W・S
















それは白く輝く宝石のごとく
















我らを導き
















そして高めてくれるであろう
















夢の石














































































黒い涙白い月

























































































私と、光宏と昭栄とカズさん。そして黒川くんの6人はとりあえず「森」と呼ばれているところに向かっていた。

なんでも西園寺さんからいくつか命令がくだされているらしく、その一つが必ず森を通れとのことだそうだ。

森はW・Mからすぐ近くにあるらしいので、黒川くんの瞬間移動を使わなくても大丈夫。その間、西園寺さんから下った命を読み上げることにした。

「一つ、道中での戦闘は基本的にのみで行うこと。ただし、B・Tとの戦闘はこれの限りにあらず。どげん意味かわからんと」

「つまり、B・Tのやつ以外との戦いには手を出すなってこと」

昭栄の質問に光宏がサラリと答えた。そして次の文も読み上げる。

「一つ、森を抜けたら、必ず瞬間移動を使うこと。1週間過ぎても見つからない場合、速やかに戻ってくるように」

「一週間もいらないわよ!ね、

「そうだね。早く戻らないとみんなのトレーニングもできないし」

「そういえば、みんなトレーニングはやらなくていいわけ?」

の質問に、それぞれは自信たっぷりの表情で頷いた。

「俺はトーナメントのときは戦ってないからな。それに自分で好きにやってるし」

「毎日走りこんでるから、俺も大丈夫だよ」

「俺はカズさんと組み手しとるばい、安心や!」

「そういうことやな」

へぇ、みんなけっこう自分なりにトレーニングしてるんだ。でもやっぱり、もうすぐゲリラ戦なのに私たちの護衛なんかしてちゃ体がなまっちゃうよね。これは半分私たちのトレーニングなんだし。

早く見つけて帰らないと。W・S。新しい武器になるといいなぁ。

「おっと。ついたぜ」

黒川くんが止まり、後ろからついてきていた私たちも足を止める。

目の前に広がるのはいかにも魔物の森って感じの樹海。うっそうと生い茂った木々、不気味に鳴くカラス、生ぬるい風。全てが私たちを迎えてくれているみたいだった。いろんな意味で。

「それじゃあ俺達は森の出口で待ってるからな」

「え!?一緒に来てくれないの?」

「大丈夫だよ、。この森は一本道だし、それに俺達は手伝えないからさ」

にっこり笑って光宏はそう言う。そして黒川くんの書いた円の中に入って、手を振った。

「がんばれよ〜2人とも〜!」

シュ!という音と共に4人の姿は消えてしまった。残された私とでしばらく呆然と立ち尽くす。怖いのに、こんな怖い森に入れるなんて・・・。

しょうがない。覚悟を決めて入りますか!

、行こう!」

「はいよ!」

ぎゅっと互いに手を握り締めて、森へと一歩踏み出す。うわぁ〜やっぱり怖い・・・。

音がするたびそっちのほうへ身構える私たち。は自分の武器である如意棒をすでに用意している。私も準備したいけど、生憎使い方がわからない。

どうすればいいのよ〜この状況!

と、そのとき。私たちは同時に足を止めた。

・・・この音なに?」

「わ、私も思った・・」

ドドドド・・・という地響きにも似たこの音。どうやらこっちへ近づいてきているようだ。だんだんと大きくなるその音に、私たちは背中を合わせ身構える。こうなったら私も武術で迎え撃ってやるわよ!

