なんかオカシイとは思ったんだよね。


初めて会ったはずの人なのに、その人の個人情報が頭に入ってくるんだもん。


そんなこと、ありえるはずがないのに。


やっぱりあたし、オカシクなっちゃったんだ…






























































黒い涙白い月











































































身体中の痛みに耐えかねて、私はぼやけた世界で目を開けた。

この天井どっかで見たことあるな…あ!そっかW・Mのビルの中か。

ってことは、また私はここに運ばれたんだ。そりゃあんだけ戦えば、気絶したくもなるよね。

それより、 だよ。大丈夫かな。怪我してたら大変だし。あんな可愛い顔に傷つけたらご両親に会わせる顔が無い。って私は のお婿サンかよ!!…やばい、一人でのりツッコミしちゃった;世も末だねぇ。

はぁ、だんだん虚しくなってきた。やめよ。とりあえず今は、 に会いたい。うん、それが第1だよね。

・・・・・やっぱり は――

「だぁ!!!もう!うっせー!!!少しは黙ってろ!!!」

隣りから振ってきた突然の大声に、私はバカな思考回路を停止した。

それと同時にはじめて近くに人がいたことを知る。

「けーすけ。あんまり大声だすなよ。怪我人なんだから」

光宏と昭栄が白いドアを開けて入ってきた。やっと見知ってる顔が現れて、内心ほっとする。

私は首の痛みを我慢しながら、なんとか横を向く。そこには泣いている昭栄と下を向く光宏の姿があった。

ぢゃ〜ん!!俺らが悪かっだと〜〜〜!!」

私が寝ているソファに勢い良く近づいてきた昭栄。なにが悪かったかなんて、思い当たる節がない。

「ちょ、ちょっと、昭栄!なんで泣いてるの!?」

それでも泣き続ける昭栄のかわりに、今度は光宏を見上げる。だが、彼の表情も浮かばないものだった。

「護衛の役を任されておきながら、 を守れなかった上に怪我までさせて…ホントに悪いと思ってる。ゴメンな……」

消えそうな声で言われた言葉に、私は涙が出そうだった。こんなにも私を心配してくれた人がいる。

こんなにも私のことを考えてくれた人がいる。それだけで、充分過ぎるほど嬉しかった。

「大丈夫だよ…光宏や昭栄の所為なんかじゃないから。今回のことは私が自分で戦ったことなんだから、そんなに気にしないでよ。ね?」

二人を交互に見まわして言うと、目が合った。私は力強く笑って見せた。二人を安心させるように。

心配かけてごめんね。心配してくれてありがとう――

「「/////」」

あれ?二人の顔が赤いけど…どうしたのかな。まぁ、いいか!納得してもらえたみたいだし。

それより私は、今嬉しくてしょうがないよ。

「よし。話しはまとまったみたいだな。」

けーすけと呼ばれた人が膝をパンと叩いて立ちあがる。

それにしてもかっこいい人だなァ…昭栄といい光宏といい椎名翼といいこのまえ現れた4人組といい有紀といい西園寺さんといい…特殊能力のある人はなんでこんなにも整った顔の人が多いんだろう。

平凡な自分が恥ずかしくなってくるよ(遠い目)

「お褒めに預かって光栄だな。あんたも充分きれいな顔してると思うけど?」

「はぁ、そりゃどうも…ってえぇ!?」

また私は顔に出てましたか!?そんなはっきり伝わるほど!?あぁ…こうやって一生読まれつづけていくんだ…悲しい…。

「違うよ。それが俺の能力」

「能力?」

、紹介が遅れたけど、こいつは山口圭介。俺達が西園寺さんに呼ばれてた間、ちょっと見てもらってたんだ。能力っていうのは人の心をよむ力。けーすけ、こっちが白月の姫。

「どーも」

「ども。じゃぁ、さっき怒鳴ったのは…」

「俺、まだこの力コントロールできねぇから、俺の意思とは関係無く近くに居る奴の心が入ってくるんだよ。だからつい…悪かったな」

ということは、あのバカバカな思想は全部この人に伝わってたわけか。あはは…恥ずかしい//

「そういうことだな。あと圭介でいいよ。他のやつらにもそう呼ばれてるし」

(この人の前では下手なこと考えないようにしよ…)「よろしくね、けーすけ!」

「だから読まれてるんだって…」(呆)

