白く冷たい雪











それは全てを覆いつくし











全てを白く染め











世界を変えてくれる





















































































雪の降る午後


























































































人は雪に対して二つの感情を持ち合わせていると思う。

一つは白く静かに舞い降りてくるその美しさに心を奪われる感情。

そしてもう一つは、冷たく寒い雪の特徴を嫌がる感情。

俺はどちらかといえば前者の感情のほうが強い。深々と降り続く雪を見ていると、なぜか心が落ち着いた。

今日は朝から雪が降っている。東京の初雪はもう少し前にあったそうだが、それは夜中だったから、降っているところを見るのは、今日が始めてだ。

どうりで寒いと思った。天気予報でも言ってたから、今日は少しわくわくしながら朝のカーテンを開けた。

思った通り降っていて無意識のうちに口元が緩んだ。そしてそのまましばらく雪を眺めていた。



(このまま一日が終わるのも悪くないかもな・・・)



そんなことを思いながら、ゆったりとした午前中は過ぎる。

昼飯を食べ終えてまた部屋へ戻って、ゆっくりと舞い落ちる雪を見ていたらその情緒を一瞬にして壊す声が聞こえてきた。



「かーずまー!!!!!」



確認しなくても誰かなんてすぐわかる。こんな雪の中、わざわざ俺のところまで来る奴なんて一人しかいない。

俺はふっとため息を漏らしたあと、少し笑った。本当にあいつは昔から変わんねぇな。

冷たい窓を開けると、白銀の世界に彼女は立っていた。厚手のコートを羽織って、頭にはふわふわとした帽子をかぶり、満面の笑顔を俺に向けている。

俺の彼女、。昔からの幼馴染でもある。



「今まで寝てたのー?」

「んなわけあるかよ。こそ、こんな日に何してんだ?」

「初雪記念で遊ぼうと思って!」



思った通り、は遊び心むき出しでそう言った。普通の人の誘いなら、寒いからという理由で断るけど、の頼みとあったなら断る理由はなにもない。



「今行くから」



そう言って窓を閉め、すぐに着替えた。のことだからきっと街のほうには行かないだろう。俺は手ぶらで外へ飛び出す。

玄関の前には、頬を赤く染めたが笑顔で立っていた。本当にはこういう日が大好きだ。



「早く遊びにいこ!雪が溶ける前に!」

「こんなに降ってたら2、3日は溶けねぇよ」



半ば呆れつつも、俺はの細い腕を受け入れる。かわいいと思ってしまう俺は、もう重症だ。

と向かったのは、近所の公園。子どものころ、よく遊んだ場所だった。

雪の日の午後に遊んでいる子どももいないから、公園は足跡もなく、綺麗なもんだった。俺ももしばらく言葉を失う。

そのうち、が片足を大きく上げて、積もった雪の上にすばやくおろした。続けて反対の足も。こうしてゆっくり、どんどん進んでいく。



「見て見て一馬!足跡!」



足跡ごときで何がそんなに楽しいのかわからなかったけど、とりあえずそうやってはしゃいでいるは可愛いと思った。

俺もに続いて白い世界へと足を踏み入れる。意外にも深かった。

転びそうになりながらの後を追っていると、不意にが俺のほうへ振り返ってきた。

それと同時に野球のボールぐらいの雪玉が俺の顔面にクリーンヒットする。



「アハハハ!!ダメだよ、サッカー選手がこれくらいよけられなきゃ!」

「サッカー選手関係ねぇだろ!ってか、冷てぇ!!」



痛みを伴うほど俺の頬は一瞬にして冷え切った。手袋をはめた手で両頬を押さえるけど、全然効果はなかった。

ちくしょう、こうなったら俺だって反撃してやる!

後ろを向いているに向かって、少し大きめの雪玉を投げつけた。するとは近くに落ちていた木の棒を使い、雪玉を真っ二つに切り壊す。



「へへーん♪あまいね、一馬v」

「っくしょ・・・!」



いつもには勝てなかった。それが俺達の関係。でもそれも悪くないと思う。

お互いに笑いあって、距離を縮める。そして並んで俺達が歩いてきた道を振り返った。

何もない真っ白な道に、俺達二人だけの足跡がついている。綺麗に、並んで。



「ねぇ、一馬」

「ん?」

「こういう人生、いいかもね」

「こういうって?」

「この足跡みたいに、並んで歩けたらいいよね」



足跡を見つめるの横顔は、それはそれは綺麗で、可愛くて、俺はその場でを抱きしめた。

俺もそう思うよ。ずっと二人で、並んで歩けたらどれだけ幸せなことだろう。



「並んで歩けるよ、いつまでも」

「そうだね、一馬」



雪の降る中、俺達はどちらからともなくキスをした。冷たかった唇が、温かくなる。

を抱きしめるぬくもりを、俺はいつも忘れはしない。たとえそれが雪にかき消されそうになっても、俺は何度でものぬくもりを思い続ける。

大好きで大好きでたまらない。これが愛しいっていう感情なんだと思う。



「今日の一馬は積極的だねv」

「なっ・・!!んなことねぇよ!///」



いつの間にかに寒さは消えていた。俺の中に残ったのは、とてつもなく大きな愛しさだけ。

これからもずっと、俺はを愛していく。










雪の降る午後、俺はそう誓った。

















初雪(厳密に言うと違うんですけど)記念に書いてみました。snowと同じようなネタ・・・;またもやかっこいい一馬を目指して、玉砕(泣)