音は最高潮に達し、巨大な木の陰から無数の動物が現れる。小動物から大きなものまでたくさんいたけど、みんなに共通していることは目が赤いということだった。

「みんな、寝不足?」

「冗談言ってる場合じゃないって、!こいつら、私たちを襲う気満々じゃない」

「それなら受けてたとうじゃないの。ね、v」

「そうだね、v」

私たちはふっと笑みを浮かべて、同時に動物達へと飛び掛っていった。

動物たちも私たちに牙を向いてくる。ごめんね、正常ならこんなことしたくないんだけど、なにせ襲う気満々な奴らに黙ってやられてやるほど、心が広くないのよ。

は如意棒を駆使して、動物達を次々と倒していく。

「あーもーめんどくさいなぁ!炎王!」

がそう叫ぶと、如意棒全体が炎に包まれた。そしてそれを一振りすれば、動物たちに火の粉が降り注ぎ、一掃することができた。

「すっごーい!どうやったの、今の!」

「自分でもよくわかんない!けど、人の心配してる余裕ないかもよー!」

「わかってるって!」

私も武術で対抗してきたけど、どうにも手が終えなくなってきた。使い方さえわかればこっちのもんなのに。

そうか、わかった気がする。動いてダメなら止まってみればいいのかも!

私は動物たちに囚われるとことなく、その場に立ち止まった。目を閉じ、静かに武器へと神経を集中させる。






−いでよ、剣!!−






ブレスレットは四方にまぶしい光をもたらした。私ですら目を閉じなければならないほどの光。そして目を開けたとき、私の手には白いロングソードが握られていた。

「で、できた・・・!」

ー!ボーっとしてないで、早くやっつけちゃおうよー!」

あぁ、そうだった。武器を使えた感動でちょっとフリーズしてたよ。

私は剣を構えて、動物達を切り刻んでいく。剣道の腕は確かだからね。お生憎様。

そして数十分後。私たちの足元に広がるのは、動物の成れの果てのみ。は如意棒を、私はロングソード。いや、ブレスレットをそれぞれしまって先へと進む。

「あの子たち、かなり強かったね。動物の力じゃありえない」

「たぶん操られてたとおもう。倒したから、もう大丈夫だよ」

きっとこの森もB・Tによってこんな風になっちゃったんだと思う。早くB・Tを倒さないと、この森にも黒涙が根付いちゃう。私の、お母さんも・・・。

、まだ落ち込むのは早いんだからね?」

・・・」

が本当に落ち込むときは、最悪の事態になったときだけ。それ以外はだめ!」

「うん、わかった」

お互いににっこりと笑いあって、歩いていく。遠くのほうに光が見えた。その光は、まさしく出口のものだった。

「お帰り、2人とも」

「大丈夫やったか?」

光宏とカズさんが迎えてくれた。黒川くんと昭栄は、遠くのほうで組み手をやってる。みんなB・Tとの戦いに余念がない。

「で、武器は使いこなせたのか?」

「もうばっちりよ!もね」

「私はまだ完全じゃないけど、まぁなんとかなりそう」

「よかった。安心したと」

2人とも心底安心したって顔をして、息を吐いた。心配してくれてたんだと思う。なんか嬉しいなぁ。

黒川くんと昭栄を呼んで、次の場所へと移動する。また黒川くんが描いた円の中に入った。今度は6人だから、ちょっと狭い。

「まずどこから探す?」

「あ!ヘッドからの命令に『南方も探してほしい』て書いてあるとよ!」

「じゃあまずはそこだな」

黒川くんは目を閉じ、静かに何かを唱える。すると、私たちを真っ白な光が包み込んだ。



















































































目を開けると、瓦礫の山の中央に立っていた。ひどい、こんな状態になるまでにいったい何があったんだろう。

誰も口を開かなかった。それほどまでに、この場所は廃れていた。

「光宏、ここで・・何があったの?」

光宏は手をぐっと握り、静かに答えた。

「内乱だよ・・・。南方内乱。この世界でDispar of nightmareに次ぐ大惨事だ」

Dispar of nightmareに次ぐ大惨事・・・。内乱ってことは、国の中で戦いがあったってこと。

こんなになるには、相当な数の人が・・。

「なにしてる」

突然、上の方から低い声が聞こえてきた。全員が戦闘態勢になり、見上げるとそこには不適な笑みを浮かべる三上亮の姿があった。

「こんなところで会えるとはな。びっくりだ」

「お前、そこで何してんだ・・!」

黒川くんがそう言うと、三上はまたふっと笑みをこぼす。

「お前らには関係ねぇだろ。お前らこそ何してんだ。B・Tの落ちこぼれまで連れて」

カズさんのことを言っているんだと、すぐにわかった。カズさんはぎりっと唇を噛む。考えてみればコイツが原因でカズさんは大怪我をしたんだ。うらまないはずがない。

もしかして、こいつが来たのはカズさんを始末するため・・・・?