「はぅ!!」

「……なんかよくわかんないけど、打ち解けたみたいだな;」

苦笑いをしながら光宏が言う。そっか他の人には私達の会話の内容がわかんないんだ。昭栄もきょとんとしてる。

「じゃ、俺はこれで行くぜ」

「あぁ、サンキュー。助かった」

「いーよ。あ、忘れてた。

「? なに?」

っていうやつは、たぶん怒ってないよ」

「!!!!!!」

そう言い残し、けーすけは部屋から出ていった。昭栄がありがとっした!と礼をする。

そっか、さっきの全部聞いてたんだよね。 は怒ってないか心配してたあの思考回路。

彼なりに気を使ってくれたことがおのずと理解できた。結構いいとこあるじゃん


でも―――


でも、 はホントに怒ってないのかなァ…・





















































心配性だな、























































頭の中に突如流れこむ、懐かしい声。家族でも親戚でもましてや の声でもない。

とっても懐かしくて、暖かい声――

「!?お、おい !!どうしたんだ!?」

「えっ…・?」

知らぬまに、涙が頬を伝っていた。

「あ、えっと…」

一体如何したんだろう。なんで私は泣いてるの?

止まれ止まれとこらえてみたが、それでも涙は溢れ続ける。

ちゃん!!なしたと!?」

昭栄がまたうる目で近寄ってきた。大丈夫だよと笑おうとしても、それができない事に気がつく。

…小島、呼んでこようか?」

優しく聞いてくる光宏。おそらく、同姓の方が安心するだろうという配慮からだろう。

止まってくれない涙を両手で必死に拭いながら、私は小さく頷いた。

「わかった」

短く言うと、光宏は昭栄を連れて部屋を後にした。

ドアを出るところで昭栄が心配そうに目を見つめてくる。大丈夫?とその瞳が言っていた。

昭栄を安心させるように微笑む。よかった、今度はちゃんと笑えてる。





















































いっつも笑ってる が好きだ




















































再び入りこむ声。どこの誰かも分からない、私の思い違いかもしれないその声になぜだか私は無性にもこう思ってしまった。



会いたい―――と



コンコンとノックの音がして、有紀が入ってくる。

心なしか、目がはれているようにも見えた。

。目が覚めたのね。よかった…もう!あんな無茶するなんて、どういうことよ!!」

心配したんだからね!と言いながら彼女の白い手が私の肩を強くつかむ。その強い瞳に、心底感謝した。

「ゴメンね、有紀。心配かけて。でも、もう大丈夫だから」

ありがとうと小さく続ける。たまらなくなって、私が下を向くと有紀がのぞきこんできた。

?どうかしたの…?」

優しく語り掛けてくれる暖かさに、また涙が流れ出る。私はかすかに聞こえるくらいの小さな声で胸のうちをはきだした。

「私の・・所為、で、ひっく… 、が…危ない目に あった か、ら」

「もう、す、こし で怪我…させ、るとこ だった…・!!」

…怒って、る…よ もう、ともだ、ち じゃ、えっぐ…友達じゃ、なくなっちゃう…よ!」

途切れ途切れになった私の話しを、有紀は頷きながら聞いてくれた。

その間、ずっと背中をさすっててくれた。

これほどまでに、人の温もりがありがたいと思ったのは

初めてだった。

…」

「私ね、 にずいぶん救われたの。親友だって言ってもらえたとき、とっても嬉しかった。だから、絶対に失いたくないの…」

つらくてくじけそうなときだって、 はいつも隣にいて笑ってくれた。その笑顔にどれだけ自分が救われたことか。

大切なんだ。これほどまでに―――

、わたしには詳しい事はわかんない。だけど、 さんはそんな人なの?」

「え?」

「たった一回対峙したくらいで親友やめちゃうような、軽い人なの?」

は――」

「それに、今回のことは が悪いわけじゃないよ。その証拠に、 は一回も さんを攻撃してないでしょう?」

「…うん」

「それじゃ、大丈夫だよ。もっと信じてあげようよ、 さんを」

「有紀…ありがと」

そうだよね。 はそんな冷たい人じゃない。私達はそれだけの友情を築いたんだから。

信じよう、 を。私の大事な親友を。























































「あっ!おーい、渋沢ぁ!!」

ちょうど仮眠室からでてきた渋沢を発見して、俺はすかさず声をかける。

