と話すようになってから、俺はますますのことを意識するようになった。

朝教室に入ってまず目に入るし、笑っているの顔がいつも頭から離れない。

幸いもサッカー好きということで、最近よくそのことで話しをするようになったから、だんだんとのことも分かってきた。

「じゃあ、真田くんは東京選抜にも選ばれたんだね」

「まぁな」

「すごいなぁ〜将来はJリーガーになるの?」

「な、なれたら…良いけど///」

休み時間のちょっとした会話。それだけでも俺の心臓はバクバクいってる。できるだけ平然を装ってるけど、内心もうパニック状態。もうずいぶん会話してるけど、これだけは直らなかった。

はどこのチームが好きなんだ?」

「私?私はやっぱり、柏レイソルかなぁ〜」

よし、将来は絶対柏レイソルの選手になろう。

でも、まさか俺がこうやって質問できるようになるなんて、夢にも思ってなかったなぁ…。英士、結人、マジサンキュー。

アドバイスをくれた親友達の顔が浮かび上がって、不意に俺は選抜の帰りに寄ったマックでの会話を思い出した。






























































「最近調子はどう?一馬」

「調子って、なんの?」

「鈍いなぁ〜『かじゅま君、初めての告白大作戦☆』のことに決まってんだろ?俺の言ったこと、ちゃんと実行したか?」

「…・あぁ///」

「相手の反応はどうだったの?」

「な、なんか…むこうもサッカー好きみたいだから//最近、結構話してる…」

「良かったジャン、一馬!よし、そんじゃあ次は第2段階だな」

結人が手に持っていたジュースを乱暴においた。おい、こぼれてるって。

「第2段階って?」

「へっへーん♪コレ、一馬にやるよ!」

俺が尋ねると結人はテーブルの下に置いてあったスポーツバックから白い封筒を取り出す。何が言いたいのか良くわからなかったから、英士と俺はそろって首をかしげた。

「なんなの?それ」

「聞いて驚け見て騒げ!な、なんと!今度やる日本A代表の試合チケット!ペアで一組さまご招待!」

「えぇ!?なんでそんなもん持ってんだよ!」

「ちょっとしたコネがあってもらったんだけど、あいにくどうしても行かなきゃなんない用事ができちゃってさぁ。行けなくなったんだよ」

「マジで…くれんのか!?」

「おう♪持ってけドロボー!!」

「良かったじゃない、一馬」

俺はなんて良い親友を持ったんだ!!これほどまでに結人が輝いて見えたことはない。ありがとう、結人!

「その子もサッカー好きなんだろ?だったら誘って、二人で行ってこいよ」

「………い、いま…なんて?」

「だから、誘って二人で見てこいって」

さ、誘う!?俺が?を!?しかも、ふ、ふ、二人…で////

「無理だって!!話すのでもいっぱいいっぱいなのに、サッカーに連れていくなんて…・!」

「だぁ!もう!!だからダメなんだって!こんなチャンスめったにないんだぜ?ここで親睦深めなくていつ深めんだよ!」

「そうだよ、一馬。せっかく結人がチケットくれるんだから、行かなきゃ損だって。でないと…」




































































「いつまでたってもヘタレのままでしょ?」

























































ショーック!!

そうだった。俺は、もう昔の俺じゃないんだ。ここでを誘って、ヘタレを卒業しねぇと!

やるよ、やってやるよ!!

「わかった・・やって、みる///」

俺が俯きながら小さい声でそう言うと、二人は笑って頷いた。






















































「真田くん?」

「え?あ、なんだ?」

「どうしたの?ボーっとして」

「い、いや、別に。なんでもないよ」

誘わなきゃ。サッカーに。

俺はポケットに入っているチケットを握りしめた。

…」




がんばれ、俺!




「何?」




サッカー見に行かないかって言うだけじゃないか!何びびってんだよ!




「あ、あの…さ///」




「?」




握りすぎて既にくしゃくしゃになっているであろうチケットをさらに強く握る。




「さ…さ…」




言え!言うんだ、俺!




「サ、サッ…!」




「??」




さぁ、今だ!ヘタレを卒業するんだ!