「カズさんは落ちこぼれやなか!立派なW・Mの一員たい!」

「はっ!すばらしい友情だな。涙が出るぜ、くだらなすぎて」

「くだらないってどういうことだよ」

昭栄に続いて、光宏も声をあげる。それでも三上は相変わらずいやらしい笑みを浮かべたまま、瓦礫の頂上に腰掛けていた。

B・T一の古株。その実力は、トーナメントで私もも実感している。まして、長年戦ってきたこの4人ならなおさら知っているはず。

冷や汗が、頬を伝った。

「まぁいい。お前らとここであったのも何かの縁だ。一ついいことを教えてやるよ」

三上はすっと立ち上がり、ポケットに手を入れて私たちを見下ろした。

「ここにお前らの探してるもんはねぇよ。さっさと立ち去りな」

「なっ!なんで知ってるのよ!」

がみんなの思っていることを代弁してくれた。B・Tには知られてないはず。なんでW・Sのことをこいつが知ってるの!?

「俺らの情報網を甘く見るなよ。わかったら、早くここから消えろ。ここはお前らみたいな奴が来ていい場所じゃねぇんだよ」

あれ?今の顔・・・。

三上は笑いながら姿を消した。残された私たちから安堵の息が漏れる。よかった、戦闘にならなくて。

でも私には、何かひっかかっていた。あの顔は、まるで・・・。

、早く来い」

黒川くんの声で我に帰ると、もうみんな円の中に入っていた。本当にもう行っちゃうの?

「三上って人の言うこと信じるの?」

「あぁ。確かにここにはなさそうだし」

光宏の言葉で自分を無理やり納得させ、次の場所へと移る。白い光が開けたとき、次に見えたのは遺跡らしきところだった。

「遺跡・・・」

「ここが、そのブレスレットを見つけた遺跡だ」

黒川くんが説明してくれた。ここ、なんでか懐かしい。しばらくあたりを見回していると、右手につけていたブレスレットが突如光りだした。

「なにこれ!?」

、あれみて!」

が指差したほうに、もう一つの光が宿っている。それは私のブレスレットが発する光と同じものだった。

もしかして、あそこにW・Sが?

昭栄が足場の悪いところを駆け抜け、光のあるところの石をどける。すると、そこからは西園寺さんに見せてもらったあの白く輝く石が出てきた。

「これが・・・!」

「どうやら本物みたいね」

これがW・S。本当に美しい。でも、なんでこのブレスレットと反応したんだろう。もしかして、何か関係があるのかもしれない。

後で少し調べてみよう。あ、その前に。

「ねぇ、光宏」

「ん?なんだ?」

「あのさ、三上の能力ってなんなの?」

「あいつは瞬間的記憶力と驚異的記憶力だよ」

「驚異的、記憶力・・・。なにそれ」

「つまり、一度見たものは死ぬまで忘れないってこと」

「どんなことでも?」

「あぁ、たぶんな。でもそんなこと知ってどうするんだ?」

「あ、えっと・・・別になんでもないの」

一度見たものは忘れない、か・・・。わかった。三上が見せたあの表情の理由。

苦しそうな、つらそうな、なんとも言えないあの顔。それはきっと忘れたい記憶に苛まれたもの。

あの内乱があった場所。もしかすると、あそこが三上の育った土地なのかもしれない。

それなら、三上の持つ特殊能力。それはとても厄介なものだろう。

忘れたい記憶、彼の頭にはたくさんあるんだろうな。

私は目を閉じ、考えてみた。もし自分の街が燃えてしまうところを忘れられないのなら。

それはとても、悲しいこと。

耐え難いことだと思った。