なんせあいつの能力は『治癒』だからな。早く のこと直してもらわねーと。

「日生か。どうだ、白月の姫の様子は」

「今、小島に見てもらってる。それより、もう一人の子、大丈夫か?」

「あぁ。精神的に少し疲れたみたいだが、肉体的な外傷はない。さっき意識を取り戻したところだ。」

それを聞いて安心する。これでその子がボロボロだったりしたら、 にあわせる顔がないもんな。

「高山はどうしたんだ?」

「昭栄なら風祭んとこだぜ。ヘッドの頼まれごと伝えにいったよ」

「頼まれごと?」

渋沢が小首をかしげる。

「あぁ。なんか、能力鑑定がどうとか…よくわかんねーけど」

「そうか。そういえば、 さんに会いにきたんだろ?あらかたの説明はしておいた」

「サンキュ。じゃ、 が落ち着いたら呼びにいくから。よろしくな」

「わかった」

渋沢は、片手を上げるとそのまま仮眠室を後にした。その後姿を見送って、俺は仮眠室へと入る。

白い大きなベッドの上には、 と同じくらい可愛い顔した女の子がいた。あぁ、この子が か。

「初めまして、俺は――」

「日生光宏」

「え?」

なんで名前知ってんだ?少なくとも俺はこの子に会うの初めてだし。渋沢が教えたとか?でも、顔まではさすがに教えてないよな。…?

「12月14日生まれ、A型。164cm、52kg。好きなものはうどんで嫌いなものは野菜。趣味は読書、特技は走ること。ちなみにタイムは5秒98」

「なんでそんなことまで…」

「え!いやぁ〜なんか、貴方にあったら自然と頭に流れてきたっていうか…」

開いた口が塞がらないとは、まさにこのことを言うんだな…って違う!!

頭に個人情報が入ってくる!?そんなことって、まさか。

なるほどね。だからヘッドは能力鑑定を頼んだのか。こりゃぁ、おもしろい♪

「それで、私になんの用ですか?」

「あっと、そうだった。実は――」

俺は近くにあったイスに腰掛け、少し小さめの声で言った。

けーすけと とのあの会話を。



















































有紀のいれてくれたホットミルクで疲れた身体を休める。

胸のうちに溜めておいた気持ちを全部吐き出したら、なんだかすっきりした。

「どう?少しは落ち着いた?」

「うん。だいぶ。ゴメンね有紀。ありがとう」

「どういたしましてv」

にっこり微笑む有紀はやっぱり綺麗で、まぶしかった。私もつられて少し微笑む。

、怪我してないかな」

「大丈夫よ。うちの医療班はそこら辺の医者よりよっぽど腕がいいから」

そっか、と私は再びカップに手をつける。そんなときだった。

ものすごい速さの足音が聞こえてきたのは。

まさか…いや、そんなはずはない。あってはいけない。冷たい汗が伝った。

〜〜!!!!!!!!!!!!!!!」

バタン!ドッシャン!カラカラカラ…

あまり聞きたくない効果音のほうへ目を向けると、そこには肩で息をしている とドアの近くにおいてあった花(昭栄がお見舞いに持ってきたもの)が見るも無残に倒されている光景が広がっていた。

…どうしてココヘ?」

あまりに驚きに、後半の言葉がカタコトになってしまった。ちなみに有紀は未だに瞬きをせずそこにいる。

「どうしてじゃない!!聞いたわよ?渋沢って人と日生って人から!あんた、そうとう無茶したんだって!?おまけにそんな大怪我までして!!」

今まで倒れてたと思われる人とはまるで思えないような強引さで私の方へ近づいてくる。

「ちょ、ちょっと サン?少し落ち着い…」

「これが落ち着いていられますか!!しかもあんた、あたしが怒ってるかって心配してたんでしょう!?」

「え、いやぁ、なんでそれを?」

「山口との会話を日生から聞いたのよ!全くあんたは!なんてくだらないこと心配してるわけ?」

「へ…・?」

思いも寄らないその台詞に思わず間抜けな声がでる。ということは…

「怒って…ないの?」

「何言ってんのよ!充分に怒ってるわ!もちろんあたしを巻き込んだことじゃない。あたしに話してくれなかったことによ!!」

呆然としていた私の肩が の両手によって包まれる。同じ目線になった の瞳は、とても優しかった。

がそんなことに巻き込まれてるんなら、そういってほしかったの。力になってあげたかった。なのに何もできなかった自分自身がとっても悔しいの」

目に涙を浮かべながら は笑う。とてもきれいな笑顔で。

「日生って人に があたしと親友に戻れないんじゃないかって心配してるって聞いたとき、正直愕然としたわよ。巻き込んで悪いって思ってるとも言ってた。もとから巻き込まれたつもりはないし、 との友情がこんなこととで崩れるなんて微塵も思ってなかったのに」