でも…・



















「サ、































サカナ君って面白いよな」









































やっちまった…;









































「えっと…う、うん。そうだね」

「///////」

あぁ、もう!なんでいつも俺はこうなんだ!肝心なときに肝心なこと言えないで。もめちゃくちゃ困った顔してるじゃん。ホントに、コレじゃ一生ヘタレのままだ…何故今の時期にサカナ君なんだよ!!(泣)

その場に何とも言えない微妙な雰囲気が流れたまま、休み時間は終わっていった。



















































「「ヘタレ?」」

「……」

次の日。いつものようにマックで軽食をとっているとき、誘えなかった事実を目の前に座る親友達に伝えると、見事にハモってそんな言葉が返ってきた。

「前からヘタレだとは思ってたけど」

「まさかココまでヘタレだったとはな…」

あまりにも真面目な顔して言ってくるから、俺はなにも言えずに下を向いた。

俺だって自分が情けねぇよ;今回ばかりは、自分がヘタレだということを認めざるを得なかった。

「でも、ホントにどうすんだよ。試合、明後日だぜ?」

「明日誘わないともう二度とこんなチャンスないよ?」

「わ、わかってるってっ…!」

「それじゃ、明日は誘えるの?」

「そ、それは…」

「わかった!イメージトレーニングしてみたらどうだ?」

「「イメージトレーニング?」」

今度は英士と俺の声がハモる。結人はポテトを口に放りこみながら、もごもごと言った。

「ここで台詞練習してみろよ。そしたら明日、緊張しなくてもすむだろ?」

あぁ、なるほど。予行練習みたいなもんか。

「や、やってみる//」

俺は真剣な目つきで結人を見ながらトレーにおいてあったチラシをチケット代わりに差し出した。

…俺と、サ、サッカー…見にい、行かないか///」

「ダメ。どもりすぎ。結人で緊張してどうすんの」

「がんばれ一馬!もう一回!」

「俺と…サッカー見に…い、行かないか?」

「まだどもってる。もう一回」

「俺と、サッカー見に行かないか?」

「もう少し、スムーズに」

「俺と―――」

それから俺達が家路についたのは、夜もどっぷり暮れた頃だった。

















































翌朝。俺はいつもより10分も早く学校についた。教室に入るとまだ来ていない奴の方が多かったけど、は自分の席についてサッカー雑誌を読んでいる。

やっぱり今日も可愛いなぁ…////

ってなに考えてんだ俺は!早くを誘わなきゃ。試合は明日なんだから!

自分の席に鞄を置くと、そのままのところへ向かった。隣に来た俺に気付いては雑誌から目を上げる。

「あ、おはよう。真田君」

「お、はよう///」

やべぇ。もう心臓バクバクいってるよ;でも、昨日みたいな失敗はしない!あんなに遅くまで結人達と練習したんだから。大丈夫、いける!

「昨日少し元気無かったみたいだけど、大丈夫?」

「あ、あぁ…ダイジョウブ。あの、さ…//」

「何?」




落ち着け、落ち着け。こういうときは、深呼吸だ!すー…はー…




「あ、明日…俺と…」




よし、いけ!

























「俺と…サッカー見に行かないか!!///」

























言えたっ…!ついに言えたよ!うわぁ、もう顔熱い。やけに語尾が強かったからなぁ。びっくりしてるよ。まずかった…かも。

しばらくの沈黙が続いた。断られるかな。急過ぎるし、俺ヘタレだし(←?)

「うん、良いよ」

もうだめだと確信したとき、透き通った声が俺の耳に入ってきた。ばっと顔を上げると、そこには笑って頷くがいる。俺は信じられなくて、しばらくフリーズしてしまった。

「ほ、ホントに・・?」

「うん、ホント。サッカー好きだしね」





しゃっ!  しゃっ!  
しゃっ!!

やったぜ、結人!英士!俺もついにヘタレキャラ卒業だ!!

俺はポケットからくしゃくしゃになったチケットを差し出した。俺が強く握りすぎて汚くなってしまったチケットに、は可笑しそうに笑う。その笑顔が可愛くて、俺はさらに顔を赤くした。



これでやっと第2段階突破。勝負は明日!決めてやるぜ!!!