人一倍責任感が強くて
誰よりも自分に厳しくて
さりげない優しさをもっている
そんなあなたが
大好きなの
優しい気持ち
部活も終わり、もうすぐ昇降口がしまるころ。人気の少なくなった学校の廊下をカズは歩いていた。
この時間に校舎へ入る人などめったにいない。しかし、彼はある人物を探し回っている最中だった。
「ったく、どこ行ったんやは」
ポケットに手を入れながら一つ一つの教室を確認していく。そして、やっと見つけたカズの最愛の人はカズのクラス、しかもカズの席に座って健やかな寝息を立てていた。
「部活が終わるまで昇降口で待っとる言うたんはお前やろ・・・」
呆れた声を出してはいるが、その顔はとても優しいものだった。静かにの髪をなでる。
「ん・・・アレ?カズ?」
はまだ眠そうな目を擦りながら傍らに立つカズを見上げた。さらさらの黒髪が輪郭にそって流れる。
「部活終わったとぜ。待たせて悪か」
「ううん、大丈夫だよ」
う〜んと伸びをしてにっこり笑うと、カズの机にコツンと額をつけた。
「なして昇降口におらんかったと?」
「あそこじゃ見えないんだもん」
「何がね?」
額はまだ机につけたまま、顔だけカズに向き直ると楽しそうに微笑んだ。
「GK功刀一が」
そう言うと、は身体を起こしてまたカズを見上げる。
つまり、上目遣いの状態になったにカズの顔は一気に赤く染まった。
「どうしたの?顔赤いよ。熱?」
立ち上がり、カズの額に手を当てる。心配そうなの顔がますます近くなる。
「な、なんでもなか!ホラ、帰るとよ///」
「????」
なんでそんなに慌てているのかわからないは、小首をかしげながらもカズの後に続いて教室を出た。
いつもはにぎやかなこの廊下も、今では二人しか歩いていない。まるで専用の通路みたいだ。
カズの隣を歩いていたにすっと手を差し伸べる。一瞬驚いただったが、すぐにうれしそうな笑顔を浮かべて手をとった。
「さっきね、教室の窓からずっと見てたんだよ」
しっかりと前を見ながら恥ずかしそうにつぶやく。は続けた。
「そういえば、一番初めにカズを知ったのも、あの教室だったんだよね」
「そうなん?」
「そうだよ。知らなかった?」
首を縦に振るカズ。おかしそうにくすくす笑った。その笑顔にもまた愛しさを感じる。
「放課後、友達待ってるときに偶然あの教室にいたの。そしたら、すごく威勢のいい声が聞こえてきてね。窓の外を見てみたら、カズが泥まみれになりながら必死にゴールを守ってたの」
迷彩帽をかぶったカズはとっても輝いて見えた。ボールを必死に追いかけて、決して入れさせないという気迫が感じられて。
FWが放つこん身のシュートを受け止めた後のカズは、すごく嬉しそうな顔してた。だけど、すぐになんでもなかったみたいにボールを戻す姿がとっても可愛くて。
「それからすごく気になってたんだよ?」
気付いてた?とはまたカズを見上げる。
驚いた、というかすごく嬉しかった。そんなに前からが自分のことを見てくれていたなんて知らなかったから。
という少女はこういう人なんだ。相手をよく見ている。自分の気付かない仕草まで、しっかりと見つめて理解してくれる。
全てを受け止めてくれる。
「俺はのそげんところに惚れたんやろうな・・・」
「え?」
ボソっとつぶやいたカズの言葉を、は上手く聞き取れていなかった。なに?ともう一度たずねる。
「は人のこと、ちゃんと見て一つずつ理解しとう。そげん優しかところに俺は惹かれたんや」
誰に対してもそうだった。彼女はすごく優しくて、人を救ってくれる。
だけど、本人はまったくそれに気付いていない。だから、おごり高ぶることがなかった。
「絶対に手放したりはせん。は俺だけのもんやけん」
カズは急に立ち止まり、の正面に向き直る。そして、そのままを抱きしめた。
「、好いとーと」
の耳元で静かにささやく。それを聞いてもカズの背中に腕を回した。
「私も大好きだよ、カズ――」
二人は無言で見つめあうと、どちらからともなくキスをした。
西日の射す廊下で、時が止まったかのように、二人はいつまでも傍にいた。
優しい想いを抱きながら―――
いつも俺を見てくれて
いつも傍にいてくれる
そんな優しい君が
心のそこから好きなんだ
キリ番600を踏んでくださった阿弥若様にささげます。カズドリームです。
お楽しみいただけましたか?せっかくリクエストいただいたのに、駄文すぎてすみません(滝汗
ちゃんと期待に沿えたかがものすごく心配です。本当にすみません;もっとがんばります;
花月