「あたしたちはなにがあっても親友よ。その証拠に は私を傷つけなかった。今までと同じようにね」

自然と涙が溢れた。あれだけ泣いたあとなのに、 の言ってくれた言葉が嬉しくて止めど無く雫が頬を伝う。

「まだ…親友って思ってもいいの?」

「あたり前でしょ?ホントに はしょうがないな」

そう言った は泣いている私をそっと抱きしめると背中をぽんぽんと叩く。

「助けてくれて、ありがとう」

その言葉に私は頷いた。

このとき私は決心する。もうこれ以上、B・Tが私の大切な人を傷つけることがあってはならない。

私が止めなくちゃ。私を必要としてくれている全ての人のために。

大好きな人を大切な人を守り抜くために。

私は戦う――!






















































「それじゃあ、あなたの返事を聞かせてもらおうかしら」

西園寺さんの部屋(本部管理室というらしい)へ有紀に案内してもらった。

一緒にいた と護衛の光宏、昭栄も同行している。

「私は…」

止めなきゃいけない。それは白月の姫とかいう問題じゃなくて、私自身が大切な人を守りたい。

「WHITE MOONに入ります!!」

それが私の、誠意だから。

「そう言ってもらえると思ってたわ。これで正式にわたしたちW・Mの仲間ね。白月の姫――

「はい!」

西園寺さんは机の引出しから小さな箱をとりだして私に渡した。艶やかな笑みを浮かべながら。

「これは…?」

「W・Mのバッチよ。これがあれば、こっちの世界との行き来が可能なの」

箱の中身は白い三日月型の小さなバッチだった。そういえばみんな身体のどこかしらについてたような。

ちゃ〜んvv」

「うわぁっ」

昭栄に後ろから抱きつかれ、思わず前へ倒れそうになる。なんとか両足を踏みしめて耐えたけど、体格さがあるからさすがにキツイ。

「これで俺らん仲間になったっちゃね!バリ嬉しか〜!!これからもよろしくったい!!」

「昭栄…。うん!昭栄も光宏も有紀よろしくね!」

「(あの野郎…一人だけ抜け駆けしやがって〜 怒)よろしくな!!」

「ええ、よろしく!!」

4人で騒いでいると、西園寺さんがまたうふっと笑った。そして、私達の横を通りすぎて の前へ立つ。

「貴方は、 さんだったわね」

「は、はい。そうですけど…」

「私の個人情報。わかるかしら?」

その言葉に部屋内にいた全員が固まった。昭栄の呪縛から逃れた私は、 の身を案じて西園寺さんを止めようとしたけど、隣りにいた光宏によって阻止された。

「大丈夫だって。まぁ、みてなよ」

光宏の言葉に昭栄も大きく頷く。二人を交互に見た後、私の視線は再び へと戻された。

「えっと…。西園寺玲。6月7日生まれのAB型。身長167cm、体重50kg。好きなものは豆腐で嫌いなものはねずみ。趣味はテディベア収集、特技は剣道。2段の腕前。」

「「「「……」」」」

もはやお見事としか言いようがないその完璧な情報に私達は声もでなかったのに対し、西園寺さんだけが得意げに笑っていた。

…どうしちゃったの?」

「あたしにもわかんない;」

「今回の事件で、彼女は自分の力に目覚めてしまったのね」

「力って…じゃあ、まさかこれは…?」

が目を大きく見開きながら聞くと、西園寺さんは口元だけで微笑む。

「そう。特殊能力の一つよ。詳しい事は検査してみないと分からないけど、ほぼ能力者なのは間違い無いわ。だから、あなたにも さん同様に私達の仲間…」

「やりますやりますやりますとも!!!」

西園寺さんの言葉をさえぎって、 が言う。これにはさすがの西園寺さんも虚をつかれたのか、きょとんとしてしまった。

「え!?ちょっと !!大丈夫なの?」

私が不安げに聞くと、 はますます自身ありげに頷く。

「もちろんよ! にできてあたしにできないものなんてないもの」

はは!そりゃまた鋭いお言葉で;でも確かにそうだった。 はナンでもマルチにこなすから。

「それに、あたしたちは親友よ?学校だろうが異世界だろうが、一緒にいるのが『あたり前』なのよ」

…」

感動した!(小○総理風)その言葉を聞いた瞬間に私は に抱きついていた。

「それじゃ、決まりね。 さん。貴方のバッチよ」

はバッチを受け取ると、嬉しそうに笑った。 のこんな嬉しそうな顔、久しぶりに見た気がする。

私も自然に笑っていた。

さん、小島有紀よ。これからもよろしくね」

「こちらこそ!よろしく。 でいいよ。私も有紀って呼んで良い?」

「わかった。よろしくね。 !」

二人はがっちりと握手をしたあと、綺麗に微笑んだ。近くにいるとまぶしくなるほどの笑顔で。



まだまだこれから先は長いけど、私は決して一人じゃない。

大切な仲間守るために

私はB・Tと戦います!!!