・・・ですか?ご要望に添えましたでしょうか。本当に駄文ですみません;
花月
